「ディアッカ」
暗い部屋の中、フラガは手探りでライトのスイッチを探した。
ライトを点け、部屋を見渡すと、ベッドの陰に隠れるように金色の髪が揺れている。
「ディアッカ、そんなところにいたの」
頭上に影を落すように覆い被さると、突かれたように肩がびくりと小さく震えた。
フラガは優しげな笑みを浮かべると、ディアッカの腕を取り、その震える体躯を抱き寄せた。
腕の中に収まるしなやかな姿態。愛しさに抱きしめる腕に力が篭もる。
「どうして隠れてたの?ご機嫌斜め?下士官たちが嘆いてたよ。食事を運ぶのにドアを開けた途端、怒鳴られて追い返されたって。どうしたの?」
言葉の合間に小さくキスを髪に落していく。
ずっと部屋の中に閉じ込められている筈なのに、陽射しを吸い込んだかのような暖かな匂いが鼻腔をつく。
「ねぇディアッカ、どうして?……ディアッカ……ねぇ……………返事ぐらい、しろよ!!」
黙りこくるディアッカに焦れ、髪をわし掴むと、フラガが側の壁を、だんっ、と殴りつけた。
突然の怒声に、ディアッカが怯えたように身体を強張らせた。
「ご、めんなさい……ごめんなさい…」
菫色の視線を彷徨わせ、ガタガタと震えながら、許しを請う言葉がディアッカの口をつく。
怯えを見せるディアッカに酷薄な笑みを見せると、フラガはディアッカの頭を抱き寄せ優しげに囁いた。
「びっくりしたの?怒らないから、ちゃんと説明して」
髪に差し入れられたフラガの掌から伝わる温もりさえ恐くてたまらない。あの掌が、些細なきっかけでどれだけでも残酷に変われることを、ディアッカは何度も思い知らされていたから。
口の中が乾いて、舌が喉の奥に張り付く。
何度も唾を嚥下して、ディアッカは必死に言葉を紡いだ。
「あ、あんたが…服とか、全部持っていって……だから…俺」
昨夜貪られるようなキスの息苦しさに、唇を背けた。
たったそれだけの理由で、フラガはディアッカの衣服だけでなく、身に着けて身体を隠せるようなものすべてを取り上げていた。
「恥ずかしかったの?見せてあげればよかったじゃない、こんなにキレイなのに」
ディアッカの身体には、その全身フラガが触れていない箇所が無いことを物語るように、無数の赤い印が散っている。
均整の取れた体躯に残るその痕は、健康的な四肢と相反して退廃的な美しさを放っていた。
フラガはディアッカを抱き上げると、ベッドに降ろし、ゆっくりと身体を重ねた。
頬に小さくキスを落すと、巻き込むように抱き締めた。腕の中でディアッカが小刻みに震えている。
その震えすら、愛しい。
首筋に何度もキスを落し、耳朶に歯を立てる。耳に吐息を絡めるように、囁きを吹き込んだ。
「ディアッカ、かわいい」
掌で胸を撫で上げ、連夜嬲られつづけ赤く腫れ上がった乳首を指で擦り上げた。
ディアッカが身体を硬直させるのを、喉の奥で低く笑うと、フラガは唇を徐々に降ろし、乳首を口に含んだ。
「いや、だ……お、願い……やめて、よぉ………」
これから始まる行為への恐怖に、ディアッカの震えが大きくなる。
ガチガチと奥歯が鳴り、双眸から涙があふれ始めていた。
「どうしてやめてほしいの?」
「いたいから……すごく、いたい、から…だから……」
「痛いだけじゃないでしょ。いつも気持ちいいこともしてあげてるじゃない」
乳首を口に含んだまま喋れば、その動きのままにディアッカが身を震わせる。
素直な反応は、行為を重ねる毎にフラガを誘うような艶を増しているように思えた。
「お願い…他のことなら、何でもするから……だから、やめてよぉ…」
しゃくりあげながら紡がれる哀願。シーツを掴む指は小刻みに震え、頬は滂沱の涙で濡れている。フラガの慈悲を得ようと無意識に媚びを売る姿には、往時のエリートパイロットとしての矜持もコーディネーターとしてのプライドも無かった。
-----堕ちてこい。
フラガは殊更残酷な言葉を選んでディアッカに突きつけた。
「他のことって言っても、ここでディアッカに出来ることなんてコレくらいしか無いでしょ。ザフトじゃエリートだったかもしれないけど、ここじゃタダの捕虜なんだから。せめて素直に脚くらい開いてよ。それとも、脚を閉じられないように、ベッドに縛り付けておいたほうがいい?」
絶望と屈辱にまみれたディアッカの嗚咽が聞こえる。
哀しげな響きさえフラガには甘美で。
愛しくて、愛しくて。
放したくない大切な存在。
「泣かないで。いっぱい大事にしてあげるから。ねぇ、ディアッカ…」
END?