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片恋



SIDE:D

昔から俺が「好きだ」と思った相手は、いつだってその時にはもう隣に他の誰かがいるか、そうでなければ自分以外の誰かに心を奪われていた。
アカデミーを卒業して配属された隊の先輩はいつもキレイな女のヒトに囲まれてたし、幼馴染は恋愛なんて二の次で「プラントの英雄」に心酔してたし。
でも、それを辛いとか悲しいと思ったことはなかった。
「さすが俺が好きになっただけあるよなぁ」って思うだけだったから。
だってさ、俺みたいな人間にちょっとでも気持ちを奪われるようなヤツに碌なモンはいないと思うし。
俺が好きになるヒトは、いつだって俺よりも性格もいい、頭もいい、出来たヒトに目を向けてる。だから俺は尚更ソイツを好きになる。
そんなことを繰り返しているうちに、俺にとって「好きな相手から好かれる」なんて絶対ありえないこと、っていう固定観念みたいなモンができてた。
「俺が好きになる相手は、絶対に俺以外の誰かに恋してなきゃいけない」って思うようにもなってた。

時々こんな俺に「好きだ」って言ってくれるヒトもいた。
独りでいるのは寂しかったし、行き場の無い感情を昇華させる場所もほしかったし。だから嫌いな相手じゃなければ所謂「お付き合い」みたいなことをしてみたりもした。
けどどこか心の底で、こんな俺を好きになるなんてくだらないヤツだな、とちょっぴり見下した気持ちを拭い去ることはできなかったし、そういう感情に限って相手に伝わりやすいみたいで。
付き合ってる間に段々好きになっていった相手に限って、見限られるのも早かった。
でも、それが早ければ早いほど、振られる悲しさよりも「さすが」みたいな感嘆の気持ちが大きかった。
我ながら俺って救いようがないバカなんだなぁ、と思う。
でも、こんなどうしようもない人間だから、バカなことしかできないんだろうな、とも思う。

だから。

俺のことを「好き」だなんて言わないでよ。
言われれば言われるほど、アンタへの「好き」って気持ちが消えていく。
俺のことを好きになんてならないでよ。





SIDE:F

昔から「薄幸の美人」に魅かれることが多かった。
「俺が付いていてあげないと」とか「俺が幸せにしてあげる」とか思ってしまって、気にせずにはいられなくなっちゃうんだよね。
でも、実際に付き合ってみると、幸薄く見えるのは外見だけで、実は芯が通ったしっかり者だったり、中々のしたたか者だったり。外見と中身のギャップに面食らうことも多かった。
それに気が付くと、まさに「突然」って感じで相手への興味がすーっと引いちゃって。今度は向こうが俺の変わり様に面食らって、行き着く先は修羅場。
勝手に思い込んだイメージで追いかけて、昨日まで「好きだ」「愛してる」って言い続けてた男が、次の日になったら他人を見るような目を向けてくるなんて、よく考えなくても失礼な話なんだけど。
でも、しょうがない。
申し訳ない、とは思うんだけど、引いてしまったキモチを無理矢理呼び戻すこともできないから。
俺ってサイテー、と反省はするんだけど、やっぱり次の日には同じような幸薄い系美人を追っかけてたりする訳だ。
懲りない性格なんだよね。

最初アイツを見たとき、自分の立場をわかってんのか、って言いたいくらいにこっちを反抗的な目で睨み付けてくるし、投降してきたクセに協力的な態度も取らないし。
潔いっていうよりも、おまえバカ?って印象だけが残ってた。
でもさ、俺って根っから世話好きっていうか、ヒーロー体質なのかもしれない。
手間がかかればかかるほど、段々「こいつには俺がいないとダメなんだ」って思うようになってた。
俺を睨みつける目の奥に万年雪みたいに積もった寂しさみたいなものも見つけてしまったし。完璧に捕まってしまったのかもなぁ。

だから。

逃げるなよ。
今更「嫌だ」なんて、そんな話は聞けないんだから。





END