「行過ぎる夏の情景 五題」配布元 / LoveBerrys/2008夏 W一護&恋次誕生日企画
それは色鮮やかな
いつもの学校帰り、
義骸に入った恋次を偶然、街中で見掛けた。
「テメエ、こっち来てたのかよ! つか何してんだ」
「何って・・・、仕事に決まってんだろ」
人ごみを掻き分けながらせっかく追いついたというのに、
歯切れが悪い上に、見つかっちまったと言いたげなバツの悪そうな顔。
「って何の仕事だよっ」
「機密事項だ、今回のはテメーには関係ねえ」
「・・・っ!」
じゃな、と恋次は、他の死神連中と共に背を向けた。
振り向きざまに上げられた手ごと、さまざまな色に溢れる街頭に溶け込んでいく。
あの鮮やか過ぎる赤でさえあっさりと、慣れた日常風景に消え去っていく。
あまりのあっけなさに呆然とした俺は、それでもくるりと勢いつけて背を向けて、歩き出す。
教科書やら課題やら、たっぷり詰まった鞄の重さを肩に感じながら、
遠くで爆発しだしたさまざまな色合の霊圧を感じながら、ただ前に進む。
たっぷり歩き回って、ようやく掴みどころのない苛つきを押さえ込んだとき、
目前にひらりと漆黒の塊が舞い込んだ。
「トロトロと遅えなあ、テメエは。寄り道してんじゃねえよ」
「な・・・、恋次こそ何やってんだ!」
「仕事が終わったんだよ、決まってんだろ」
「えらく早ェな・・・、つか死神に戻ってんのかよ。義骸はどうした?」
「・・・・」
「何で黙ってんだ・・・?」
「あー・・・、アレじゃ小回り利かねえからテメエん家に放り込んできた」
「んだと?!」
「仕様がねえだろ! 浦原さん家、使えねえんだからよ!」
「だからって何で寄りによって・・・・、つかヤベエだろ! 家族がビビるだろ!
俺の部屋にこんな派手な髪のオヤジの死体がすっ転がってたら遊子なんか簡単に心臓、止まるぞ?!!」
「んだと?! 俺はオヤジじゃねえッ!!」
「つかポイント、そこじゃねえだろ!!! ああもう、走れ! 早く回収しろって!!」
「っせえ!」
恋次が空へと駆け上がるのを確認し、笑いがこみ上げるのを押さえて、勢いをつけて走り出す。
電信柱のてっぺん伝いに、俺の家の方へと恋次が空を駆けていくのが見える。
俺はきっと、絶対忘れない。
恋次の死覇装の黒が描く軌跡は、
紺碧の空よりも、白く輝く入道雲よりも、赤く燃える夕焼け空よりも、
何よりも鮮やかに俺の心に映りつづける夏の残像。
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