「行過ぎる夏の情景 五題」配布元 / LoveBerrys/2008夏 W一護&恋次誕生日企画
恋という名の
「・・・あのさ」
珍しく一護が口を開く。
「なんで俺なんだ?」
なんでもヘッタクレもねえだろ。
やってる最中に何言ってんだ、テメエは。
集中しろ、集中!
苛ついた俺は、汗の滑りを借りて指を思いっきり走らす。
「・・・・っ」
だが一護は諦めない。
「・・・なあ、答え・・・ろよ、テメエは、何で・・・っ」
ウゼえな。
まだ少し待つ予定だったが、黙らせるために腰を入れると、
きつく噛まれた唇の代わりに、鼻から甘く息が抜けた。
まるで猫の強請り声みたいだ。
何が欲しい?
なんて答えて欲しい?
オマエなら何て答える?
問い返してみても答えは得られず、代償にと与えられたのは吐息だけ。
だがその唇が音を象っている。
紛れもなく俺の名を一息ごとに、一文字、一文字、苦しげに。
ああ、堪らねえな。
だから俺は、オマエだからだと一護に伝える。
安っぽい言葉なんかにするものか。
抱きしめるこの腕で、この熱で、そしてこの口付けで、
いつか届けばいいと、意味不明のこの感情を力の限り伝え続ける。
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