「珍獣の飼い方10の基本」 (配布元 リライト)
かわったものにきょうみをもちます
実際のところ一体何がどうなってこんなハメに陥ってるのか分からない。
生きる時間も所属する場所も抱える思いも全部ズレてて、
共有してるもんなんてヒトカケラもないってのに、
こんな風にこんな子供と指を絡ませ肌を重ね、
息するのさえ儘ならないってのは一体全体どういう了見だ。
名前を呼ばれるたびに
息が首筋を掠めるたびに
粘ついた音が耳をつくたびに
思いのほか力の強い腕が加減なしに抱きしめてくるたびに
正体不明の何かが俺の内側、どこか柔らかいところを侵食する
ほら、また今日もひとかけら、食われた
切ないとか愛しいとかそんな脆弱でキレイな言葉はいらない。
知ってるのは逃げ出したくなるこの衝動。
全て潰して消し去ってしまいたくなるこの焦り。
少し隙を見せたぐらいで熟睡するなよ
無防備な顔、晒すなよ
信用するなよ、怖くないのかよ
いっそその喉笛掻き切ってやろうか
それとも惑わせて狂わせて取り込んでしまおうか
ここまできたら、もうごまかせない。
興味半分だったなんて言い訳、もう効かない。
だから実際のところ一体何がどうなってこんなハメに陥ってるのか、
分かりすぎるほど分かってはいるのだけど、
目も耳も口も塞いでこの瞬間をやり過ごせば、
また明日は素知らぬ顔してやってくると大人の浅知恵が囁いている。
だから熱すぎる腕をすり抜け虚空へ跳び、独りに戻って一息つく
「さびしがらせてはいけません」一護側>>
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