雪の中を歩け 


雪道を歩く。新雪、深雪。
一護が先を歩く。
横に出ようとすると防がれる。

「おい、どけ。邪魔だ」

正面から降り付ける雪。
顔がいたい。
前を行くオレンジ色も白く蔭る。

「うるせー、てめーは黙って後ろを歩け」

風に混ざって聴こえる返答。

「なんでだよ」
「そりゃー、あれだ。名前で決まってんだ。 俺が“一”で、テメーが“次”」

間髪いれず反論してくる癖、決して振り向かないオレンジ頭。

「なんだそりゃ。それを言うんだったら俺は阿散井の“ア”で、テメーは黒崎の“ク”。
 俺が先だろうが」
「なんでテメーが現世のアイウエオ順でモノを考えるんだよ。
 それだったらイロハニホヘトでほら、あれだ・・・・」

・・・・沈黙。
頭の中で必死にイロハニホヘトを唱える。

「あ、てめー、ダメだやっぱアイウエオ順だ!アが先!」
「クが勝ちました〜。よって俺が先!」

二人で同時に走り出す。
途端、全身に吹き付ける雪と風、足を取る雪。
横を見ると、オレンジ色の前髪についたうっすらと雪。赤いホッペタ。
袴にもびっしり雪がついている。
だから先を歩いていたのか。いつもより狭い歩幅で雪を掻き分けて。

・・・てめー、俺をオトメかなんかと思ってねーか?

そのまま廻し蹴り一発。
雪に倒れた一護を横目に先に走る。

「ほら、今度はオマエが後から来い。交替交替だったら文句無ぇだろ」

あえて、オマエのほうが小さいから雪防ぎきれてなかった、とは言わない。
自分の考え、バレたって知ったらまた顔真っ赤にして怒るからな。

でも知らず知らずのうちに笑っていたらしい。
追いついてきた一護が過剰反応している。

「なんだよテメー、蹴るんじゃねーー、笑ってんじゃねーー!」

お? 顔がさっきより赤い。
さてはバレたって悟ったか?
ま、それも聞かないでおいてやろう。あー、俺ってなんて出来たオトナ。

「・・・おーい、そろそろ交替だぞー」

ブツブツ文句を垂れながらそれでも後ろを大人しくついて来ている。
いつまで持つかな。
そろそろ限界を超えてぶすったれてきている気配。
さー、蹴りが来るか突きが来るか、迎撃態勢は万全。

軽い緊張状態を楽しみながら進む雪道。
こんなんだったら、吹き付ける雪も苦にならない。
まったく。
テメーといると飽きねーな。

俺は、堪えきれない笑みを雪に隠して歩き続けた。





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