露出
逸る指が追い求めているのは記憶に残るあの官能。
背筋を抉るあの刺激。
思い出せ。
あの手はどう動いた?
唇はどこに触れて、舌は何を掬い取っていった?
記憶の底から鮮やかに甦ってくるのは、
呼吸さえ禁じる口付け、
痛みと快感の境界を踏み躙る愛撫、剥き出しになった欲望。
推し量るような視線に晒され、羞恥の念さえ甘い刺激となる。
誇りも自意識もきつく戒められて力を失くし、ただただ流されていく脆い身体。
振動とため息と熱だけに満たされて、境を失くすあの瞬間が欲しくてたまらない。
躯と心、両方の記憶に急かされた指先が、官能を求めて動き出した。
求めているのは、
誘って期待して裏切られて諦めかけたその先で、ようやく与えられるあの歓喜。
儀式のように繰り返されて刷り込まれてしまった。
だから逃れることはできない。
もう
逃げようとも思わない。
あの眼に覗き込まれなくても耳元で囁かれなくても、体は勝手に溶け去っていく。
なんて従順なこの手、よく躾けられた指。
だから俺は与えられる快楽にただ涙する。
2007.受恋企画投稿、2008.3 加筆修正・再録 旧タイトル「揺れる」
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