白き肌
ルキアという名の妹は生きていた。
地獄を生き延び、死神になるべく靜霊廷にまで入り込んでいた。
緋真が死んだというのに。
朽木家に入るという重責。
その枷を妹にも望むのか。
何のために。
だが緋真。
その心が其処に在るのならば、私はそれに唯従おう。
ルキアという名の妹。
貴族の家に迎えられるというのに、まるで何かを奪われたような眼をしている。
何を捨て、何を選んだのか、その意味をわかっているのか。
一族を代表するものとして覚悟をしてもらわねばならぬ。
食いつなぐことは出来よう。
命も永らえよう。
だが、頂点に立つという覚悟をしてもらわねばならぬ。
哀れなことだ。
ルキアという主を奪われた赤い子供。
ルキアとの縁を切るべく解放した霊圧に伏せられた目、丸く小さくなった背中。
その意味を悟れ。
そして、去れ。
衣食足りて礼を知るというが、衣食どころか明日の命さえ儘ならぬ生を与えられたこの者共は、
礼を身につけることなく本能のまま生き抜いてきた獣といったところか。
いや、従属を強いられてきたというのならば家畜に等しくもあろう。
哀しい眼をしている。
その眼を捨てられぬというならば、いっそ朽ちてしまえばいい。
厭な名前だ、朽木などと。
朽ちて尚立ち続ける湖沼の古木、永遠の象徴。
だが古より時を刻み、枯れ果てて空虚となった枯れ木に一体何が残っているというのか。
固執、慣習、妄執の如く白き肌を晒し、立ち続ける朽木にもとよりその意思はない。
ただ在るのみ。
我も同様。ただこの存在を晒すのみ。
2006.11.11 白哉、ルキアを養子に迎えるにあたり
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