発情
先走る露を逃さぬよう根元から舐め上げて甘噛みすると、
焦るんじゃねえよと諭してくる言葉が酷く熱を帯びていた。
盗み見ると、薄く開いたセンパイの唇の奥に赤い舌が覗いている。
焦ってんのはアンタだろと憎まれ口を叩き返し、
熱に浮かされた振りをして更に熱心に唇と舌を動かすと、
俺の髪の中をさまよっていたセンパイの指が強張って地肌に爪を立てた。
ゆったりと開かれたセンパイの足は無防備な振りをしてるけど、
いつどんな風に仕掛けてくるかわからない。
だから内側から両足の付け根と膝の内側を押し開いたまま安全確保。
隙を見せて互いを追い込んでいくゲームも楽しいけど、
でも生憎、今日は余裕なんてもんがない。
昼間、アンタを見かけたときから下っ腹の奥の方、ずっしりと重くて仕方がない。
長く続いた曇天を貫いて降り注いだ一筋の陽光。
その強烈な光に皆、空を見上げた。
けどアンタ、
一人だけ背中、向けただろ?
あれはアンタの大切な人を連れ去った光に似ていた。
あれからアンタは空を見上げなくなっちまった。
アンタ、俺が気づいてることに気づいてねえだろ。
俺のこと、見えてねえだろ。
でもこうしたら俺のこと、感じられんだろ?
下敷きにしたセンパイに乗り上げ、固くなったソレを自分に埋め込む。
急な展開に本気で戸惑ってるのをせせら笑い、強く動きだす。
ピリリと鋭い痛みが背筋を駆け上り、僅かに残っていた思考力を叩き潰す。
意識も感覚も白く霞みだしたその先でやっと、
痛みと疼きを寄り合わせたような鋭い快感が訪れる。
「・・・・修兵っ」
思わずこぼれ出た声を耳にしたセンパイは、にやりと口元を歪め、
「もう降参かよ」
と俺の腰を鷲掴みにする。
その細められた眼の奥の光に身震いした俺は、
これから訪れるであろう激しい快楽を思って目を閉じた。
情に発した肉欲は止まるところを知らない。
けれど悪くはない。
少なくとも今繋がっているこの身体は幻想じゃない。
痛みも快楽も滴り落ちる汗も今ここに。
体の芯に残る乾いた疼きはそのままに。
2007.受恋企画寄稿、2008.03 加筆修正・再録
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