いらえ
くうと、いかにも寝息らしい寝息が耳についた.。
見遣ると、眠りこけたという風情の浦原が口をぽかりと開けていた。
二人してさんざん暴れた後だから、当たり前といえば当たり前なのだが、
「…てめーに限って、なァ…?」
素直に信じられる訳もない。
今度は一体、何を仕掛けてくるつもりなのか。
だが、ふう、と吐き出された寝息はいつになく、ため息染みている。
行灯の加減かと少し角度を変えて見てみたが、やはり目の下の辺りが黒くなってる気もする。
「…オイ、寝てるのか」
応えがあるとは思っていなかったが、
こういう時だけ見せるあの笑みを待ってなかった訳でもない。
だから俺はただ手を伸ばす。
触れて、鎮めて、その首筋に走る命を感じ取る。
そして、あの熱を取り戻す。
気道を軽く押したが、浦原は少し呼吸を乱しただけだった。
口元は愉快そうに歪んでいた。
だから俺はその口を塞いだ。
ぬるりと忍び込んできた舌に、また騙されたなと抱き締める腕をきつくした。
西島さん(餐ルーム)のイラストを拝見して広がった二人のイメージを、文に起こしてみました。原作で接点があったかどうかも分からない二人ですが、鰤世界を構成する核としての二人の立ち居地とその対比に最近、ひどく惹かれています。
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