「桔梗屋-Platycodon gtandiflorus-」に掲載の『狂宴』より、「LUCKLUCKLUCK」掲載の『断罪』との比較のため、類似シーンをそれぞれ引用しています。
『狂宴』からの文章は紫で、『断罪』からの文章はで表示されています。特に注意を促したい部分は赤い色を使用しています。引用とは関係のない注釈はグレーを用います。
なお文章の後に続く()内の数字は『断罪』のどの章に当たるかを示しています。



>ワシは幻海の屋敷を目標の一点にさだめて、人間界に降り立つ。
> ワシははやる気持ちを整えて、いつものように
肉体を再構成する

>「必要がないんだ。地点さえ分かれば、そこに降りて肉体を構成すればいい」(6)

*地点を定めて肉体を構成する設定


>『前から不思議だったんですけど、その身体ってどうなってるんですか?』
>「前から不思議だったんですけど、その体ってどうなってるんですか?」(6)



> ゆるやかな風のながれ、水、木々のささやき…そのすべてを。取りこんだ自然の力を解放し、肉体の構造を逆回しに

肉体の構築を逆回しに
 土に返り、水に帰り、大気にかえれ。(6)

 
 *自然の構成物質から、肉体の器を作りそこに入り込むという設定
 

 
>頭の中は、うるさいほどに危険信号を発しているのに。
 
肉体を壊せない。もとの姿に戻れない。

>警戒信号が頭に響いて、遅れてきたぶん、うるさく響いて (33)
>あれがそっちで体を作るときの逆の方法だ。壊す、というかもとの秩序に戻すんだ」(6)


 *信号が頭に、(コエンマの器である)肉体を壊す、などの類似表現


> そして、あの大技を使える者も。
《霊界にだって、どれほどいるものか…》


>魔封環を使える霊界人が、いったいどれだけいるものか。(23)


>ぐらり、と視界が揺れた。
>ぐら、と意識がぶれた。(17)

>「あんたは、変わらないな」
 ぶっきらぼうな声がワシをとらえた。
「10年経っても、20年経っても。100年経っても、あんたは、きっと変わらない」
「…………」
 ワシは目を伏せた。まるで責めるような、なじるような視線が痛い。


>「血を流すというのが、どんなものなのか、本当のところはあなたには決して分からないんだ。何百年の時を経てさえ、あなたは自分で血を流したことが無い。見てすぐに分かるよ。(中略)どうして理解できないんだ?今この瞬間に、指一本使わなくたって、俺はあなたを殺せるのに!


 *忍の、コエンマが自分の苦悩を理解できず、変わりもしないことへの苛立ちの設定


>「そのままに、生まれながらの心こそ、願わずとても仏なるべし…か」
>「百合を見よ、労せず紡がざるなり、か」(6)

 *コエンマの清浄さを、忍が格言になぞらえて呟くことで示すシーンの類似


>忍は薄い笑みを浮かべて、すっと指で自分の唇をなでた


>樹がすっと指で自分の唇を撫でた。
「取り上げられたのか、それ」(25)




*いずれも魔封環がコエンマの口に無いことを示すシーン



>肉体があるということ自体が、元の在りかたにたいして不自然に過ぎるから。
>肉体があるということ自体が元の在りかたにたいして不自然に過ぎるのだ。(27)



>ワシの霊気は、目立ちすぎるのだ。 
>多分あなたの霊気が目立ち過ぎたんでしょうね。(9)

*コエンマのことである



> だが、忍はワシがどんなに「パートナーをつけろ」と言っても、首を縦にはふらなかった。「足手まといになるから」とか、「人が死ぬのは見たくないから」とか、そういう理由だったように思う。
>その忍が、人間くさい「話の通じる妖怪」だと言って捕獲してきた男がいた。それが樹だ。忍はかれを「パートナーにしたい」と要求し、「なぜだ」と理由を尋ねると
「妖怪だから、別に死んでも構わない」と答えた。
 思わず眉を寄せたワシに、「それに、B級クラスなら戦闘面で手こずることもないでしょう?」と笑って肩をすくめる。
 
危ういバランス。
 殺すことはためらったくせに、「別に死んでも構わない」と答える忍に戦慄を覚えた。




「あいつなら、足を引っ張るってことはなさそうだし」
「お前の大嫌いな妖怪だぞ?」
 コエンマはその時、彼はおかしくなったと思った。あれほど気軽に殺してきたものたちの一人を、自分の側に仲間としておく?理解できない。それとも妖怪に対する見方が、この出会いで完全に変わったとでも――。
「だからですよ」
 忍は即答した。
「妖怪だったら、別に死んでも構わないじゃないですか」

 コエンマは慄然とした。
 いったい彼の倫理観はどうなっているのか。人間くさい話の通じる妖怪でも、別に死んでも構わない、と彼は言っているのだ。そのくせ殺すことはためらった。(中略)
 この少年は、なんと危うい――。(12)






>しかし、そのまた次の瞬間には(たとえそれが息絶えた抜け殻だったとしても)、やさしく声をかけるのではないか、という気さえした。
>「ぬけがら、だ」(36)

 *死体を抜け殻と同一表現、まあよくある範囲なのでパクリと呼ぶには弱いか。


>「あんたには、2度と会わないつもりだった」
>「会うことがあるとすれば、それはおれが死んだときだと思っていた」


>「もう二度と会わないつもりだ、もし会うことがあったら、それはきっと――」
> もし会うことがあればきっと、それは彼が死ぬときだ。(36)


 *言うに及ばず


>「霊界を統治する者は、直接人間界に関わってはいけない。…違ったかな」
>だから霊界は直接、人間へ手を出さない(18)



動かない忍目だけが動いて、こちらを見て…光った
>その部屋と一体化したように動かない忍の、目だけが動いて、こちらを見て光った。(17)


>ぐら、と意識がぶれた。
>ぐら、と意識がぶれた。(17)


>「あなたはなにも知らないから。だから、そんなことが言えるんだ!」と。
 次の瞬間、具現化された身体が宙に浮いて床に叩きつけられていた。背中から全身に疾った痛みにうめき声を発する間もなく、ワシはその場に縫いとめられる。
 あの時の自分を、よく思い出せない。

 
>「あなたは見ていないから言える!」(18)
>突然、忍が跳ね起きた。同時に強い霊気が放たれる。コエンマはとっさに防御に入るが、防ぎきれず壁に激突、背中を強か打ちつけた。(19)
その当時の自分を、コエンマはよく思い出せない。(15)



*コエンマが自分の苦悩を理解できない苛立ちの設定、
 忍の怒りに任せた霊気によってコエンマが壁に叩きつけられるシーンの類似



>「どうして、こんなことをする」
>「どうして、こんなことをする」(24)

 *いずれもコエンマのセリフ、ただしシーンは異なる


>「それは命令か? 懇願か?」
 忍がぐっと体重をかけてきた。
「どちらにせよ、聞くつもりはないがな」


>「自己嫌悪なのか、罪悪感か?」
 彼は返事に詰まる。
「どちらも要らん。ただ」(30)


*言い回しの類似



ここより先は裏ページに掲載されている「狂宴 完全版」での類似点を比較しています。



>「ワシの、あの姿を見てどうやったらそんな…!」
「くくっ」
 忍はさもおかしそうに顔を歪めた。
だが、人間界ではその姿だ


>「馬鹿げたことを。この姿を見てどう考えたら、そんな邪推が浮かぶのだ」
 700年近い時を経てなお、まだ幼児に過ぎない、霊界人としても異常体な彼である。
「そんな衝動なぞ、今のワシには理解はできん」
「おやおや、しかし下界でなら成人の姿をお取りになるのでしょうに。(13)





> 忍の口からはじめて『黒の章』の名が出たとき、ワシは樹を激しく憎んだ。
>忍が黒の章の名前を出した瞬間、コエンマは樹を激しく憎んだ。(18)




>『そういう名前じゃなくても、記録は残っているはずですよね』
 それでも、忍はあきらめなかった。
『見せてください。
おれは、それを見なくちゃならない
どうして、そんなものにこだわるんだ』
『知りたいんです。人は、生きるべきか、死ぬべきかを』
『だから、そんなものは…』

>『おれなら、それを資料として残しますよ』



そういう名前じゃなくても、そんなものがあってもおかしくは無いでしょう。(18)
>「俺はそれを見なくちゃならない」(18)
>「どうして、そんな物にこだわる
 「俺は確かめたい……人間に、価値があるのか」(18)
>「そうです。人間に生きる価値があるのか……それから、俺が生きる価値……人間として」(18)

>記録として、俺なら残しますよ(18)



>『ワシは知らない。ワシは…おまえじゃない。だから――』
『あなたはなにも知らないから!』
 奥底から絞り出すような悲痛な声が、部屋中に響いた。
『だから、そんなことが言えるんだ!』
『!?』
 次の瞬間、具現化された身体が宙に浮いて床に叩きつけられていた。背中から全身に疾った痛みにうめき声を発する間もなく、ワシはその場に縫いとめられる。
 
忍が激情をかき立てた瞬間に強い霊気が放たれ、室内で乱気流を起こしたのだ。
 突然の出来事に、壁を作って防御する間もなかった。
『う…』
 息が苦しい。痛みに思わず閉じた目を開いても、涙で歪んでよく見えない。
『あなたは、なにも見ちゃいないんだ! モノみたいに吊り下げられ、あちこち刺し通された妖怪の身体も。したたる血の沼で笑うあいつらの眼も!』
『…忍…っ』




>「ワシは知らない……ワシは、お前じゃない
「あなたは見ていないから言える!」
 また突然、彼は語気を荒くする。
「あの引き裂かれた血や肉を!転がってる目ん玉を、その中で笑ってる人間を!あんたは一つも見てやしない」(18)

> 突然、忍が跳ね起きた。同時に強い霊気が放たれる。コエンマはとっさに防御に入るが、防ぎきれず壁に激突、背中を強か打ちつけた。結界の中で忍の霊気は乱反射を起こし、部屋じゅうをかきまわす。コエンマはどうにか目を開けた。(19)




> ワシが生理的に怯えたのに気がついて、忍はふっと笑みを浮かべた。
> 
あまりにも近くに忍の顔があって、恐怖に歪む表情をつくろうことができない。
『さあ、教えてください。黒の章のこと』
>『
震えていますね
 忍がかなしげに笑った。
おれが怖いですか? …そうですよね。でも、あなたは拒めない』



>コエンマが思わず生理的に怯えたのに気がついて、忍は少し正気に戻った。(18)
あまりにも近くに忍の顔があって、コエンマは怯えた表情で息を詰める。(20)
「俺が怖いですか」
 「……」
 コエンマは体が震えるのを押さえることが、どうしても出来なかった。
 「さあ、教えてください。あなたはどんな命令に従った」(20)




>『もうずっと前から、あなたをこうしたかった
『…………』
あなたにだけは、こんな浅ましい気持ちを知られたくなかった。あなたに軽蔑されるのが怖かった。でも、もう構わないんだ、そんなこと』
 忍が、いささか乱暴な手つきでワシに手にかけた。
『あなただって、本当は気づいていたんでしょう? おれが汚れきった人間だってこと』


>「俺がもっとずっと以前から、あんたをこうしてやりたかったって言ったら、俺を軽蔑するか?」(26)
>「それでも、俺は、あんたにだけは知られたくなかったよ!」(20)
「あんた知ってたんだな、とっくの昔に。俺の汚さに、あんたは気がついてたんだ」(20)




>自分の身に起こりつつあることをようやく覚って無我夢中で暴れたが、かれにとっては些細なものと見えて、ワシの抵抗も簡単に封じこまれてしまう。
>やっと自分が何をされようとしているのか気づいた。(24)
>やっと彼は忍の胸の下で暴れ出したが、その果敢ない抵抗は簡単に抑え込まれた。(24)

 *性的行為に慣れないというより、発想がそもそもないコエンマの設定、遅まきながらの抵抗シーンの類似。




肌の奥に残る感触。その名残を追いかけて、ワシはそっと身体を抱く。
肌の奥にまだ淡くたゆたっている快美の名残を追いかけて、コエンマの指が自身の肌を確かめるように撫でる。(28)





>うめき声が聞こえた。
 ワシははっと身を起こし、床に
落ちた服を拾って身につける。その時、ベッドの下にかためられた濡れたシーツの存在に気がついて、忍が身体を清めてくれだのだろうと思う。すべて着なおす余裕はなかった。急いで最低限のものだけ身につけると、隣に続くドアを開ける。
「…忍?」
 様子がおかしかった。忍はワシに背を向けたまま身じろぎさえしない。水槽の隣にあった椅子に寄りかかるようにして、力なく膝をついている。
 その身体が、すべるように床に落ちた。
ゆっくりと、霊気を送りこむ。だが、痛みの根は相当に深いらしく、忍の表情は硬いままだ。
>普段通りの、いわゆる霊体の状態でさえいれば無駄に霊力を消耗することもなかろうに。
亜空間の中ではなにかしら法則が違うらしく、身体を壊すことさえできない。
 秘薬もなしに、この荒技は少々辛い。思った以上に霊気を酷使していた。
>「余計な…真似を、するな」




>思考が中断した。胸の悪くなるような悲鳴が聞こえた。(23)
濡らしたシーツで汚れた身体を清める。その間、コエンマも忍も一言も口をきかなかった。(24)
>コエンマは慌てて、やっと落ちた服を拾って身につけた。全て着なおす暇は無い。最低限肌を隠して、ドアを開ける。彼の姿はもう廊下に見えない。(25)
> 忍が派手な音を立てて立ちあがった。顔色が悪い。
 彼はバスルームの扉を開け、洗面所に胃の内容物をぶちまけた。テープの中身のせいなのか、空っぽの胃に突然食物を入れたせいなのか、よく分からない。両方なのかもしれない。
「う……が、はっ」
「忍、無理をするな」
 腹を押さえて蹲る彼の背に、コエンマは手をかけた。静かに呪文を唱えて彼の身体に霊気を流しこむ。身体だけならこれで治すことが出来る。ゆっくりと彼はその手で、忍の背中をさすった。
 忍は顔をあげ、コエンマを見ると、彼の手を払った。コエンマは少し驚きもしたし、悲しくもあったが、そのくらいの覚悟は出来ていたので黙ってそれに甘んじた。(23)

>「ここは法則性が違う、多分。思うに任せない、この身体を無に帰すことが出来ない。魔封環もまだ物質化されたままで肉の無いワシには触れられない……あれが使えなければ、そんな大技は無理だ」(36)



 *一部だけ取り出したのでわかりづらいが、『断罪』中でもコエンマの体を清めたのは忍である


> 千々に乱れたワシをあやすように、そっと言葉をかぶせる。
「たとえ、あの時おれが霊界探偵を引き受けていなくても、
遅かれ早かれ、おれはここまでたどり着いて、人間が腐っていることに気がついたさ。
あの夜のことは、それを証明してくれたに過ぎない。おれが守ろうとしていたものさえクズだった、とね」

>「……どうして謝るんです」
 忍が冷えた声で言った。
「別にあなたが謝るようなことは何もないですよ。どうせ俺はいつかここまで辿りついて、自分が、人間が腐ってることに気がついたさ」(20)






>「黒の章は、あくまで人間の一面に過ぎない。…そう言いたいのか?」
「よいものがすべてよいわけではない代わりに、悪いものすべてが悪いわけではないのだ」
「なら、おれがこれからすることも絶対悪とは言い切れないということかな」
「な、に?」



>「あんたの口に掛かれば、何でもそうやって好いように言いくるめられそうだ」
「お前は殊更に、嫌な方向へ物事を捉えようとしている。逆の可能性を示唆しておるだけだ」(27)
>「あの時、殺すなといったのはあなただ」
 冷や汗が肌に浮かぶ。忍は何時の間にか、彼の前に立ちはだかっている。
「そう……だ、だから」
>霊界が生きた人間を裁けないなら、俺がやる。どうせ覚えていないんだ、今後何人殺そうが、変わりはしない」(19)