鉄の匂い |
神乃木の手にソレが掛けられているのを見るのは、2度目だ。 1度目は、彼の検事としての最後の法廷の後、連行された時だ。手錠を掛けられ、刑事に連れられて、最後に成歩堂を振り返った彼は、笑っていた。 そして、2度目の今も、神乃木は不敵に笑っている。 ソファにふんぞり返って、手錠で両手を拘束されているにも拘らず、フツーにコーヒーを煽っている。 そのコーヒーも、先程自分で器用に点てていた。 よくその状態で点てられるなと思ったが、分けてもらったコーヒーは、大した物で、いつもと変わらない味だった。 「その…神乃木さん、何か、手伝うコトとかありませんか?」 「ねえ」 「……」 確かに、目の前の神乃木は、特に困っているようには見えない。いつも通り、悠々としている。 真宵に「ちゃんと面倒みてあげるんだよ、なるほどくん!」と言われたものの、先程から1人で何でもこなされてしまい、特に必要とされていない気もする。 少しくらい、世話とか焼いてみたいのだが。 成歩堂はため息をつきつつ、貰ったコーヒーをすすった。 それは事務所の掃除をしていた時のコトだった。 成歩堂弁護士事務所は、忙しい時は忙しいのだが、暇な時は本当に暇な極端な事務所だ。 神乃木が来ると、一体どうやっているのか、どこからか仕事を持ちこんできては押し付けてくるので、忙しくなるのだが、彼が来ないと段々と暇になっていく。 それではいけないと思いつつも、また忙しくなった時のために、事務所を片付けていたのだが。 「なるほどくん、タマにはトイレ以外も掃除しようよ」 「うーん、そうだなあ…」 本棚の資料は、整然としているが、基本的に読まないのでホコリを被っている。 デスクもあまり座らないし、引き出しの中には、真宵が持ちこんだよく分からないものが入っていたりする。トノサマンカードやシール…についてはもう何も言う気はないが、トノサマン汁をデスクの引き出しに入れるのは、やめて欲しい。 なんとなく途方にくれながら、それをまとめていると、真宵がソレを持ってきた。 「見て見て、なるほどくん!」 ジャラっと言う音に、何やらデジャヴを感じながら振り返り、驚いた。 「ま、真宵ちゃん!?何でそんなモノを!」 真宵が持っていたのは手錠だ。 「ホンモノかなあ。これ」 「まさか。ホンモノがウチの事務所にあるわけないだろ」 だが、成歩堂も真宵も、それを両手に掛けられた事がある。真宵に至っては2度もだ。このいやに冷たい感触は、見たトコロ、ホンモノのようにも見えるのだが…。 「これ、ドコにあったんだい?」 「冷蔵庫の中」 (な、何でそんなトコロに…) 「イトノコさんの忘れ物かな?」 「いやいや、いくらイトノコさんでも……」 忘れていくかも知れない。つい先日も、事務所に警察手帳を忘れていき、御剣にその事が知れて、「査定を楽しみにしていたまえ、刑事」と例の三白眼で凄まれたらしい。 「イトノコさんに連絡してあげようか?」 「いいよ、後で届けてあげよう」 この冷え具合からいくと、もう何日も冷やされていたようだ。何日も放置されてたのなら、急いで連絡することもないだろう。それに、糸鋸刑事の給料のためにも、コッソリ返してあげたほうがいい気がする。 「イトノコさん、これ以上お給料減らされたら、ソーメンも買えなくなるからね」 糸鋸刑事は相変わらずソーメンが主食らしいが、そのワリにはいつ見ても夏バテしている御剣よりも、遥かに元気そうなのが不思議だ。 「でも、なるほどくん。イトノコさん、これがないとハンニン捕まえられないんじゃないかなあ?」 「あの刑事に捕まるハンニンなら、コイツがなくても逃げやしねえさ」 声と共に、手の中の手錠を取り上げられた。振り返ると、いつの間にかカップを持った男が立っていた。真宵が嬉しそうに両手を合わせ、ペコリと頭を下げる。 「あっ、神乃木さん。こんにちは!」 「よォ、久しぶりだな。だが、コネコちゃんにはまだオトコを繋ぐ鎖は早過ぎるぜ?ブッソウなオモチャは持たねえコト、だぜ」 「…よく分からないよ、なるほどくん」 「……ぼくもだよ」 久しぶりに現れた神乃木は、手でクルクルと冷たい輪を遊ばせている。そして、事務所を見回して肩をすくめた。 「…で、何だい、この荒れようは。空き巣にでも荒らされたかい?」 「か、片付けてたんですけどね…」 成歩堂も真宵も、2人とも、不思議と片付けようとすると逆に散らかっていくタイプのようで、事務所は先程よりも雑然としている。 だがあまりソレには興味もないようで、手錠を成歩堂に返すと、あちこちに散らばったものを器用に避けながら、神乃木はさっさと給湯室の方へ行ってしまった。 多分、またコーヒーを入れるツモリなんだろう。 「どうも、早く片付けておいた方が良さそうだな…」 コーヒーを飲んで落ち着いたら、何を言い出すか予想がつかない。 「ね、神乃木さん、手伝ってくれないかな?」 「……無理だと思うよ」 とりあえず、少なくとも5杯はゆっくりコーヒーを飲むだろうから、一応猶予はある。その間にさっさとモノだけでも、どかしておいた方がいいだろう。 この状態のまま、また忙しくなってしまったら、目も当てられない。 「ねえ、なるほどくん、この手錠は?」 「とりあえず、どこかにしまっておこう」 「うん、分かった!冷蔵庫に入れておくね」 (何でだよ!!) バタバタと危なっかしい足取りで給湯室に走っていく。 (やれやれ…こけないといいけど…) 「きゃわわあああッ!」 思ったとたん、派手な物音と真宵の声が聞こえた。 「ま、真宵ちゃん!」 慌てて成歩堂も給湯室に向かうと、真宵は神乃木がしっかりと支えていた。 「……クッ、コネコちゃん。情熱的なのは構わねえが、足元には気を付ける事だぜ。オトコがウッカリ本気にしちまわないようにな」 (な、何言ってんだ…) もたれたままの真宵を立たせ、離れようとして、神乃木はフト驚いたようだった。 「…!」 真宵も遅れて気付いたようで声を上げた。 「あー!!」 何をどうやったのか、神乃木の手には手錠がはめられていた。にわかに慌てはじめる成歩堂と真宵の前で、神乃木は両手を繋ぐ鎖を、指先で持ち上げて弾いた。 「か、神乃木さん…」 「ご、ゴメンナサイ…」 神乃木はうつむく真宵の頭にポンポンと手を乗せると、成歩堂に顔を向けた。 「…成歩堂、鍵は?」 「なるほどくん!鍵は!?」 「……え、ぼくですか!?」 一応、冷蔵庫をあさってみるが、ソーメンとソーメンつゆは大量に出てきたものの、鍵はなさそうだった。 (これ全部、イトノコさんが入れたんじゃないだろうな…) 事務所はちょうど散らかっているし、この中からあるとも知れない鍵を探すのは困難そうだ。仕方なく糸鋸刑事に連絡を取ってみるが、何故か、こんな時に限って全く電話が繋がらない。 (まさか、携帯止められてるんじゃないだろうな、イトノコさん…) とりあえず、警察署にも連絡を入れてみたが、ちょうど留守のようだった。伝言は頼んだものの、いつまで待てばいいのか分からない。 「…ゴメンナサイ…」 真宵はショボンとしたままだ。 そして、神乃木は…フツーにコーヒーを点てている。 「…別に焦るコトはねえさ。冷たい輪っかだろうが、オレの熱いコーヒーは冷めやしねえぜ。タマには待つのも悪くはねえ、違うかい?」 (神乃木さん…ゼンゼン困ってるように見えないな…) それから、事務所を掃除しながら鍵を探しつづけ、結局事務所はキレイに片付いてしまった。 夜になってしまい、真宵を帰してからも、糸鋸刑事からの連絡はなかった。 そうして、今に至るが、神乃木は少しヒマを持て余しているように見える以外は、特に困っているようにも見えない。 手が使えない筈なのだが、何故か、その神乃木にあり合わせの物で晩ゴハンまで作られてしまった。何か手伝おうとしても、追い払われてしまう。 せめて、食事くらい手伝おうかと声をかけるが。 「神乃木さん…その、ぼくが食べさせましょうか?」 「いらねえ世話だぜ、成歩堂」 手が繋がった状態で、食事も器用にひとりで食べられてしまった。それはそれで凄いなと思うのだが。 (少し…サミシイ) 何を手伝おうとしても、あしらわれるばかりで、「まあアンタも落ち着きな、成歩堂」とコーヒーを手渡されてしまう。 落ち着けと言われても、困っているようには全く見えないが、一応、何かしら不自由だろう神乃木をほっておくワケにもいかない。 (何か…何かないだろうか…) 今の神乃木が困ってそうなコトで、何か手伝えそうなコトは…。 「そうだ!神乃木さん、カラダを拭きましょうか!」 神乃木はいきなりコーヒーを吹き出した。 「クッ…アンタ…、何を言い出すかと思えば…」 「でも…、それじゃお風呂も入れないでしょう」 手が繋がっているのでは、服を脱ぐのもままならない筈だ。それに、半脱ぎの状態では、自分でカラダも拭けないだろう。 「別に1日くらい、風呂もガマンするぜ?」 「そうはいきませんよ。1日、散らかっててホコリっぽい事務所にいたんです。アナタはカクジツに汚れている筈だ!!」 「……オイオイ」 とりあえず、ようやく何か手伝えそうなので、ココで引き下がるワケにはいかない。 神乃木は呆れたように、ため息をついた。 「…オレはこの服を脱げねえんだぜ?カラダをキレイにするのはいいさ。で、キレイにしてまた汚れた服を着直せとでも言うツモリかい?」 「…う。で、でも、少しスッキリするかも知れないじゃないですか…」 「……少し、ねえ」 吹き出してしまったせいで、ほとんど中身がなくなってしまったカップを置く。 そうして、チョイチョイと猫でも呼ぶように指で成歩堂を呼んだ。 成歩堂が神乃木の隣に座ると、その顎に手を掛け、ぐっと顔を引かれた。もう片方の手で頬をソロリと撫でられる。 「…いいさ、スッキリさせてくれよ、成歩堂…?」 「〜〜〜!!」 息がかかるほどの距離で囁かれて、思わず、ぐっと喉が鳴ってしまう。 「そ、そういうイミじゃありません…」 「じゃあ、どういうイミだい?」 「それは…」 言いながらも、なんだか段々と近付かれてるような気がして、思わず下がるが、両手で顔を挟み込まれてしまう。 そして、触れられている部分が、ミョーにくすぐったく感じるのは気のせいだろうか。 こう間近に来られると…。 視線を落とすと、神乃木の笑う口元が目に付く。 彼の口元を見ているウチに、気が付くと、手を伸ばして神乃木の両肩を掴んでいた。肩を掴んだ手を肌に沿って滑らせながら、腰に回す。 そのまま、成歩堂も顔を近づけようとして、いきなり口を掌で塞がれた。 「むぐ!」 「…カラダを拭くんじゃなかったのかい?」 神乃木は、掌の向こうでニヤニヤと笑っている。 「………」 (…ワザとやってるよな、このヒト…) 何となく後ろ髪を引かれるような気分で、成歩堂は体を離した。 洗面器とタオルを持って戻ってくると、神乃木はソファの上ですでに服を脱ぎ始めていた。 ネクタイを外し、ゆっくりとした動作でシャツのボタンを外している。 シャツの合間から、神乃木の褐色の肌が覗くのが見え、思わず心音が跳ね上がったのが分かった。 (な…何か、いやらしいな…) 神乃木の隣に腰掛け、タオルを濡らす。 「神乃木さん、ちょっと手を上げててください」 繋がれた両手を頭の上に引っ掛ける。その神乃木のシャツをはだけ、タオルを当てると、神乃木が僅かにみじろぎした。 「…クッ、生ヌルいな…」 「水の方が良かったですか?」 「いや、構わねえさ」 それでも、くすぐったいのか、どこか逃げるような動きを見せる神乃木を押さえようと腰に手を回す。 いつも冷たい肌がじわりと濡れて、ヌルい湯で体温が上がっていく神乃木を見ていると、何となくミョーな気分になってくる。くすぐったいのをガマンしているのか、時々こもったような息をつくのも、できればやめて欲しい。 ウッカリ気がどこかに行ってしまいそうなのを抑えていると、いきなり首の後ろに両手を回された。 「か、神乃木さん?」 「…腕が疲れちまったんでな」 頭の後ろでジャラリと鎖の擦れる音がする。 いつもの神乃木のコーヒーの香りに混じって、鉄の匂いを感じた。 そのまま肩口にもたれかかってくる神乃木は笑ったのか、首の辺りに熱い息がかかった。 濡れた神乃木にもたれかかられると、触れた部分がじわりと湿ってくる。シャツ越しに濡れた感触が伝わり、その部分が熱くなっていくのが分かった。 「…………」 じんわりとした熱い感触を追っているウチに、一瞬、気をどこかにやってしまったようで、フト我に返ると、ソファに神乃木を押し倒し、圧し掛かっているところだった。 「あ」 自分でも少し驚いた。 まさか、腕が使えない状態の神乃木をどうこうしてしまうツモリはなかった…のだが。 慌てて体を離そうとして、まだ成歩堂の首にかけられていた神乃木の鎖に阻まれた。 見下ろすと、下にいる神乃木は、ただ笑っているだけだ。 「…神乃木さん…」 顔をギリギリまで近づけても、タオルではなく指で直接肌を辿っても、抵抗する気配も見せない。 (アナタが…変に煽るから…) 今、また直前ではねつけられても、止まれる自信がない。そして、もしかしたら今なら抵抗されても、神乃木を容易に押さえつけられるコトに気がついてしまった。 濡れた神乃木よりも更に濡れて、大汗をかきながら自制をかける。 神乃木は、そんな成歩堂のトガった後ろ頭をチクチクと楽しそうに触っていて、首にかけたままの腕を外す気はなさそうだ。 離れるなら、早いウチに離れなければいけないが…。 (…もう、少し手遅れのような気がする…) 「…クッ、情けねえ面だぜ?成歩堂」 言いながら、神乃木が唇を合わせてきた。 「!」 触れるだけで、すぐに離れ、そして、ゆっくりと口に笑みを浮かべた。 「……ボウヤはハッキリ言わなきゃ、分からねえかい」 「…いいえ」 それが合図のように、ほとんど噛み付くような勢いで、キスをする。 濡れた柔らかい感触を唇に感じるだけで、一層体が熱くなったのが分かった。舌を差し入れて、中をじっくりと味わう。 舌を絡めとり、きつく吸うと、神乃木は小さく声を上げる。その声にすら煽られながら、角度を変え、より深く彼に入り込む。 唇を合わせたまま、ソファと神乃木のカラダの間に手を入れ、腰に両手を回し、もぞもぞと撫で上げる。 手の動きに合わせて、ぐっと引きつる神乃木の体を押さえつける。やがて神乃木の方から唇を離し、ふうっと息を吐いた。 「……オイオイ、がっつきすぎだぜ、弁護士サン」 「いけませんか」 「…いや、悪くねえさ」 確かに、いつもよりもミョーに興奮してしまっている気がする。 神乃木がやたらと気を持たせてくるからか、いつもジッとはしていてくれない神乃木を、偶然とはいえ、好きに出来る機会に見舞われてしまったからか。 神乃木の手を首から外し、手錠のせいか、少し赤くなっている手首にキスを落とす。 両腕を上げさせて、それを片手で押さえながら、胸を舌で濡らせていく。すると神乃木は喉に声をこもらせて息をつきながら、顔を逸らした。 気のせいか、神乃木もいつもより反応がいいような気がする。 「神乃木さん」 神乃木自身も、この状況を少し楽しんでいるのだろうか。 服の上から確かめてみると、すでに彼もその気になっているのが分かる。 ニッと笑ってみせると、神乃木も膝で成歩堂の足の間を探ってきた。 「…アンタも、だろ?」 「…まあ、ソレはそうですけど」 服に手を差し入れて、彼を直に刺激しながら、下も脱がせていく。足を抱えて一気に脱がせると、神乃木が体を起こそうとしているのが見えた。 手を貸すと、そのまま成歩堂の胸元にもたれてくる。 「…?」 見ると、神乃木は器用に口を使って成歩堂のシャツのボタンを外していた。 「なっ、何してるんですか?」 「…アンタ、オレだけハダカにしちまう気かい?」 「言ってくれれば、自分で脱ぎますよ!」 「…オレが脱がしてえのさ」 「………!!!」 (…な、何でこのヒトは、イチイチこう…) 成歩堂がうろたえている間に、ボタンを全部取られてしまった。ネクタイだけ残っていて、自分でも少しマヌケだ。 ネクタイを外しながらフト気付くと、神乃木がソファから降りて、成歩堂の内腿に顔を落とそうとしているところだった。 ファスナーを舌で拾い上げ、口でくわえる神乃木を慌てて止める。 「ま、待った!!」 「何だい?」 「し、下は自分で脱ぎます!!」 下まで口で脱がされたりしては、堪らない。そんなコトをされたら、多分…。 (…加減もなにも、効かなくなる気がする…) 慌てて自分で脱ぎ捨てると、神乃木は何やら楽しそうに笑っている。 とりあえず、神乃木をソファに上げ、これ以上悪さができないように、口を塞いだ。 彼の器用に動く舌を絡めとって、封じて。 これ以上、このヒトに煽られないウチに。 これ以上、このヒトに溺れてしまわないように。 多分、手遅れだろうけど。 が、その時。 ピーンポーン。 と、妙に場違いな音でドアチャイムが鳴った。 「え」 次いで、ガンガンと派手な音でドアを叩かれる。 「なるほどくーん!いるッスか〜〜!?」 このドアの向こうから聞こえるデカイ声は、すごく聞き覚えがある。 「い…イトノコさん……」 「……どうやら…、時間切れのようだぜ?成歩堂」 神乃木がニヤリと笑う。 体の上からどかされ、神乃木はすでにさっさと服を着始めている。床に落ちた服を手渡され、促された。 「アンタも、早くした方がいいんじゃねえかい?」 「……ううう…」 成歩堂はソファの上にバッタリと倒れた。 (い、イトノコさんのバカ……) その後、部屋に入れられた糸鋸刑事は、裁判でもないのにミョーに追い詰められているような成歩堂を見て不思議そうなカオをしていた。 「…その…何かあったッスか?」 「…まあ、時にはアツいコーヒーで火傷しちまうコトもあるのさ」 神乃木はよく分からないといった表情の糸鋸にコーヒーを渡し、冷や汗を流したままの成歩堂にもコーヒーを手渡した。 ようやく手が自由になった神乃木は、心なしか、楽しそうだ。 そっと小さな声で耳打ちされる。 「まあ、落ち着きな、成歩堂。いつだってまたアツくしてやるぜ?」 糸鋸からは見えないように、指で首筋をつっとなぞられ、成歩堂は呻いた。 (……あ、あんまり、煽らないで欲しいんだけどなあ…) 成歩堂は、神乃木が言うように落ち着けるコトを願いながら、少し濃い目に入れられていたコーヒーを飲んだ。 何となく、少し苦い気分で。 END |
御剣の時に縛りネタを書きそびれたので、この機会に書いてみました。 神乃木さんが繋がれる経緯がムチャなのは、できれば大目に見ておいてください。 |