チャオプラヤさんの2005年8月の訪タイ記

7月6日 

バンコク ドンムアン空港 12:00

 

「次バンコク来るのいつ?」

そんな予定などない。しかし。。

「うーん。12月かな。。」

「そう。・・・結構先だね。ちょっとさみしいかも」

「それまで仕事忙しいねん、年末まで休まれへんわ。。」

 

スムーズな会話は期待できない。

彼女は日本語は全くできないし、また英語は相当つたない。

彼女が持ってきた指差しタイ語会話(青本?)と英語と身振り手振りでなんとかそんな意味のやりとりをしていた。

 

(ドンムアン空港)

 

もともとタイへは表向きにはゴルフであって、若干夜遊びをたしなむ程度のつもりで来ていた。初心者といえば初心者。ありがちといえばその通り。しかしである。悪いことにここはタイである。この国の居心地のよさときたら強力である。オキニでもいれば情もわいてくる。日本の仕事仲間からすれば、何を馬鹿な・・・という失笑が聞こえてきそうである。

 

「日本に帰んの、イヤやな〜」

などと100%その場の雰囲気に流された言葉が口からもれる(・・情けない)。

「マイペンライ。December….Very very soon..」と彼女。

「せやな。Soonやな。。」(あーせつない)

私は立派なタイ・ドランカーとなった。

 

 

7月某日

日本 大阪

 

ツー、ツー、と日本の電話の話中のような音を立てながら、僕の携帯がバンコクを呼び出している。

タイ語もろくに離せない男が、日本に帰ってから3日おきに国際電話をかけている。

「ハロー。サワディーカッ。サバイディーマイ?」

Un!サバイディー! “Y”(僕の名前)、サバイディーマイ?」

「サバイディー。あのさ、来月にね、行こうと思うの、バンコク」

「え?ほんと?仕事?ゴルフ?」

「ちゃうよ、P(彼女の名前)に会いに行くだけ」

「“Y”〜、ラックンマーク!」

12月まで我慢できなかった。僕は独身だし、8月は盆休みがある。

とりあえず、会社の福利厚生施設で安いホテル(一泊3千円くらい)を予約してみる。

あっさり予約がとれた。HISに格安チケットの問い合わせをする。こちらはキャンセル待ちであった。今まで盆休みに旅行などしたことがなかった私は、この時期の航空券が恐ろしく高いことを知る。

先月は4万円くらいだったのに、平気で10万円以上してなさる。とりあえず、JALWAYSの便が6万円台で取れることを知り、8月14日〜18日でキャンセル待ちすることになった。

 

少し余談を。

彼女とはナナで知り合った。ウェイトレスである(Noは勘弁してください)。

出会った日の前日(7月1日)、僕はパッポンのキングスコーナーでゴーゴーデビューを果たし、そして、早速イレギュラーな授業料を払うこととなった。タニヤより高い、と文句をいうと「年増と子持ちばっかで、スタイル悪い女だらけのタニヤの相場と一緒にせんとってよ。私は若いし、スタイルいいねんから!」、とPBしたイサーン人はおっしゃる。ショート4000。写真とらせて(普通の写真です。。)と言えば500バーツ。何かといえばカネ、カネ、である。それまでスレたタイ人女子と遭遇したことがなかったため、「ついにきたかーー」とちょっとがっかりである。天使の都のイメージは一時荒廃。わかっちゃいたけど、しょせん水商売。こんなコもいるさね。

ただし、僕の分身の評価は違った。実はタイにきて3日も経つというのに、ナイープな僕の彼は未だno finishであった。それなのに、なぜか彼女には強烈に反応し、あっけなく果てた。

何だかなあああ。

後輩がPBした444番(Nちゃん)は見た目も性格もすごくよさそうで(一緒にご飯を食べながら観察する限り)、余計に凹む。翌日タニヤのオキニと後輩とNちゃんとでパタヤに行くも、僕はNちゃんが気になりっぱなしで今ひとつ身が入らず、オキニの変更を決意。僕の遊び方は、オキニを中心にちょこちょこつまみ食いしていくような感じである。タイデビュー依頼お世話になったタニヤ嬢は、日本語が堪能なことを除けば、物足りない部分が多く、私の経験値が上がればやがてはこういう結果が待っていたのだろう。バニーのNちゃん、今までありがとう。

 

翌日7月2日。昼はパタヤにいたが、夜はバンコクに戻る。パッポンに嫌気がさした僕は後輩とナナに行ってみることに。タニヤに行きたがる後輩には泣いてもらう(だってタニヤ嬢に見つかったらややこしいし)。

ナナ初デビューである。・・ナナ。いい響きである。前日の反省をこめて、女の子は厳選することを二人で確認。とりあえず、2階のGスポットから攻める。セーラー服ぢゃないか。ふむふむ。悪くない。その後、シルバードラゴン、マンダリン、3階のハリウッドロック2に行ってみる。なんじゃこりゃ。どうひいき目に見てもPBする気が起こるようなコがいないんである。

結局Gスポットが一番よかったということになり、Gスポットに戻ることになった。

うん?隣にもうひとつ大きいところあるやん。ふむふむ。レインボー4ね。。

入ってみよう。女の子の数が多い。しかも、選べるコの数も多い。

12時を回っていたせいか、ママが頼みもしないのにいろんなコを「どないだ?」と連れて来る。

どれもいまいち。70番を狙うもチャイニーズに先を越されてしまった。・・ちっ。今日も負け組か?そんなとき、ふと目の前を通ったのが今の彼女だった。

 

彼女はとにかく普通の人である。等身大の普通の20歳。例のKCの後だけに、「普通」がやたらツボにはまったらしい。もちろん見た目も好みなのだが。

気がつけば、出会った7月2日から、7月6日の空港まで引きずりまわしていた。

まるまる4日間も一緒にいると、彼女についていろんな情報が入ってくる。コラート出身の大学生であること、タイ人の彼氏がいたが別れたこと(今はタイ人じゃない人とつきあいたいそうな)、ドラえもんが好きなこと、音楽が好きなこと、辛い料理が好きなこと、兄と姉が一人づついること、姉夫婦が海外赴任でスウェーデンにいること、友達と2人で住んでいて、友達はGスポットでダンサーをしていること、彼女はダンサーにはなりたくないこと、等々。アユタヤに行ったり、お寺でのお参りの仕方を教わったり、象に乗ったり、チャオプラヤ川でボートに乗ったり、とそれなりに思い出もできた。いつの間にか、彼女は僕のことを「ハニー」と呼んでいる。そして、いつの間にか彼女の薬指にはホワイトゴールドの指輪が光っている。。

 

そうこうしているうちに帰国日である7月6日が来てしまった。彼女はしきりに次はいつ?という言葉を繰り返した。次は。。。「うーん。12月かな。。」

ダメ人間誕生の瞬間である。

 

 

8月14日

日本 関西空港  16:00

 

チケットは割りとあっさりとれた。

あいかわらず、話中のような音で、Pを呼んでいる。

「ハロー?」

「ハロー。今さ、関西空港だから、そっちの時間で23時頃バンコクにつくから。着いたらとりあえずR4に行くよ」

Y.今日は仕事休んだから。早く会いたい!」

うれしいことを言ってくれるじゃないか。妙なタイ語と英語を携帯電話相手にまくしたてる僕を、一緒に行く後輩が好奇の目で見ている。

 

バンコク ドンムアン空港 23:00

 

着いた!説明不要の高揚感。タクシー乗り場で青と赤のタクシーを見て、バンコクにいる実感が高まる。タクシーに行き先を告げ、ホテルに向かう。

 

タクシーの中で彼女に電話する。でない。タイ語の女性の声で何かメッセージが流れている。おそらく「電波の通じないところにあるか、電源が入っていないため、おつなぎできません」とか言ってるのだろう。

マイペンライ。とりあえず、タイ初上陸の後輩のガイドもあるため、チェックイン後、ナナに行くことになった。

 

今回のホテルはバイヨークスイートである。プラトゥナム市場のそばに立つホテル(有名なバイヨークタワーのとなり)で、部屋タイプはスイートのみ。一泊3500円でJFは不要。ルームサービスもまあまあおいしい。値段を考えれば十分満足なのだが、難点が2つある。一つはベッドがやわらかすぎて(マットを2つ重ねてあるだけ)、彼女と愛し合うときに不安定で落ち着かないこと。もう一つは、エレベーターが信じられないくらい遅いこと(5分以上かかる)。

チェックインしたのが24時頃だが、ボーイが荷物をなかなか持ってこない。ナナは一応、一時で閉まることになっている。こっちは急いでいるのだ。いらいらしていると12時15分ころやっと来た。いらいらしているこちらをよそに、「これからどちらへ?」などと聞いてくる。律儀に「ナナですわ」と答えると、にやっと笑って「メニーレディ〜」と妙なリアクションである。

 

気を取り直して後輩とナナへ。あいかわらず彼女の電話は応答なし。

行き先をナナプラザと告げると、タクシーの運ちゃんは「Oh−!」といきなり調子づいて僕らに話しかけてくる。例によって変な英語。

「ナナは確かにレディ多いけどさー、やめときって。あそこは白人が多いからさ、白人のモノはでっかいだろ?あれに突きまくられてナナのレディはガバガバだよ(笑)」

と左の親指と人差指で作ったリングに右手の人差指を突き刺すしぐさを繰り返す。

ちゃんと運転せんかい。さらに、「ナナじゃなくてもこの先にいいMPがあるからそこはどうだ?ポセイドン並だぜ。ナナのレディみたいにガバガバじゃないぜー。それか、ロシア人の女はどうだ?色白でええでー」などと自己主張なさる。

「いいからナナに行けよ!俺はロシア人よりタイ人のほうが好きなんじゃ!」というと「OK、OK、Up to you 〜」と運ちゃん。気のいいやつ、ではある(7月に悪徳ドライバーに遭遇して以来、素直に行き先に行きたがらない奴には警戒していた)。

 

0:45頃ナナプラザにたどり着く。とりあえず、R4である。彼女の話ではなんだかんだで1時半くらいまではやってる、と聞いていたから、後輩が姫を選ぶくらいの時間はあるだろう。

そこにオカマのチェがやってくる。ウザい。「今日はポリスが来てるからもうすぐ閉めるよ。早く選べよ」なんておっしゃる。うそこけ!っと適当にあしらっているといきなりライトが落ちた。

ホントに終わったやんけーー。たまにはチェの言うことにも耳を傾けねばなるまい。

 

ところで、Pの電話はまだ通じない。・・マイペンライ。

後輩はGOGOの雰囲気ですっかり勢いがついたようなので、夜食をかねてサイアムホテルに向かう。が、女子少ない。テルメにしとくべきだったか?男子は、日本人を筆頭に、中国人、韓国人、タイ人がいる。後輩はタイ人が好みそうな細身のイケメンである。女の子が「コンイープン?」とか「アナタカッコイーネー」などと言い寄ってくるが、お気に召さない様子である。彼のポリシーは「妥協しない」ことだそうだ。

二人でフライドライスとコンソメスープをつついていると、僕の電話が鳴る。

2:00である。ようやく彼女が寝ぼけ声で電話してきた。

「ごめんなさい、ちょっと寝ちゃってた。。いまからホテルに言っていい?バイヨークスイートだよね?」

「マイペンライ。ホテルで待ってるから着いたら電話して」

彼女は二時半には着くって言ってるし、後輩も疲れてきたようなので、ここらで撤収。後輩は気の毒だが収穫なし。

 

少しあわててタクシーでホテルに向かう。ホテルは彼女の部屋の近くである。彼女より遅くなると、何を言われるかわからない。この時間ホテルにいないのははっきりいって相当怪しいのである。

 

彼女は3時前にやってきた(どうでもいいが彼女の常に30分遅刻する人である。よくあるタイ関連本に書いてある通りの人である)。遅い時間であり、僕が中から迎えに出たため、ボーイの目にとまる。そのままご親切に、レセプションにご案内くださる。女性の従業員が彼女に(IDではなく)なぜかパスポートを見せろ、という。彼女は恥ずかしそうに「タイ人です、、」と答えてIDを渡している。その姿が妙にそそります。。

 

部屋に入ると彼女の様子がおかしい。・・うん?怒ってる?

Y.どこ行ってた?浮気してたんでしょ?」

げっ?バレてるのか?といっても僕は悪いことは何もしてない。しかし、一応ボーイフレンドだと思っている男が援交カフェなどにいたことがバレれば、何を言われるかわからない。

「え?どこにも行ってへんって。ナナには行ったけど、それは友達がレディを探すためだから。僕は何にもしてへんて。」

「ナナに行った?他のレディとショートで会ってたんちゃうやろねーー!」

「違う違う!Pだって電話したけど出えへんかったやん?」

そういうやりとりをしばらくじゃれるように続けた後、どちらからともなく「会いたかった」。

キスをして、仲直りです。

そうやってムードが高まったところで、日本から持ってきたお土産を渡す。喜ぶ彼女。この辺は腹黒いワタシです。

ラブラブモードでラトリーサワット。

 

8月15日

午前11時。彼女は全く起きる気配がない。そういう僕も起きる気がない。二人で気の向くままキスしたり、抱き合ったり、幸福な時間を過ごす。

彼女とは体の相性もよく、抱き合っているだけでかなり気持ちいい。

 

12時。ようやくシャワーへ。後輩に連絡をすると後輩も今起きたところだという。3人でランチをとることにし、タイスキチェーンのMKに入る。ここで後輩を彼女に紹介する。彼女は後輩を「タイ人みたーい」といって笑っている。東南アジアで絶大の人気を誇るT君です。

 

それにしても、卵を割ったり、お皿を配ったりする(いわゆる日常動作ってヤツですか?)彼女を見てると、ついつい人の「縁」などと哲学的なことを考えたりもする。バンコクで働く一人の女性との出会いが、日本人を一ヶ月後に再びバンコクに呼び寄せてしまうとは。。完全に予定にない行動であったが、そういうことがあるから人生って楽しい。

 

その後は王宮の周辺を観光し、ワット・ポーに立ち寄り、いったんホテルに戻る。18:00ごろホテルに着く。ここで彼女はR4に行くため、いったん別れる。待ち合わせは彼女の提案で20:00ってことで。

 

(ワットポーにて)

 

20:00。後輩とR4に行く。彼女はまだ来ていない。改めて店内を見渡すと、本当に客が多い。その大半は日本人である。自分もその一人じゃ!と自分に突っ込みながら女の子を見てみる。やはり女の子のレベルは高い。彼女は置いといて、No38や70は好みである。

そうこうしていると彼女がやってきた(またもや30分遅れ)。彼女が僕の隣に座ると、友達のウェイトレスが寄って来て、なにやら彼女をからかっている。とりあえず、店に3日分のPBを払っとく。

後輩が他のバーを見たいというので、とりあえず1階のバーから攻める。彼女に気兼ねしている後輩に、彼女が「Up to you〜」と声をかける。

レインボー1。だめだこりゃ。

レインボー2。もっとだめ(時間帯にもよるのか?日本で聞く評判ほどではないような・・)。かわいいコはどうも4に移っているらしい。

 

ヴゥードゥー。

彼女:「ほんとにヴゥードゥーに入るの?(笑)」「やめといたほうがいいって。」

僕と後輩:「とりあえず、見るだけだから!」

彼女:「OK、OK。マイペンライ(言いながらも笑っている)」

とりあえず入る。(なにゆえマイペンライ?)

僕と後輩:「・・・・・・ごめんなさい!」

水を一口飲んで逃げ出しました。

確かに、マイペンライ!であった。完全にファラン向けなのでしょう、動物園状態でした。。

もう一つ、レインボー3にも行ってみたが、ここもだめ。結局R4がNo1だという結論でR4に戻ることに。彼女がしきりに「R4 is No1!!」と言っていた意味を知ることになった。

ここで7月に後輩がPBした深田恭子似に遭遇。そのときは翌日僕の彼女と4人でアユタヤに行ったため、二言三言あいさつを交わす。ちょうど日本人にPBされて行く途中でした。彼女は日本のコギャルそのまんまって感じでかなりカワイイ。日本人に大人気である(毎晩「愛してる」って言われるって言ってました。。)。舌にピアスした深田恭子似、知ってる方も多いのでは?

 

どうでもいいが、R4にもLBはいる。それも結構かわいく、人気があるらしい。

「何でわかんないのかなー。ノドボトケあるのに。日本人がいっぱいPBして行くよ〜。」と彼女が笑っている。そういうお前は女なんやろなーと、たまに不安になる僕です(IDで確認したら大ジョブでした)

 

そうこうしていると隣で後輩が狙いを定めたようである。彼女にNo6と告げ、ステージから連れて来てもらう。彼女によれば、今いちばん指名が多い、すなわちNo1とのこと。

19歳の学生(←ほんまかな?)、レンちゃん。後輩が難しい顔をして悩んでいる。聞けば、4500バーツと言われてるらしい。これは強気価格である。見れば見るほどかわいいのも確か。結局後輩は「¥パワー見せちゃる〜」とOKしたようだ。その後PBを払ってR2に飲みに行くという。彼女はもともとR2のコらしい(後輩は結局この後彼女の部屋に泊まったようです)。

 

僕も彼女と店を出て、ホテルに帰る。

ベッドの上で明日の予定を話す。そういえば彼女、昨日も今日も、日本の古着系のジャケットを持ってきている。後で知るのだが、タイではお寺に入る際は両肩を出して入ってはいけない。彼女は僕がお寺に行きたがるだろうと読んで、予め用意していたのでした。カワイイやつめ。

などと考えていると、彼女が愛しくなり、ごく自然になるようになる。

なんかもー、ほんとに可愛くなってきました。

ヤバイです。。

 

8月16日

午前10時、起床。後輩からリンちゃんが起きないため、しばらく一緒に寝てる、と連絡が入る。はいよーっと、僕は彼女とホテルの近くのレストランでブランチ。

僕はグリーンカレーとフライドライス、彼女はトムヤムクンとスチームドライス。彼女の食べ方はトムヤムクンをまるでカレーのルーみたいにご飯にかけて食べる。そういえば、日本の仲間内でトムヤムクンを食べるときは、あくまでスープ単品として食べていた。ほうほう、なるほど。そうきますか。

僕も試してみる。

「アロイマーク!」そうか、こうして食べるのね。人によって好みは違うのでしょうが、僕はこれが一番気に入りました。

 

ご飯の後、プラトナム市場の近くでタクシーを拾い、ワット・アルンに行く。日本から持ってきたバンコクの地図には載ってない新しい吊橋がチャオプラヤ川にかかっていて、思ったより早く着きました。

三島先生の小説で有名な「暁の寺」には、旅行会社のツアーで日本の団体客が来ています。

彼女は「コンイープン〜」と何だかうれしそう。日本人カップルの女の子の視線をまじまじと感じつつ、とりあえず写真撮影にいそしむ。その間、僕と一緒にいるためか、彼女はお土産屋のおばちゃんや怪しいツアーブローカーのおっちゃんらに日本人と間違われ、まんざらでもない様子である。

確かに、日本人ウケするタイ人というのは、タイで見るとすごく日本人っぽく見えるコが多いのだが、日本に帰ってナマ日本人(♀)を見ると、やっぱり全然違うんである。この辺の違いをさっきの日本人カップルの女性はいち早く見破ったようです。なんか汚らしい目で僕を見ています(笑)。

 

彼女はタイ人らしく、敬虔な上座仏教徒です。したがって、観光地のお寺であっても、彼女の関心はきらびやかな塔(ワット・アルンなんかこの塔を見に来るわけです、我々観光客は)よりも「お参り」に傾く。案の定、ワット・アルンでもそれは例外ではなく、どちらかというとあまり目立たないお堂の中に連れて行かれ「ワーイパ」(お参り)です。

けれども、これがいいんです。見た目は日本の同年代の女の子と変わらないファッションの女の子が、ひざまずいて丁寧なお辞儀を3回繰り返す。これは新鮮です。となりでは白いシャツと黒のタイトスカートを着た女子大生2人組が僕らのことを「ありがち〜」みたいな目でちら見しています。

彼女はそれには構わず、熱心にお参りしています。僕も彼女をまねてお参りします。一応僕も仏教徒、しかもお盆の時期なので、バンコクからではあるが、日本のお墓参りをしたことにしよう。彼女には「I wish your happiness.」などと調子のいいことを言っておきます。律儀な彼女は「コォプン」とワイをします。カワイイやつめ。

 

そうこうしていると後輩から携帯が鳴る。とりあえず彼女と別れたんでこれから合流したいのだと。

時計を見ると午後3時。夕食前にマッサージに行くつもりだったので、ちょうどいい時間である。後輩とパッポンのスターバックスで待ち合わせることにした。

現れた後輩は白いシャツを着ていたが、心臓の上のあたりに派手な口紅のキスマークがある。よく見ると首筋にも無数の口紅の跡がある。おいおい〜恥ずかしいからそんなものをつけて一人で歩くのはよしたまえ(笑)。例のリンちゃんは、二時ごろ起きてきてそのまま後輩とデートしようとしたらしいのだが、基本的に一回で飽きるタチの後輩は「うっとおしかった」らしい。

一人で帰る、というと執念の(?)キスマーク攻撃。意味はよくわかりませんが、そんなタイ人、大好きです(^^)。

彼女もすかさず、「マイペンライ!」。便利な言葉である。

とりあえず、彼女も含め3人で近くのマッサージ屋で古式マッサージ(2時間コース)を受ける。タイ人の彼女が僕らのとなりでおばちゃんに攻められている姿はなかなか新鮮である。マッサージ終了後、出口でチップ待ちをしているおばちゃん、僕と後輩はチップを渡して出るが、彼女は意味を理解していないのか知らんぷりである。さすがに彼女の分は僕が渡してあげました。

 

晩御飯はBTSチョンノンシー駅近くの中華レストランで。北京ダックとツバメの巣が目的です。日本ではとても手が出ないので、タイは高級中華をたらふく食べておこうという趣向です。

彼女とは前回の訪タイ時に一緒に北京ダックを食べたのですが、驚いたことにそのときが初体験でした。うそくせーと思ったのですが、いきなりアヒルの皮だけつまんでうまくかみきれず「うーうー」ともがいているのを見ると、どうやら本当のようです。食べ方を教えると「アロイ!」とかなりの勢いで食べておりました。そして、今回もよく食べています。

大切な人がおいしそうに食べている光景は、見ているほうも幸せな気分になります。ダメ人間ますます覚醒です。かなり一時的な感情だと思うのですが、これはこれで馬鹿になりません。たぶん、異国のもの珍しさなどからくる「勘違い」的な衝動。しかしまあ、難しく考えるのは無粋というもの。ここは悠々と流れるチャオプラヤの流れのごとく、流れに身を任せてみましょう。

 

そんな僕達を尻目に後輩はポセイドンを目指して旅立って行きました。健全な(?)我々はホテルに戻ります。途中、紀伊国屋でプーケットのガイド本を2冊(タイ語のものと日本語のもの)を買って、そこから歩いて帰りました(10分くらい)。テレビが大好きな彼女はテレビにかじりつき、僕は荷物を整理したり明日の予定を考えたりで、しばらく思い思いの時間が流れていきます。

ふと見ると、それまでテレビを見ていた彼女が隣にやってきてモジモジしています。・・もしや、今夜は彼女のほうから誘っているのか?ほほう。かわいいやないけ。

「・・ヒゥ カーォ・・」

「うん?アライ?」

「・・Hungry!!」

腹減ったんかい!さっきご飯食べたばっかりなんですけど。。ちょうど食べきれずに持って帰った酢豚があったので、それが食べたかったみたいです。そんな子供みたいな無邪気さに弱い僕です。

食べ終わって上機嫌な彼女としばらく語学の時間。「私は嫉妬深いから気をつけて!」という意味になるよう、彼女は一生懸命指差し本で単語を探し出します。

「カオチャイマイ?」

「・・かおちゃい。。」「らっくんまーく、Only you. ジンジン!」

と、節操のない英語タイ語まじりの奇妙な言語で答えます(シングリッシュもこんな感じなのかな?)

「ジンジン?」

「うん!ジンジン ナ!」「P, マイダイ・ノージャイ. カオチャイマイ?」

「カオチャーイ。ラックン!I love you〜」

抱き合いながらそんな会話を繰り返しつつ、夜は更けていきます。。

 

 

8月17日

今日はいよいよ最終日。といっても、23:59発の便なので、ぎりぎり10時過ぎくらいまでは一緒にいれるでしょう。ホテルも翌日まで部屋をとっているので、最終日とはいっても時間的にはゆとりがあります。

今日の予定は、午前中は後輩と3人でシリラート死体博物館とワット・プラケオに行き、そこでランチ。昼からは後輩はラチャダー(今日の狙いはシーザーのサイドラインだそうで。。)、僕らは二人きりでしっぽり、です。

朝、相当がんばって八時過ぎに起きました。彼女も一応起きてるみたいです。が、様子が変。

うん?泣いてるじゃないですか!もしや起き抜けにめちゃくちゃしてしまったか・・?(実は朝はたまに乱暴プレイをやっちまうようで、日本でもたまに彼女に怒られます・・。本人はあまり記憶がありません)。Why?と聞いてみると、どうやら僕が帰るのが寂しくなったようです。ハタからみれば安っぽいドラマのような、目も当てられない光景ですが、本人同士はそういうわけにはまいりません。

そんなことをされれば、ウミガメの産卵シーンでも目から汗が出てしまう僕のこと。ひとたまりもありません。目頭が熱くなってしまうではありませんか!男32歳、タイで涙している場合ではありません。・・結局、無様な姿をさらしてしまいました。。

しばらくそうしてましたが後輩との約束の時間は9時なので、お互いはれぼったくなった目をこすりながらとりあえずシャワーに入り、何とか9時に間に合わせました。

 

行き先は死体博物館。さっきまでのムードがぶちこわしです。場所が少し病院の奥まったところにあってわかりにくいのですが、そこは彼女がいろいろ聞いてくれて何とかたどり着きました。

タイ人の死体好きは有名ですし、死体博物館もそこそこ有名なので、行ってみようということになったのですが、ちょっと、これはいけません。繊細な日本人には少々ヘビーな代物がごろごろしています。

シャム双生児のホルマリン漬けが一番展示数が多いのですが、夢に出てきそうです。しかし、ここでもタイ人は違った反応をします。たまたま一緒になった中学生の社会見学グループなどはそうした死体標本(それも頭がない子供とか、皮膚がただれた子供とか、、)をバックに写真など撮っています。彼女のほうを見ると、初めて来た!なんていいながら楽しそうです。あれだけお化け(ピー)は怖がるくせに、死体はただのモノにしか見えないらしく、全然平気なんだそうです。彼女いわく、「だって、あれは私たちとは違うもん!」だって。そういえば、アユタヤで象に乗ったときも、壁にプーケットで死体を掘り起こしたり運んだりする象の写真が展示してあって、かなりグロい死体が写っていたのですが、彼女は目もくれず、ここは今すんごいキレイになったよ!なんて言ってましたっけ。

 

とりあえず、見るものは見たので、ワットプラケオに移動です。車で橋を渡ればすぐです。金色の塔なんかを一応写真にとって、お約束のタンブンをかまして、チャオプラヤ川のほとりでランチを食べます。

 

しばらく3人で話をしていましたが、とうとう、後輩と別れて僕たち二人になりました。

再びしんみりしてきます。別に行きたいところもないのでホテルに帰ることにしました。タクシーの中では、ちょっと恥ずかしいくらいにぴたっとくっついてきます。悪い気はしませんが、タクシーの運ちゃんの手前、少しだけテレます。運ちゃんはよくあるタイ人×外人カップルと心得ているのでしょうし、彼女は彼女でタクシーの運ちゃんなんか石ころほどにも気にならないようです。

 

部屋に戻ってからは、12月の予定とかを話しながらまったりします。彼女は今年の2月に姉夫婦と3人でプーケットに行ったときのことをいろいろ話してくれます。お姉さんはダンナがいたからよかったけど、彼女は一人で、少し寂しかったそうです。パトンとかのメジャーなビーチは「マイスーアイ」なんで、今度は僕とピピかクラビに行ってみたい、なんて話になっていきました。そういえば、その辺りはディカプリオの映画「ザ・ビーチ」のロケ地で、それなりに感銘を受けた映画だったので、僕自身ととても行ってみたくなりました。ということで快諾です。

 

(ホテルにて)

 

ふと、彼女が僕のメモ帳を拡げて何かを書き始めました。

「アライ ナ?」と覗き込んでも見せてくれません。その後、30分くらいメモ帳とにらめっこしてましたが、ようやく、はい!と渡してくれました。見ると、3ページくらいに渡ってコーカイで手紙が書かれています。真ん中のスペースには自分のプリクラを貼ったりしてなかなかデザインにも凝っています。「読めないよー」というと、「日本に戻ってタイフードレストランに行くことがあったら、そこのウェイトレスに読んでもらって!」っと悪戯っぽく笑います。「見せても大丈夫な内容なん?」と聞くと、マイペンライ、マイペンライ!と彼女。うーん。何て書いてるかは知りたいけど、日本でタイ人のウェイトレスにこれを見せるのは、相当恥ずかしいぞ。第一、ほかの店員の目もあるし、他の客もいるではないか。何もそんなところで、「私はタイでおねーちゃん買ってマース!」みたいな恥をさらすことはなかろう。。

もう一度書面を見てみる。。かわいい。お土産としては最高やな・・・。そうだ!西中島の立ちんぼに聞こう、いや、あそこは台湾人かフィリピーナだっけ?タイ人の立ちんぼなんていたっけな?待てよ、確実にタイ人がいて、レストランじゃないところ、あるじゃないか、あるある。マッサージがあるぢゃないか。マッサージなら個室だから、マッサージの人に対して恥ずかしいのだけ我慢すれば他の人にはバレないですむ。それでいこう。

 

後は、時間が流れるのはすぐだった。空港で別れるまでの間、彼女は「私絶対PBを断るからYも浮気ダメ!わかった?」なんてことをずっと言ってた。しょせん、ナナのコである。PBを断れるなら最初からバーで働かない訳で、その言葉を真に受けるほどガキではないし、そんなことを口にするほど無粋なことはない。ここは女の手のひらで転がされるほうが、お互いHappyなんである。だからこそ、僕も、「Pこそ、浮気すんなよ!」などという言葉を吐いてしまう。

彼女は、僕がプレゼントした指輪をいつも左手の薬指にしている。少なくとも会っている間は。それでいいと思う。彼女は最近もその指輪を客に見せてPBを断ったという。。それが本当なら本当で悪い気はしないが、一方で彼女の生活も心配だ。すべてを受け止める自信は今の僕にはない。彼女は好きだと思うが、お互い、距離感を間違えないようにしたいと思う。そして、時間が許す限り、僕は彼女と関わっていきたいと思う。

 

そんなことを考えながら、最後に彼女を抱いた。時計は21時30分を指している。そろそろ、用意をしないとね。先に身支度が終わった彼女の目からは、再び涙がこぼれている。。タイは楽しいけど、これがツライ。

 

22:00。チェックアウトを済ませ、後輩と合流し、彼女と3人でタクシーを拾う。渋滞もなくスムーズに空港に着いた・・と思ったら、出口が大渋滞しており、ぴくりとも動かない。タクシーの運ちゃんによれば、今空港にロイヤルファミリーがいるから、警備のために高速の出口を封鎖しているのだという。

おいおい。やばいやんけ。ここからは彼女とのしっぽりムードも吹っ飛び、ひたすら帰りの心配をすることになってしまった。だって明日はお仕事ですから。

結局、ギリギリで空港についた挙句、違うターミナルでおろされ、彼女とは車のなかで、あわただしく別れることになってしまいました。最後までこの国は退屈させません。

 

8月18日

大阪、なんば

30分3千円という、タイ帰りには目もくらむような値段をつけたマッサージ屋に僕はいた。ちょっと恥ずかしいが、手にはあのメモ帳を持っている。

「あのー、マッサージってもちろんタイ人ですよね?」

「はい、タイ人もいます。でも、今は他のお客さんについているので、中国人か、ネパール人になります。。」

「じゃ、タイ人の人が終わるまで待ちます。。」

「え?なんで?」

「いやいや、とにかくタイ人がいいんですよ。待ちますから!」

30分後、僕の前に思ってたより若いマッサージ師が現れる。ノイちゃん、27歳、日本人と結婚している。出身はPと同じコラートだ。

「あのー、マッサージはともかく、これ訳してくれませんか?」

「オー、タイ語。アナタノカノジョ、タイジンデスカ?フーン。。ワカリマシタ・・・ププっ(笑)」

「え?なんか変なこと書いてある?」

「イエイエ、大ジョブデス。デモ、アマーーーーイ(笑)」「トテモアマイネー、カノジョワカイネー」

「だ・か・ら!・・なんて書いてあるんすか?」

 

手紙にはこう書いてあった。

ハニーへ

         バンコクでは一緒にいれて楽しかった。ありがとう。

         日本に帰ってから、日本の女の子に目移りしそうで心配です。

         私はいつもあなたのことを考えています。

         ふだんは平気だけど、たまに寂しいときがあります。

         いつも電話してくれてありがとう。

         早くバンコクに帰ってきてね。

         仕事が大変そうだから、体に気をつけて。私も気をつけます。

         愛してます。

 

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初めて書いてみましたが、ちょっと要領がわからず長くなってしまいました。せっかくなので投稿しますが、一穴主義だったこともあり、ほのぼの系になってしまいました。邪悪さを求める向きにはつまんない内容になってしまい、すみません。

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