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ROSS~需要と供給―demand & supply―

 
 ※商人に萌えてみよう
 ※商売人とプリースト ややブラック系
 ※2006/06/06
 
続き
 
 

やあ、お客さん、昨日のプリさんだろう?
やっぱりな、昨日はありがとう。ばたばたしてて礼を言えなかったの、気になってたんだ。あんたのほうから来てくれるなんて願ったりかなったりだ。うちの露店に並んでるもの、全部おまけさせてもらうよ。いいんだって、礼を言わなきゃならないのはこっちなんだから。あんたがリザしてくれなかったら、俺はこの露店の影でくたばっちまってたんだからな。
まったくひでぇもんだ。仕入れもすんでさあこれから一稼ぎするかと思ったら、背後から魔物にばっくり食いつかれるんだもんなあ。
はぁ?とか思ったときにはもう目の前まっくらでさ。血が足りなくなったら目が見えなくなるって、あれ本当だったんだな。ブラックアウトってやつ?できればもう二度と体験したくないな。しかしこんな街のど真ん中で古木の枝を使うなんざ、最近の若いやつはなに考えてるのやら。
え?ああ、いや、たしかに俺も”若いヤツ”ではあるけどな。へへへ、これはじいちゃんの口癖でね。よくそう言っておこってたよ。それを聞くたびに俺も苦笑いしてたもんだが、これがうつっちまったみたいでね。つい口をついて出ちまうんだよな。
……へへ、お客さん。あんたやっと笑ったなあ。うん、かわいいかわいい。
仏頂面じゃあもったいないよ。せっかくそんなきれいな顔してるんだからさ。
いやいや、からかっちゃいないよ。ほんとだって。
そりゃあ、たしかにあの惨状を目の前にしてにこにこしてろってほうがむずかしいかもしれないが、打ちのめされた時に人を救うのはやっぱり笑顔なんじゃないかな?
あー、今のはちょっとクサ過ぎだけど、まあ、嘘でも笑ってればなんとなく大丈夫な気がしてくるもんさ。苦しいときほどニヤリと笑えってね。昔の人はいいこと言うね。
さてと、なにか入用なんだろう?勉強しとくから気軽に選んでくれよ。
青ジェムね、おいくつ?了解、包んどきますよ。
この箱ひとつで10個セットだから、使うときは小分けにして持っていってくれ。
ついでだし専用の小袋もおまけしとくよ、えーと、たしかカートのこのへんに……、お、あったあった。
そうだ、お客さんブドウジュース飲むか?へへ、金はいらないよ。サービスサービス。なんたって命の恩人だしな。おまけに今日はお客さまだ。そりゃあこっちもなにかしてあげたくなるってもんさ。
はいよ、よく冷えてるっしょ?このバッグにゃルティエの雪をしこんであるんだ。
そうそう、一年中メリークリスマスなあの街。俺の弟がよくあそこに行くんでね、採ってきてもらってるのさ。
んー、仲がいいっつーか……どうだろうな。
うちの弟は狩人やっててさ。ハンターって、ほら、わりとどこでも行けることは行けるっしょ?そのせいか、いきあたりばったりな性格に拍車がかかっちまって、空がきれいだからあっち、風が吹くからこっちってな具合で、世界中ふらふらしてまわってるんだわ。
だから狩りにいったってろくなもの獲ってこないし、高額なレア物なんて夢のまた夢。そのうえすばしっこいぐらいしか取り柄がなくて、手先はあんまり器用じゃないときてるから、まあとにかく矢代やら罠代やら出費が多いんスよ。
んで金がないから俺にたかるわけね。しょうがないから俺がいろいろ面倒見てやってるんだわ、そのかわりこうやって商売に役に立つものをいろいろ取ってこさせてるってわけ。けど今まであいつにかかった経費を鑑みるに、ちっとももとが取れてないんだよな。いやほんと愚弟を持つと苦労しますわ。
……ん?ああ、ブドウジュースのとなりにあったあれね、青ポーションだよ。
そうそう、飲めば気分爽快、ここいちばんのふんばりどころにってヤツね。
なにしろ原料が原料だから、俺も八方手を尽くして探しまわったんだけど、今そこにあるふたつしか手に入らなかったんだよなあ。
ふたつしかないんじゃあ、露店にならべとくにはすこしばかり体裁悪いし、どっかの転売屋に買い占められちまうのがオチだからね。カートの肥やしってわけ。俺としてはやっぱり、有効利用してくれる人に買ってほしいし、そうなると値段を高くするわけにもいかない、むずかしいところさ。
そうだなあ、お客さんみたいな人にだったら、こっちからお願いして使ってもらいたいくらいだな。どうだい?お客さんさえよければひとつあげるけど……いやいや、金はいいって。だからこれは感謝の印として……。
……。
……。
わかった、わかりました!お客さん、あんたなかなか強情だな。
まあ俺の知ってるプリーストには一本筋のとおった人間が多いからな。あんたもそうなんだろうな。
そうだなあ、材料費が……だから、これぐらい出してもらえると助かるかな。
どうも、まいどあり~って、お客さん多いよ。
釣りはいらないって?またそういうことを言う。あんたそのうち足元すくわれちゃうよ?

なんだ?急に人が……。

ああ、また枝テロか。よくやるよまったく。
噴水のほうだな、こっちからじゃよく見えないが……あれ、お客さん?お客さん?
待て、行くんじゃない!
ダメだよ、お客さん。あんた戦いは不得手なんだろ?
そんな感じだ、隠したってわかるよ。ほら目をそらした。
俺はね、商人だよ。日がな一日この通りで人を見てるんだから、ちょいと言葉を交わせば相手がどんな人間かはだいたい見当もつくってものさ。
いまのあんたじゃ駆けつけたって返り討ちにあうのがオチだ。
くやしいだろうが魔物はほかのひとに任せたほうがいい。
じっとしてられないって?
仕方ねえ、つきあうよ。
へへ、俺だって魔物相手に立ちまわるのは苦手だけどな。
なあに、まわりの人間に薬を渡してまわるくらいはできるだろうよ。
……。
………。
…………ひでぇもんだな、これは。血の臭いがぷんぷんする。
お客さん、だいじょうぶか?そんなに天使を呼びだしたりして。
あんまり無理するとあんたが連れて行かれちまうよ?
ほら、顔色が悪いじゃないか。そこのベンチですこし休もう。
魔物は殲滅されたみたいだし、これ以上死者が増えることはないさ。
さっきの青ポ飲んだほうが良くないか?
人心地つくまでそばにいるから安心しなよ。
……落ちついたか?
それにしても……お客さん、テロはお嫌いかい?
いや、好きな人間のほうが少ないってのはわかってるけど、お客さんはその、なんていうか、憎んでるといった感じだな。
……え……妹を殺されたって?
……めざしていたアコライトになって……これからって時に……蘇生がまにあわずにそのまま……そうか……だから天使を呼べるだけ呼んで瀕死の人間を癒してまわってたのか……。
すまなかったな、つらいことを思い出させちまったみたいで。
ああ、わかるよ。理不尽だよな。あんたの言うとおりだ。
俺は見てのとおり自分の店も持てないしがない商人だけど、それでもどこの誰とも知らないヤツに遊びと称して殺されちまったら、ちょいと化けて出るかもしれないな。
だいぶ顔色が良くなったな。
俺はそろそろ仕事に戻らないといけないけど、あんたはどうするんだ?
そうか、もう少しここで救助にあたるか。
じゃあ、この残った青ポーションあんたにあげるよ。
またあんたが天使の呼びすぎで倒れそうになるかもしれないからな。
いいって、そのかわり気が向いたらまた俺の店に寄ってくれ。
俺はいつもあのあたりで店を開いてるから。
じゃあな。

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ようパル、ひさしぶりだな。わかってるって代売りだろ?
その重そうな袋見りゃ俺でなくてもわかるって。
あいっかわらず統一性のない収集品だな。ふーん、城行って時計塔で遊んでオークダンジョンにこもってコモド海岸うろついてゴブリンにいじめられて猪狩りしてエルダ森行ったのか。
そうだ、おまえまたカプラ倉庫ぱんぱんにしただろ。商品寝かせられなくなるから気をつけろって言っただろ?だいたいおまえはいつも……。
へ?さっき俺が立ち話してたプリさん?
バーカそんなんじゃないって、ただのお得意さんだよ。うちの店をひいきにしてくれるありがたいお人さ。
一月前ここで大規模な枝テロが続いたことがあっただろ?知らないって?あったんだよ。そのときに死にかけた俺を助けてくれたんだ。
いい人だよ。生真面目で堅苦しいけど、支援プリだしなあ、あんなもんじゃね?
おまえもふらふらしてばかりいないで、たまにはああいうまじめな輩とPT組んで稼いでこいよ。
こら逃げるな、ついでだからカプラさんとこから倉庫内のリストもらって来い。
いる物にはマルつけとけそれ以外は処分するぞ。
……うーん、そろそろまた原石と鉄鉱石と古木の枝がたまってきてるな。
ここらでいっちょさばくとしますかね。
鉄鉱石は自分で売るとして、原石と枝はそれぞれいつもの商人さんに引き取ってもらうか。今日は買い取りやってるかな。大量入荷だって喜ぶだろうな。
そういえば、こないだの枝テロが起きた前の日ぐらいに古木の枝を引き取ってもらったから、あのバカ騒ぎに使われた中にはおまえが集めて俺が売ったやつも混じってるだろうなあ。
なんだよ、その露骨に嫌そうな顔は。
買った物をどう使うかは買ったやつが決めること。
俺らの知ったことじゃないし、気にするようなことでもないだろ。
まあちょっと人とか死ぬけど、それぐらいだしな。
だいたい古木の枝をあんな風に使うのは極一部だろ。
ギルド集会やら引退式やら結婚式で余興に使ったりするのがほとんどじゃないか。
街中で使ってテロとか称してるほうが珍しいくらいだ。
実際の被害なんて街の外で魔物に食われて死ぬ奴に比べたら微々たるもんさ。
それに街の人間だって、退屈してるよりいいって言うやつもいるしな。
正味な話、テロ目的で買い漁ってくれる大口の客がいないと困るんだよ、ああいう輩が大量に買いこんでくれるから俺らもおまんま食えるわけだし。
次にテロに巻き込まれたらさすがに死ぬかもしれないけどなー、ここは人通りが多いからテロを起こすには絶好の場所だし、露店開いてるところを襲われちゃ逃げるに逃げられないからな。こないだのはラッキーだったわけよ。よかったなおまえ、帰ってきたら兄ちゃん墓の下だったかもしれないぞ、へへへ。
移動?やだね、場所を変えたら収益が下がるじゃないか。
俺は商人だぜ、命より金のほうが大事だね。
……おっと。
こんにちは~、こんなとこであうなんて奇遇っすね。
ああ、俺もちょっとカプラ倉庫さんにね、用事があって。
これから仲間と冒険で?そうか、ケガしないよう気をつけなね。
まあ今のお客さんの力量なら大丈夫かな?
はは、それじゃお気をつけて~。
……うー、やべぇやべぇ、あのプリさんが今の話聞いたら卒倒するだろうな。
なんでかって?そりゃ、あの人の前では俺は枝テロ反対派でとおしてるからな。
善人だろうが悪人だろうが、金を払ってくれるうちはすべからく大事なお客様だ。
お愛想の一つも言うに決まってるだろ。