※お題『ゲームマスター』
※kasamaru (RO-SAGA)
そこには、1つのテーブルと4つの椅子があり、4人の人が座っていました。4人の人はそれぞれに幾つかの駒を持っています。駒は人の形をしたものもあれば建物の形をしたものもあり、小さいものから大きなもので様々な種類の駒がありました。テーブルには1枚の地図が広げられており、4人の人はそれらの駒を1個づつ順番に置いていきました。火の人は、人の駒を置きました。
水の人も、人の駒を置きました。
風の人も、人の駒を置きました。
それを見て、土の人は言いました。「ねぇ、ちょっと人が多すぎない? 僕はこれ以上はいらないと思うなぁ。」
そう言うと、土の人は大きな鎌を持ったヤギの頭部をもつ駒を、先ほど置かれた人の駒の中心に置きました。すると、ヤギの周りにいた人の駒たちがごっそり消えてしまいました。
「うん、これぐらいが調度いいね。」
土の人はにんまりと、満足そうに頷きました。
「やりすぎだ。」
「やりすぎよ。」
「やりすぎだね。」火と、水と、風の人が口を揃えて言いました。
「なんでさー、人の駒はこんなにもあまっているじゃない? これぐらいごっそり減らさないと、僕はそのうちこいつらに押し潰されちゃうよ。ただでさえ、重くて肩が痛いのに。」
土の人は3人の手元にある大量の人の駒を指差して、言いました。
「我慢しろ。」
「大変ねぇ。」
「まあ、しょうがないんじゃない?」3人はまたしても声を揃えて言いました。というのも、人の駒はこの世界が回るためには必要なものだからです。人の駒が無ければ、この世界はただ消えるだけの存在なので、人の駒はなるべく多く置いておいたほうが良いのです。
「ぶー。」
土の人は頬を膨らまして講義しました。それを見た水の人は苦笑して、
「でも、気持ちはわからなくもないわ、私も貴方にはお世話になっているしね。」
そう言って水の人は森の駒を置きました。地図の中心部にある大きな街の上方に大きな森が広がっていきます。
「わぁ、さすが水の人は話が解るね。だから好きさー。」
土の人は投げキッスを水の人にして感謝の意を表すと、自分は海の駒を砂漠地帯に置きました。その場所はとても広い範囲にわたって砂地が広がっていましたが、その駒の力で半分以上が海に変わりました。
「あ!」
普通ならこれで変化は終わるのですが、海の駒を置いたところはまだ変化が収まりません。変化は光となり、ところどころに集まり、凝縮され、そして新しい駒がそこに生まれました。エリマキトカゲのようなモンスターの駒が2つ、駒を置いた場所に新たに出現しました。
「やった! すごい、すごい! レアが出たよ!」
土の人は大はしゃぎです。水の人は、良かったわね、と微笑みました。
その様子をみた火の人は、人の駒を地図に置きました。
同じく風の人も、人の駒を地図に置きました。「あーっ、2人とも、何するのさ!」
土の人は叫びました。
「やかましい。」
火の人は不機嫌な声で言いました。ちょっとドスが聞いてます。土の人は少し怯みました。
「あはははは。」
風の人は、そんな土の人をみてお腹を抱えて大爆笑しています。
「2人ともなにさー! あ、もしかして僕と水の人との仲が良いんで妬いてるの?」
土の人はにやっと笑い、皮肉りました。すると土の人の額に、火の人が持つ城の駒がノータイムですっ飛んできました。ちなみに城の駒は人の駒の10倍の大きさと重さがあります。頭などに当たるととても痛いのです。
「な、なにするのさー! 水の人は乱暴者は嫌いなんだぞー!」
土の人は頭を抑えながら言いました。水の人はそうね、と同意しました。
「うるせぇ! いいからお前はさっさとさっき置いた『BAP』を取りやがれ! 見ろ、お前が海の駒なんぞ置いてる間に城下町の人の駒が全滅しているだろうが!」
火の人はそういって先ほど土の人が『BAP』を置いた場所を指差しました。人の駒だけでなく、建物の駒や木々の駒までほとんどが消えていました。一度置かれた駒は置いた人しか取り除けないルールなので、土の人が『BAP』を取り除かない限り、誰も取ることはできません。
「あらら、これはちょっと大変ね。」
水の人はそう言って人の駒『Knight』を置きました。すると地図の中に騎士が現れました。
倣って、風の人も人の駒『Wizard』を置きました。地図の中の同じ場所に魔術師が現れました。
火の人も当然の如く人の駒『Hunter』を置きました。同様に、狩人が現れました。「ほら、『BAP』を人の駒で抑えとくから、さっさと取っちまえ。」
火の人は土の人に言いました。
「ちぇー・・・。」
土の人はしぶしぶ『BAP』を取り除きました。
「まあ、ほどほどにね。」
水の人は土の人に優しく言いました。
「うん、わかった♪」
土の人は素直に頷きました。それを見た火の人の額に青筋が浮かびました。
風の人は、そのやり取りをみてまたお腹を抱えて笑いました。「でもさー、土の人じゃないけど、確かに人の駒は増えたよねー。」
風の人は言いました。
「人の駒は世界を支えるイミルの強さに比例するものね、私達も置く駒が無いときには、何かと付けては人の駒を置いてきたし。」
水の人はそう言うと、地図をざっと見渡しました。
「『Fenrir』もそろそろ限界か。」
火の人は言いました。
「そうそうー、どうせならさー、ぱぱっと新しい世界を作っちゃおうよー。そろそろ僕ら以外の新しい『master』もくるころだしさー。」
土の人はそう言うと、テーブルの下から新しい地図を取り出し、バサッと広げました。
「ああ、だめよ! それまだ重なったまま!」
水の人があわてて土の人を止めようとしました。
「へ?」
時、既に遅し。地図は土の人の手から離れ、テーブルの上に広がってしまいました。
『Odin』
『Thor』
『Freya』
『Bijou』地図に名前が浮かび上がり、4つもの世界が一気に生まれました。
水の人は、額に手を当て、溜息をつきました。
火の人は、ピクピク震えて今にも爆発しそうです。
風の人は、相変わらず笑っています。
土の人は、「あは、あは、あははははははは・・・・・・・・・・・・、ゴメンナサイ。」
「ゴメンですむか――!!」
火の人はピラミッドの駒とスフィンクスの駒を片手で持ち上げ、振りかぶりました。それぞれ、城の駒の数百倍の重さがあるのですが、火の人は苦も無く持ち上げています。土の人は問答無用で、逃げました。
「まてや、コノヤロー!!」
火の人は土の人を追い掛け回し、そして、二つの駒を思いっきり土の人に投げつけようと振りかぶりました。火の人が投げる瞬間、水の人は大変な事実に気がつき、止めようとしました。風の人はその事実にとっくに気づいていましたが、面白そうなので知らないふりをしていました。
しかし、悲しくも二つの巨大な駒は火の人の手から離れ、土の人に着弾し、そして土の人は盛大に瓦礫に埋もれました。振動が部屋を包みます。火の人は鼻息荒く、どうだ、参ったか、と仁王立ちしています。
そして火の人は、息を整え、振り返り、先ほどの駒を投げた振動で地図の上に倒れ、転がりまくっている駒に気付きました。
「あ・・やべぇ。」
火の人は大急ぎで地図の駒をどけようとしましたが、自然に倒れて地図に置かれてしまった駒なので、誰も取り除くことは出来ません。ふと、地図の中をみやると、街中には強力なモンスターが現れ、大惨事が起きていました。
「あーあー、やっちゃたねぇ・・・・・・。」
いつの間にやら、復活した土の人がニヤニヤと火の人の横で笑っています。
「・・・ぶっ殺す。」
火の人は氷より冷たい声で言いました。
風の人はこれより始まるであろう惨劇にわくわくして、眼を輝かせました。「・・・・・・いい加減になさい?」
水の人の凍てついた声が部屋の時を止めました。
土の人は涙目で固まっています。火の人と風の人もただならぬ殺気を感じ、凍ったように固まりました。「まったく、もう・・・。」
水の人は溜息一つ、呟きました。
と、ちょうどその時、部屋のドアが開き、念の人と、聖なる人と、闇の人と、毒の人と、不死の人が入ってきました。そして、新しく入ってきた5人は荒れに荒れた部屋の惨状を見て、口を揃えて言いました。
「出直してきます。」
「逃がさないわよ。」
水の人は言いました。
そして5日後、古い世界に新しい世界が4つ追加されました。
めちゃくちゃになった古い世界を元に戻すときにも一悶着あったのですが、またそれは別のお話。
「支配者の話・完」
+α
今更ながらですが、カーニバルイベントネタです。
こんな視点もいいんじゃないかなーと、強がってみるも実は震えてたりする今日この頃。
ほんとは、コテコテの燃え話でまとめる予定だったのですが、
書いてるうちにゲームマスターがかっこよすぎる役どころになってしまたので没。
時間も無かったし、まあ、暇なときにでも書くことにしましょう。
by 笠丸