※お題『血』
※秋月ゆゆ(言の葉堂本舗)
【Lost】
晴れた空
白い雲
風の流れは絶え間なく人は生き
魔も生まれ
全ては時の流れのままにでも
君は居ない眠い目を擦り、ウィザードは目を覚ました。
ゆっくりと身を起こしてベッドの傍らを見る。
でも、そこにはウィザードの愛する者は居なかった。
『移住する。この世界ともオワカレ……』
『あなたは元気でいて…サヨナラ』
それが最後の言葉。君は行ってしまった
別の世界へ
僕の存在が無い場所へ壁に掛けてあったマントを手に取り、ウィザードは外に出た。
陽の光はいつもと変わらず、優しくウィザードを包み込む。
ウィザードは駆け出した。
いつも二人で居たあの場所へ。
残り僅かな希望をもって。出会った時から一緒
僕は君に出会い
君と僕は恋に落ちた二人仲良く狩りをした
二人仲良く転職した
ウィザードになった僕を見て君ははにかんだ
その笑顔に僕はいつも癒された二人で色々な所に旅に出た
昼も夜もずっと一緒だった
離れることなど無かった
なのに 今は……たどり着いたのは陽の光差す小さなベンチ。
いつも陽に当たりながら談話を交わす場所はがらんとしていた。
誰も居ない場所でウィザードは立ちつくしていた。
いつもは此処にいるのに。
微笑って僕を迎えるのに。
ウィザードの口から紡がれたのは、小さな小さな言葉。「本当に、君は遠くに行ってしまったのかい?」
手を伸ばせばそこにあった幸せ
あれは嘘だったのか?
僕の優れた魔力は
君の心に魔法を掛けきれなかったのか?陽の光が温かい
風もゆるりと温かい
でも、君のぬくもりは側に感じられない腰に携帯されていたナイフを手に取り、ウィザードは手袋を外した。
切っ先に指を当て、軽く斬りつける。
陽の光に反射して光るのは、
自分の体内から溢れた赤黒い 血。温かい血が伝う
傷口が痛い
これは現実世界は変わらない
でも君は居ない
これも現実導き出した答えは、あまりにも単純な回答。
その手段さえも知っている。「君の居ない世界に 僕は要らない」
ザクリと鈍い音が響く。
音と共に、ウィザードは地面に倒れる。
ウィザードの胸にはナイフが突き刺さっていた。僕の赤い法衣
今は赤黒く染まって
僕の呼吸をするトコも
赤黒い血が溢れてる嗚呼
心臓の音はこんなに響くものだったか
嗚呼
呼吸をするたびに血は溢るものだったか意識が薄れる
呼吸も拍動も
もう 薄い「……――っ!!!」
嗚呼
どこかで
君の声が 聞こえ た ………事切れたウィザードを見下ろし、彼の恋人は立ちつくしていた。
「移住は辞めたのに…また暮らせると思ったのに……」
血にまみれた愛しい人の身体を抱き寄せ、恋人は泣き出した。
「今日は移住のギルメンを見送ってた…戻ってあなたに伝えようと……」
震えた口が「ごめんなさい」と何度も繰り返す。
そして彼の胸元に刺さったナイフを引き抜き、自らの胸に突き刺した。導き出した答えは、あまりにも単純な回答。
その手段さえも知っている。「あなたの居ない世界に―――」
晴れた空
白い雲
風の流れは絶え間なく人は生き
魔も生まれ
全ては時の流れのままにでも
二人は
モウ、イナイ+α
今回は秋月作品の原点に立ち返りまして 「救われないED」を目指してみました。(嫌な原点だなぁ…) 秋月家では出血をするのはWizと相場が決まってますので、Wiz自殺ネタです。 ココダケの話。Wizの恋人は職も貴方の思うまま、性別も貴方の思うままに取れる ようにしてますよ……(ぼそ) 2004.05.22 秋月ゆゆ(言の葉堂本舗)