※お題『血』
※苔。(Vergissmein!)
『At a Time』
――ま、確かに口が一つで、目が二つ、鼻の穴も二つってのは一緒だわな。
などと、俺は当人たちには非常に失礼なことを考えいたりする。
こんにちは、俺はローグのアプリコットと言います。
んで、口一つ、目が二つ、鼻の穴も二つあるっていう、当人たちってのは今俺の目の前で世間話に花を咲かせているモンクとプリーストの女性二人組のこと。
二人とも黒髪で、瞳は濃い茶。アマツやフェイヨン出身にゃあそんなに珍しくない色彩だ。長い髪を後ろでまとめているモンクは俺と同じギルドに所属している。名前はサヨ。そしてプリーストの方、こっちは髪を随分短くしている、は、サヤという名前だそうだ。
なんでもこの二人、双子らしい。
「双子の片割れ……えぇと姉、が近くに来てるから会ってみない?」
と、プロンテラの街中にある酒場にサヨに引きずってこられて、そして姉さん紹介してもらって、それが俺が自己紹介して……、今に至る。
しみじみと俺は目の前の二人を見る。
全然似てねぇ。
片方長髪、片方短髪だし、同じ聖職者と言ってもモンクとプリーストの服装ではずいぶん雰囲気が変わる。
それを差し引いても似てない。
ほんとに双子なのか。二卵性とは言ってもほどがあるぞ。並んで歩いても姉妹に見えるかどうかってことだ。
あれだ、片方は橋の下に捨てられてたとかいうオチじゃないのか?
双子と聞くとそっくりさん、というイメージがあるがやはり例外は存在するらしい。しばらくして、せっかくだから三人でどこかへ狩りに行こう、ということになった。
そして行き先は「まったり青箱でも」ということでゲフェンダンジョンに。
幸いサヨもサヤさんもゲフェンへのポタを持っていて、すぐに行けた。
ダンジョン内の移動は俺を挟んで前にサヨ、後ろにサヤさん。護られてるとか笑うな。俺だけ頭一つ分Lv低いんだよっ。「あー、そう言えば」
途端、俺の前と後ろから声が上がる。
「「ん、何?」」
おぉ、同時発言で素敵にステレオ効果。顔とか全然似てないし、性格も随分違うけど。
この二人、喋るタイミングは本当に同じだ。ヒールやブレッシング、速度上昇といった支援のタイミングまで同じ。
俺が敵に殴られると、同時にヒールの光りが二つ降ってくる。呪われても同じ。同時にブレスが飛んでくる。
そういうのを見ると、やっぱり姉妹なんだなぁと思ったりした。
ただし、同時発言が続くことは、サヤさんとサヨにとっては不満らしい。今もふたりそろって憮然とした表情をした。サヨはともかくサヤさんはせっかくの美人が勿体ない。「アプリコット、後ろ!」
「アプリコットさん、後ろに!」
二人に同時に注意されて、俺は背後を振り返る。
突如現れた敵はナイトメア。実体を持たない馬の形をした悪魔。
俺はナイトメアの初撃を避けると、アイスダマスカスを振るった。
ダマスカスで斬りつけながら、俺は敵の体を探る。
二度目で、当たりが来た。
「スティール!!」
俺の手の中におさまったのは、古ぼけた青色の箱。
「よっしゃ、青箱」
すると、サヨとサヤさんは揃って俺に向かってびしっと親指立てて。
「「ナイス!!」」
相変わらず同時発言でステレオ効果。
そして俺はもう一つ新しい発見した。
似てない似てないとは言っても、二人とも、笑った時の目尻の辺りは、そっくりかもしれない。
やっぱり血の繋がった姉妹なのだな、と兄弟のいない俺は羨ましくもある。
まぁ、向こうも向こうで双子とか兄弟って理由で苦労してるのかもしれないが。「「そろそろ帰ろうか?」」
その発言も、ポタを出そうとした座標すらも一緒だったのには、さすがに笑った。大笑いしてしまった。そしてあとでサヨに思いっきり殴られた。+α
ぼたぼた地面に流れる(マテ)血ではなく、血縁、という発想で書いてみました。
別に双子じゃなくて、普通の姉妹でも良かったなぁ、と後で気づいたのですが、「双子」というのは自分にとって半永久的なテーマなのであえて双子のままにしました。
今回は、文章がぶつ切りな感が否めない_| ̄|○
2004.05.27 苔。(Vergissmein!)