「望ちゃん、僕の呼び名考えて」
バカッポーゥバカッポーゥ(英語発音)
12禁くらいで↓
「望ちゃん、僕の呼び名考えて」
枕を並べた恋人から突如発せられた命令に、望ちゃんこと伏義は面食らった。
夜もふけた寝室で、情事も終わって満足して他愛ない話に花を咲かせて、さあ寝ようかという段になって、突然。
「呼び名?」
「呼び名」
「それはあれか?あだ名とかニックネームとかの親戚でいいのか?」
「うん」
真意をつかみかねて、伏義は普賢の顔をまじまじと見つめる。
目と鼻の先の恋人のすねたようなむくれたような表情からは、先ほどまでの甘やかな雰囲気が消えうせている。
「だって僕ばっか望ちゃん望ちゃん言ってるのって、なんかヤだもん」
唇をとがらせる姿とは裏腹に、普賢のまなざしは真剣そのもの。
おねだりとかおねがいだなんてかわいいものであれば、適当に言いくるめておしまいにしてしまうのだけれど。
『こやつが子どもじみたことを言うのは、相当不満がたまっている時だからのう……』
伏義はあごをつまんだ。
「ふつうに普賢でいいではないか」
「ヤだったらヤだ」
「しかしこの年になっていまさらちゃんづけというのも恥ずかしいものがあるぞ」
「へー、僕が望ちゃんって呼ばないと機嫌悪くするくせに、自分は逃げるんだ。ふーん」
「うむ、それに関しては謝る。悪かった。
正直に言おう。わしが知りたいのは理由だ。何故突然そのようなことを言い出したのだ?」
普賢が言葉につまった。
間があって、どうでもいいじゃないそんなの、とうそぶく。
そらされた視線に、伏義は唇の端をひょいと持ち上げた。
「わしは正直に聞いたのだぞ。おぬしのその態度は正直から程遠いようだが?」
対等だの同等だのといったフレーズに普賢は弱い。
言葉尻を捉えた強引なやり口だが、これがよく効くことを伏義は知っていた。
案の定、普賢は眉を寄せて視線をさまよわせた。
あえて何も言わずに普賢を見守る。
まばたきするたびにすみれ色の瞳が逃げ場を探してうろうろするのが面白い。
やがて小さな声が聞こえてきた。
「……だって、僕はちゃんと望ちゃんって呼んでるのに。
望ちゃんはほかのみんなを呼ぶ時と同じように僕を呼ぶんだもの」
言い終わるなり、普賢は頭まで布団をかぶってしまう。
伏義はこらえきれずに吹きだした。
「なんだ妬いておったのか、愛いヤツよ」
「妬いてなんかないよ!」
「違うのか、それはそれはさみしいことだのう」
わざと声のトーンを落とすと、普賢が布団の下からちらりと顔をのぞかせた。
「隙あり!」
勢いよく布団を剥ぎとったらあとは抵抗を封じるだけ。
なにするのさとか、やめてよバカとか、生意気な口は唇でふさぐ。
おとなしくなったところを両手で抱きしめて、ぎゅっと。
「ほんに愛いヤツよのう」
笑みを含んだ声で睦言を耳にそそいでやれば、普賢の頬が朱に染まる。
おずおずとまわされた細い腕が自分の背を包むのを感じながら、伏義はやさしいキスをくりかえした。
「そういうことならわしも真面目に考えねばならんな」
「なにを?」
「呼び名だ、呼び名。そうだのう。普賢ちゃんはどうだ」
「そんな安直なのヤだ」
「普賢くん」
「却下」
「うーむ、ふっちゃん」
「微妙」
「ふっくん」
「なんで順列組み合わせなの?」
「ふーたん」
「ヤだよ、恥ずかしい」
「ふーぴょん」
「まえから思ってたけど、望ちゃんってセンスないよね」
「やかましい」結論:元の鞘