「いつもどおりってとこでしょうか」
※望が片思いで、ふーたんが女の子スキー アホい
※ホワイトフェスタに投稿しました。
※以下、おまけの後日談。12禁くらいで。
そうだよ、僕は女の人が好きだったんだよ。
背が高くて色白で黒髪でロングで普段は美人だけど笑うとかわいくって眼鏡の似合ういかにもお姉さんって感じの年上の女性が好みなのに。そういうお嫁さんをもらって犬を飼って子どもは2人ぐらいで老後は縁側で渋茶をすするような一生を送りたいって思ってたのに!
嗚呼、何故僕は。
背が低くてなまっちろくて短髪で笑い方が小憎らしいあかんべえの得意な年下の男友達のお嫁さんになってるんだろう……。
「ほんとにさ、どこで間違っちゃったんだろうね、僕の人生」
横になったまま大げさにため息をついて、僕はとなりで満足そうに枕に埋もれている望ちゃんをじろりとにらんだ。
「すべては予定調和だ。おぬしはわしとこうなる定めだったのだ」
ぬけぬけと言ってのけると、望ちゃんは枕から僕のおなかにシフトした。犬みたいに頭をすり寄せてくる様は、まあ、かわいいと言えなくもない。
「んーすべすべで気持ちいいのー」
「変態」
「変態で結構、大いに認める。うみゅーよいー」
「ホモ、ストーカー、エロ親父」
「たまらんのー絶品だのうー。もうこれはおぬしの生肌愛護団体を作って保護せねばのうー」
「団体って……」
「会員一名。ただし分裂する」
望ちゃんがニヤリと笑った。ヴンと耳障りな音がしたかと思うと、2人に増える。
目の錯覚でもなんでもない。まるっきり同じ人間が2人。
「ささ、まずは玉の肌にキズやアザがないか調べねば」
「うむ、しっかりたっぷりみっちりしっぽり検分してくれようぞ」
「ちょっと、何する、あっ」
あれだけやってまだ足りないんですか、どこから来るんですかその体力は。いくら始祖だからってそんなとこだけスペシャルじゃなくてもいいよ。
あれよあれよというまに望ちゃんは背後に回って僕を抱きしめ、もうひとりが首筋から鎖骨へねっとりしたキスを施す。 知り尽くされた体の弱い部分を押さえられ、僕の背が反り返る。
「はあ、んっ」
「愛いヤツだのー」
「愛いヤツだのー」
しまりのない笑顔がダブルで。
どっち向いてもでれでれゆるみまくった顔を見せられるは正直つらいんですけど。
「萎えるからやめて」
「わしは楽しい」
「わしも楽しい」
「僕が萎える。全力で萎える。いいの?明日の朝ごはんが四川料理になっても」
「ごめんなさい」
食事を質にするとあっさり引き下がった。やはり望ちゃんは胃袋に訴えるに限る。
ひとりに戻った彼の胸に頭を預けて、僕はわざとらしくため息をついた。
「意中の子には片っぱしから振られとおして、今じゃこんな変態肉欲魔人の女房役だなんて、ほんとどこで間違っちゃったんだろう」
「17連敗したあたりからか?」
「だ・ま・れ」
両手で鼻と口をふさいでやるとさすがに苦しかったらしい。望ちゃんの手足がぴちぴちぱたぱたしてきたあたりで解放してあげた。
「だいたいのーおぬしも悪いのだぞ。見初めたならとっとといけばいいものを、なんだかんだとずるずる引き延ばして片思いで2~3年経過なぞザラだったではないか」
「そ、それは仕方ないじゃない。僕は望ちゃんみたいに浮ついたタチじゃないんだもの」
「そのように及び腰だからいかんのだ。女は度胸だ勢いだ。さくっと行ってさくっと振られる、これぞ男の花道」
「……振られるの前提なんだ」
「そのくらいの覚悟でいけということだ。まあおぬしは昔から仕事となるとドライなくせに、私生活になるとてんで優柔不断だったからのう。まあおかげでわしも悠々と細工できたわけだが」
「え゛?」
「2年もあれば適当な男を見繕って紹介して結婚を前提としたお付き合いまで追い込むのに充分だぞ」
にへらと、勝ち誇った笑みが、僕の内面をふつふつと煮えたぎらせて。
「はぐ!」
笑う望ちゃんの顔面に躊躇なく右ストレートをくれてやる。
「望ちゃんのバカ!鬼!悪魔!変態!ペンギンマント!肋骨野郎!男前グレイ!」
「ま、待て待て落ち着け。わしが細工をしたのは5回だけで、あとはすべておぬしの自爆だ」
「なお悪いわー!!」
泣いていいですか。むしろ泣かせろ。泣かせてくださいお願いします。
ああ、でも。
そんなに昔から、僕のこと想ってくれてたなんて。
ちょっとうれしかったなんて、そんなことは思ってないからね。
ふーたんは恋愛下手そうだなあと思って。