望ちゃんはいい子で僕はわるい子。
※暗い 18禁くらい
※売り春もの
望ちゃんはいい子で僕はわるい子。
だから叱られるのはいつも僕だ。
今も僕は広成子師兄にお説教されている。お部屋の壷を僕が割ったからだ。
本当は望ちゃんが割ったのだけれど、割ったのは僕だって望ちゃんが言ったからそういうことになっている。
だって望ちゃんはいい子で僕はわるい子だから、僕の言うことは誰にも聞いてもらえない。
しょうがない。お説教が終わって廊下に出ると、望ちゃんが僕を見つけた。
待っててくれたのかな。
ありがとうって言うとぷいとそっぽをむいて歩き出してしまった。
僕は駆け足で望ちゃんに追いつくとその手を握る。僕はわるい子だから、いい子の望ちゃんが好き。
望ちゃんはいい子だから、わるい子の僕が嫌い。いい子でいなくちゃいけない望ちゃんは、わるいことはぜんぶ僕のせいにする。
でも僕が言いつけどおりにすると、望ちゃんはごほうびをくれる。
頭を撫でてくれたり、手をつないでくれたりする。
僕はそれがうれしくて、どんどんわるい子になる。望ちゃんは僕の手をつかんだままどんどん歩いていって、玉虚宮のはずれに来た。
3番目の倉庫の扉を開けると、煙草のにおいで鼻がつんとした。
中には道士の兄さんたちがいた。今日は4人。顔なじみの人もいるし、そうじゃない人もいる。
兄さん達はニヤニヤ笑いながら僕を見ている。
濃い煙管の煙に混じって汗の匂いもする。
「ほら、行ってこい」
望ちゃんはいちばん年かさの道士から小銭を受け取ると、僕の背中を押した。
僕は扉が閉まる音を聞くと、下着ごとズボンを引き下ろす。
だぼだぼの上着のすそをちょいとつまんで、なるべくバカに見えるようににっこり笑った。望ちゃんはお金を持ってない。僕もそうだ。
仙道に金銭は不要ということになってるからだ。
お金は道士の兄さんたちが持ってる。
だから望ちゃんはお金がほしくなると、僕を倉庫に連れて行く。
お金は丼村屋のあんまんとか、すぐ壊れるおもちゃだとか、そういうものに化ける。
だから望ちゃんはしょっちゅう僕を倉庫に連れて行く。僕はわるい子だからいい子の望ちゃんの言うとおりにする。
言うとおりにしてると望ちゃんが笑ってくれる。
普賢はえらいなって言って誉めてくれる。
いつものみんなに見せるいい子の笑顔じゃなくて、僕だけのための笑顔を見せてくれる。
僕は望ちゃんに誉められるのが好き。
僕がわるい子になっただけ望ちゃんはいい子になってく。
それがすごくうれしい。
でも最近……望ちゃんはごほうびをくれない。いくつもの大きな手が体中を這い回る。
最初は気持ち悪かったけど、今はそうでもない。
目を閉じて股をひらいて、言われたとおりにしてれば勝手に終わるけれど、どうせだから僕も楽しむ。
口でくわえて舌をからませ、お尻もきゅっと締めつけて。
背中越しに小さなうめき声があがり、同時におなかの中で熱いのがはぜた。
反応が素直だから、男の人に奉仕するのは楽しい。最後の兄さんが満足して僕を離してくれた頃には、太陽が傾いていた。
僕は兄さんたちにお礼を言って倉庫から出る。
足元が少しふらつくけれどだいじょうぶ、望ちゃんを探す。
夕暮れの廊下に小さな人影があった。
長い影を引きずって、望ちゃんが僕を待っていた。
拳を握り締めたまま。
僕は名前を呼んで望ちゃんに走り寄る。
ごほうびがほしくて彼に近づく。望ちゃんは僕を殴りつけた。
甲高い音がして小銭が床の上に散らばる。「死んじまえ、このグズ!」
望ちゃんは叫ぶと僕を置いて走り出した。
どんどん小さくなっていく背中を、僕はどうすることもできずに見送った。どうして?
言うとおりにしたのに、どうして喜んでくれないの?
僕は痛む頬を押さえ、小銭の散らばった床にへたりこむ。
視界がぼやけていくのを止められない。なんでも言うこと聞いてきたのに。
望ちゃん好みのわるい子になろうってがんばってきたのに。
何がいけなかったんだろう。
何がよくなかったんだろう。
きっと僕は何かへまをしたんだ。
僕が何かやらかしたんだ、そうでなきゃいい子の望ちゃんがあんなに怒るわけない。
「望ちゃん……」謝らなきゃ。
謝って、許してもらわなきゃ。
望ちゃんが許してくれなかったら許してくれるまで謝らなきゃ。
望ちゃんしか見てない僕はそうしなきゃ生きていけない。「望ちゃん、望ちゃん!おいてかないで!」
立ち上がり泣きながら駆け出す。夕闇の奥へ。
■ノヒト ... 2007/08/14(火)23:57 [編集・削除]
こんぐらいスカスカなほうが読みやすくていいですね。