「雪でやんす、雪でやんす、起きるッスよ!」
※サルベージ品 18禁
黒いケモノがねぐらから顔を出すなりウォー!とさけびました。
「雪でやんす、雪でやんす、起きるッスよ!」
ケモノの名前はガブ。
このみどりのもりに1匹しかいないオオカミです。
「うーん、むにゃむにゃ。あと5分……」
枯れ草のベッドでまだはんぶん夢の中にいるのはメイ。
このみどりのもりに1匹しかいないヤギです。
2匹は青い山をこえてやってきた仲のいいともだちどうしでした。
「メイ、起きるでやんす。どこもかしこもまっしろで、すごいながめでやんすよ」
ガブがゆさゆさゆすると、メイはようやく体を起こしましたが
「うう、さむいさむい」
そう言ってガブのしっぽにくるまってしまいました。
「しょうがねえでやんすな。ほら、こっちこっち」
ガブはメイをしっぽにくるんだまま抱き上げるとねぐらを出ました。「わあ、すごい!」
おもわずメイは声をあげました。
たしかにガブの言うとおり、いちめん雪におおわれて、どこもかしこもまっしろでぴかぴか。
野原も丘も、まるであたらしいおふとんをしいたようです。
「すてきなながめですね」
「そうでやんしょ。おいらもこんなのはじめて見るでやんす」
「わたしもです。起こしてくれてありがとう、ガブ」
メイがお礼を言うと、ガブはてれかくしなのか短くほえて雪の中に飛びこみました。
そのままむかいの丘まではしっていき、メイに向かって手を振ります。
「あれあれ、どうしたのかな?」
メイの見ている前で、ガブが雪を蹴立てて走りはじめました。
一直線に走ったかとおもうと、ぴょんと飛んで方向転換。そしてまたいさましく走りだします。
みるみるうちに丘の斜面に文字が浮き出てきました。
『 だ い す き 』
「もう、ガブったら。だれかに見られたらどうする気でしょう」
メイはくちをとがらせました。ほおは真っ赤でしたけど。やがてしろい息をはきながら、ガブがもどってきました。
「ただいまでやんす」
「おかえりなさい、雪まみれですよ」
メイはガブの毛皮にくっついた雪を落としてあげました。
そして2匹はねぐらのいりぐちにすわり、あおいそらとしろいだいちをながめました。
そらはくもひとつないいい天気。
おひさまが凍った風をやさしくあたためています。
とてもしずかでした。
「ほんとうにきれいですね。わたし、こんなにたくさんの
雪がつもっているのを見るのははじめてです」
「おいらもでやんす。あ、でも青い山は雪だらけでやんしたね。
あとバクバク谷もあれでけっこうつもる……」
言ってしまってから、ガブはしまったと口を押さえました。
バクバク谷はメイが住んでいたサワサワ山の近くです。
メイのなかまが、いまでも住んでいるところです。
昔を思い出したのか、すこしだけメイの顔がくもりました。
「ごめんでやんす……」
メイはガブのほおをやさしくなでました。
「あやまらないで」
「……でも」
「わたしがガブとずっといっしょにいたいって思ったから。
そしてガブもそう思ってくれたから。
だからいまわたしたちはここにいるんでしょう?
ちがいますか?」
「……ちがわねぇっす」
だけどやっぱり気になるのでしょう。
しょんぼりしたガブのほおを、メイは何も言わずになでつづけました。「もう、しょうがないオオカミさんですね。そうだ」
メイは立ち上がりました。
「そこで見ててくださいね」
腰を浮かしたガブを制し、メイはむかいの丘まで歩いていきました。
雪はおもったより深く、小柄なメイはうもれてしまいそうです。
しかしメイは雪をかきわけかきわけ、1歩1歩かくじつにすすんでいきます。
そしてガブが描いた文字のとなりにつきました。
「よいしょよいしょ」
そのままメイは丘の斜面をのぼっていきます。
さすがにガブのように威勢良くはいきませんでしたが、
ゆっくりしっかりと線を書いていきます。
やがて、『だいすき』のとなりに、おおきなハートマークが出来ました。
メイはガブにむかって、にっこり笑うと手を振りました。
「メーイー!」
ガブが走ってきます。まっすぐメイに向かって走ってきます。
メイは両手を広げてとびついてくるガブを迎えました。
雪のうえに倒れた2匹は目を合わせました。
「ちょっとこどもっぽすぎましたかね?」
そういってメイはくすりと笑いました。
ガブも大きな声で笑いました。
笑いながら2匹はだきあって雪の上をころころ転がりました。
それから長いキスをしました。「雪まみれでやんすね」
ガブがメイの髪をなでました。
「あなたこそ」
メイがガブの背中をなでました。
「こんなに冷えて。風邪ひいちゃうでやんすよ」
「あれ、あたためてくれないんですか?」
くすくす笑うメイをだきしめて、ガブは長い舌でなめあげました。
ひたいを、ほおを、髪を、はなを、くちびるを、くびすじを。
ガブの舌が下がっていくにつれて、メイの肌が色づいていきます。
なめ方もさいしょはただふれていただけだったのに、
いつしかぴちゃぴちゃと水音が聞こえるようになりました。
「あ……ん……」
あまえたようなメイの声が、ガブの耳に響きます。
もっと聞きたくて、ガブはメイの両足をひらかせ大事な部分にくちづけました。
「やあ……ぁ……だめ……」
過ぎた刺激に、メイはガブを押しのけようとしました。
だけど力が入らなくて、ガブのたてがみをゆるくかきまわしただけでした。
ガブは愛撫にいっそう力を込めました。
「ひぁ、あ、ガブ……!」
メイのからだがこわばり、すぐゆるみました。
ガブはかまわずメイの腰を抱えあげると、すでに限界のちかい自分をゆっくりと押しこんでいきます。
「ああ、ガブ!」
かるく達してしまったメイの体は、ひどく敏感になっていました。
メイのやわらかくてあついからだがガブにまとわりつき、きつくしめあげます。
その感触にガブは背筋が震えました。
たまらない思いで、腕の中のメイを見つめます。
メイは浅い息を繰り返しています。目を閉じて、ひどくせつなげに。
「メイ……」
いとおしくていとおしくて、ガブはメイを強くだきしめました。
ガブは腰を動かし始めました。より深くメイを味わうために。
さいしょはゆっくり、だんだん早く。
「あ、だめ……、どうにかなりそう……!」
追い詰められていくメイがガブの背中に爪をたてます。
その痛みが心地よくてガブはうっすらと笑いを浮かべました。
「あ、ガブ、ガブ……」
「メイ……メイ……!」
「あ、ああ……!」
ひときわ強く突き上げると、メイは高い声を上げて果てました。
「く……う、メイ……」
ガブもまた、体中に巣くう熱情をメイのなかにそそぎこみました。
最後のひとかけまで、あまさず。雪がまた、ふりはじめていました。
ガブがメイを抱き上げて、2匹はねぐらに帰ります。
「寒くないでやんすか?」
「へいきです」
ガブのしっぽにくるまれて、メイはうとうとしています。
ねぐらの前で、ガブは丘をふりむきました。
2匹で書いた『だいすき』が、音もなく埋もれていきます。
明日の朝目覚める頃には、すっかり消えてしまっていることでしょう。
「忘れないから……だいじょうぶでやんす」
さみしくなんかありません。
明日からはじまるあたらしいおもいでと、メイがいるのですから。
ガブは寝息をたてるメイのほおに、雪のようにそっとキスをしました。
■ノヒト ... 2010/06/25(金)09:37 [編集・削除]
初出051218あたり