「なんでここに来るかなあ」
※あとしまつ後 暗い
※整理していたらこれが400件目になってしまいました。不本意です。
「なんでここに来るかなあ」
「涼みにきたのだ。何がおかしい?」
さっぱりわからないと肩をすくめ、普賢はコンソールに向き直った。
「客に茶は?」
「自分で淹れて。僕、忙しいんだ」
「つれないのう。昔はあーんなにかわいかったのに」
「誰がなんだって?かわいいとか言われても、うれしくないし」
不機嫌そうに普賢が振り返る。
背後のソファにのんべんだらりと寝転ぶ始祖様に矢で刺すような視線をやる。もちろんそのぐらいじゃこの男はびくともしない。
「こう暑い日には、おぬしのそばが恋しくなるのだ」
「人を冷房扱いしないでよ。腹立つなあ」
「硬いことを言うな」
桃マンの残りを口に放り込んで、伏羲はソファから立ち上がった。椅子に座ったままの普賢をうしろから優しく抱きしめる。
「ほら、ひんやりしておる。おぬしは体温が低いからのう」
「あのねえ望ちゃん…」
うんざりしたように、普賢は舌打ちして顔を伏せた。
「もう僕には体がないんだよ」
「知っておるよ」
「だったらどうして…」
のんびりと伏羲は答えた。
「我が罪だからだ」
普賢のうなじに頬ずりしながら、とろとろと眠たげな声で伏羲は腕の中の空間に向けて語りかけた。
「民草の苦しみも、仙人らの運命も、手駒にしたわしならば、いとしいとしと想うことさえ許されんだろう。
咎人は罰を、なれどいつ果てるとも知れぬ身ならば潤いも要る。傍らにおぬしの魂魄を感じられるだけで僥倖というもの」
うつろな腕の中にあるのは、椅子の背と熱も骨も感じないやわらかな感触。
「僕は、もう…苦しんでるキミを見たくない……」
伏せたままの普賢の声が揺れた。その頬は本来なら濡れていただろう。
「おぬしの有様はわしの罪、おぬしの存在がわしの慰めだ。
顔を見せてくれなどとおこがましいことは言わん。だがそばに在ることだけは許してほしい」
片手で胸を押さえ、普賢は震えを押さえた声音でつぶやく。
「僕がキミを振りかえらなくともかまわない、と?」
「いかようにも」
どうであれ、この渇きが真に癒されることはないのだから。
伏羲の腕の中から、細い声がもれでる。
止むことなく続くそれは、すすり泣きに似ていた。
■ノヒト ... 2010/09/29(水)18:05 [編集・削除]
かおをふせた→変換→(>w<)を伏せた
あるあるー…