※修行時代 短文
目を閉じると浮かぶのは彼の背中。
隣に並びたくて追いかけた。ずっと、追い続けてきた。
だけどまだ足りない。決意を秘めた胸中そのままに、彼の足取りはとても速いから。
玉虚宮から戻ると、普賢はベッドの上に腰掛けた。
腕の中には一抱えはある丸い球体。そして元始天尊様直筆の取扱説明書。
今日はじめて手に入れた自分の宝貝。ほんの少しだけ、彼の背に近づけた気がする。
いつか横に立ちたい。彼と同じ景色を見たい。
心赴くままに説明書を開く。
肝心なところは全部すっぽ抜けてる長いだけの説明書は、逆にこの球体が無限の可能性を秘めていることを示唆していた。
「これからよろしくね、太極符印」
つるりとした表面をなでると、暗いディスプレイが応えるように青紫に光った。
だけどまだ足りない。
目を閉じれば、浮かぶのはやはり彼の背中。