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SS~あお色

「普賢、服を脱げ」
 
※房中術物 十八禁
※ふーたんおとこのこ注意
※はひょ?
 
続き
 
 

 
「普賢、服を脱げ」
 雨の日、部屋で机に向かって自主学習中だった僕に向かって、戻ってきたばかりの望ちゃんが告げた。抱えてるのは借りてきたばかりと思しき本。声には有無を言わさない勢いがある。
「房中術を試したいんだ。ちょっと実験台になってくれ」
 首を傾げた僕に返ってきたのはついぞ聞いたことのない単語。耳慣れない響きに、つい好奇心をそそられる。
「ボウチュウジュツ?」
「ああ、これに成功すると仙気を強くできるらしい。ただ、ひとりじゃできないんだ」
「複数でやるんだ。変わってるね。水垢離や滝行なら得意だけど」
「あれは寒いから嫌いだ、でもこれは体があったかくなるらしい」
「へえ、陽の気が強くなるのかな。それなら僕達、男だからちょうどいいね」
「だろ?俺もくわしく読んでないから一緒に読もう」
 寝台に腰掛けた望ちゃんの隣に並んで座ると、望ちゃんは分厚い本を僕に見えるように広げてくれた。かびくさい香りのするそれにつらつら並んだ手書きの筆文字を望ちゃんは顔をしかめながら声に出していく。
「陰陽の交わりにて仙気高むるは相通ずる伴侶が理想なり」
「仲良しのほうがいいってことかな」
「陽気高むるは陰気高むるに等し」
「…両方上がってお得ですよーってことかな」
「陽より陰生じ陰より陽生じるは心より肉生じ肉より心生じ理に通じその為す所ば……」
「……ごめん、わけわかんない」
「俺もだ」
 望ちゃんは長くため息をついてやっぱりかとつぶやいた。
「おまえならこの理論のとこ、もうちょっとわかるかって思ったんだけどな」
「さっぱりだよ。それに、こういうのは望ちゃんの畑じゃない?」
「わからなかいから聞きに来たんだろ。実験もしたかったし」
 そういって望ちゃんは本の中ほどまでページを飛ばした。
「な、後半は実践ばっかりなんだ。このへんはどんな風に相手の体を触るかってことが書いてあるんだ。で、思ったんだけど、先週の講義で気脈について教わったじゃないか。人体にも気の流れがあるんだって。
 理論のとこと実践のとこを斜め読みするに房中術ってのは、お互いに触りあって気脈をコントロールする修行だと思うんだよ。んでたぶん体が温かくなっていくと陽気が高まってるってことなんじゃないかと思うんだ」
「うーん。それで僕?」
「だっていちばん仲良いのおまえだからな!」
 にっこり笑顔で宣言されると僕は素直に引き下がるしかなかった。しょうがなく上着を脱いで上半身裸になる。ほんとは全部脱ぐものらしいけど、さすがに遠慮させてもらった。
 言われたとおり寝台に横になる。望ちゃんは僕の上にまたがると、脇に広げた本とにらめっこしながら手のひらで僕の首筋を2回、なでた。
「どう?」
「どうって、手で触られただけだよ」
「あれ、おかしいな。えーと、まず掌で二度、人差し指で一回、薬指で二回、これを左右くりかえす、と」
「じゃあ指でも触ってみなきゃ」
「そっか」
 さわさわ。
「どう?」
「くすぐったい、かな?」
「うーん、もう一回」
 さわさわ。
「若干くすぐったい」
「もう一回」
 さわさ。
「あはは、ちょっとやめて」
「笑うな、逃げるな。実験にならないだろ?」
「だってくすぐったいんだからしょうがないじゃないか」
「むー、じゃあこっちのページのこれ」
 さわさわさわ。
「あはは、やだ、あはは!」
「じゃ、これだ!」
「やだやだ、あははは!」
 というわけで笑いすぎてぽかぽかしてきたのは確かだけど、実験としてはいかがなものかという状態が続き、望ちゃんも諦めモードでページをめくってじゃあ最後にこれと、僕の胸の先をつまんだ。
「んっ」
 反射的に体が硬くなる。望ちゃんが笑ったこと、顔を見なくてもわかった。両手が僕の胸の上に。
「ん、んぅ、ん!」
 両方をつまむように弾くように弄られる。そのたびにあふれだす言葉にできない感触。自分でも意識したことがない器官がこんな不思議な感覚を生み出すなんて驚きと不安が交互に膨らんでいく。
「ちょ、ちょっと!ん、やめてよ、やめようよ、これ、ん!」
「い、や、だ。やっとそれらしい状態になってきたんだぞ。あと、おまえが取り乱してるところなんてめったに見れんしな!」
「やめ、って、てば、ぁ、くぅっ!」
 なに?なんだろう。わからない、わからない。いじられてるところがだんだん熱を持って、そこと体の芯が響きあってるような感じ。なんとかしなきゃってあせるけれど思考が散漫で考えがまとまらない。
「お?」
 望ちゃんの手が止まる。ようやく止まった不思議な感覚に、僕は自分が息を乱していることに気づく。いきなりズボンの中に手が滑り込んできて、下半身の中心をつかまれた。
「へえー、普賢でもここ、こうなるんだ」
 いつのまにか硬く張り詰めてしまっている自分を握りこまれ、やわやわと愛撫される。あまりの事態に呆然としている僕の前で望ちゃんは空いた手でページをくった。
「えー先端を包むように五指をして円を作り、七度すりあげた後親指にて先端を……」
「待って!待つんだ望ちゃん!」
「いやだね」
 舌なめずりをせんばかりの笑顔で言い放ち、その左手が僕の中心を刺激し始める。さすがに同性なだけあって手際のよろしいことで、他人にそんな行為をされるという意味がようやく僕の中で形になる。
 房中術って、房中術ってようするにつまりそれって……。
「やめ、やめようって…ん、くぅ!やめっ、だ、ダメ…だってば!あ、は!」
 自分がこんな声をあげてるなんて信じられない。全身の熱がそこに集まって行くのがわかる。いやなのに、背が反り返って。体中が汗で濡れて。
「ふぁ、ぁ、あ、も、やぁ…うぁ…!」
 頂点を迎えようとしたその瞬間。
 
 ぽっぽっぺるっぺっぽっぺっぺーん☆
 
 午後の終業を告げる鐘の音が鳴った。
「ちっ、しょうがねーや。今日はここまでな」
「え」
「今日、寄るところあるんだ。悪いな、じゃ」
 呆気にとられた僕を置いて望ちゃんはさっさと部屋を出て行った。
 後に取り残されたのは臨戦状態の僕と房中術の本。昇山の前も後も清い体を貫いてきた僕には臨界点以下に収める実践的知識があるわけがなく。どうしよう。どうしたらいいんですか、教えてください物言わぬ先生。あああどのページも煽るような事しか書いてない!
 その日僕が味わった屈辱など序の口に過ぎず、後日望ちゃんと共に大人の階段を三段飛びくらいで昇るはめになるとはまだ知るよしもなかったのでした。
 

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■ノヒト ... 2011/12/08(木)08:26 [編集・削除]

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