結局自分はこの人に甘いのだ。
お題ガチャ 望の寝顔を見つめる普賢
冷気が降り積もる深夜、普賢は湯殿から寝室へ移った。灯りをつけずに部屋へ入り、手探りで寝台を探す。暗闇の中見つけ出した布団は妙に丸っこく、何かが寝息を立てている。
さてはと傍らの灯りをつけると、人のベッドで太平楽に寝こけている軍師様がいた。一言、言ってやろうとも思ったけれど、目の下にうっすらと浮いたクマを見るとそんな気持ちも失せた。結局自分はこの人に甘いのだ。
「望ちゃん」
「……」
「望ちゃんてば」
返事はない。猫のように眠りこけている。そういえば猫は液体だという論文を読んだような気が……。
よく簡略になってくにゃくにゃしてるあれは液状化だったのかとぽんと膝を打つ。次にそうなったらバケツへ詰め込んでみよう。
「望ちゃん、ちょっと奥へ行ってね」
楽しい想像と共に太公望の体を壁際へ押しやる。一心不乱に惰眠を貪るその人は寝返りも打たず妙な姿勢のまま丸たんぼうのように追いやられていく。ようやく空いたスペースに自分の身を捻じ込むと、ぬくもりに包まれた。
(望ちゃんの体温だ……)
布団に残るぬくもりは心地よく、快適。外の寒さなど知らぬ存ぜぬ。けれどもう少し欲張るなら……普賢は太公望の背をそっと抱きしめた。まだ幼さの残る薄い背中にぴったりと身を寄せると、彼の寝息が止まった。
「遅いぞ」
「それはこっちのセリフ」
不平だけつぶやいた太公望は、むりやり体を反転させると普賢と唇を重ねた。舌先が誘うようにちろりと普賢のうすい唇を舐める。無意識に目を閉じた普賢は続きを待った。けれども、その先は待てど暮らせど。ゆっくりとまぶたを持ち上げると至近距離で寝落ちしている軍師殿がいらっしゃった。その小さく形のいい鼻へ軽く歯を立てると、普賢は灯りを消し太公望の頬へ触れるだけのキスをした。
「おやすみ、望ちゃん」