#普賢真人お誕生日会2021
#普賢真人生誕祭2021
#望普
普賢象というのが、その桜の名前なのだそうだ。
意気揚々とそれを告げてきた伏羲に普賢は生暖かさと愛おしさが絶妙に混じった笑みで応えた。たぶん彼は極東で見つけたその桜を自分に見せたいのだろう。我が手柄のごとく。残念ながら情報処理に長けた太極符印はとうの昔にその存在をキャッチしている。普賢としては今更な話だ。
「はいはい、ついていけばいいんだね?」
「おぬしは本当に可愛げがないのう」
ぶちぶち言いながら伏羲は空間の扉を開ける。そこは一面の桜の園だった。手毬に似た桜花が眼前を埋め尽くしている。やはり本物の迫力というのは凄いもので、だいたいバーチャルで済ませてしまう普賢にとってその景色は新鮮だった。
「きれいだね」
「本当にそう思っておるのか?」
「うん」
「本当の本当か?」
「肯定してるじゃない」
話しながらその空間へ足を踏み入れる。枝垂れた枝が作り出すトンネルを、普賢は伏羲へ寄り添って歩いた。しばらく物も言わぬまま景色の美しさへ酔いしれる。ほろほろとこぼれ落ちる桜吹雪。心が浮き立つような光景。普賢は伏羲に先立って歩を進めた。
突然二の腕を掴まれ、普賢は伏羲を振り返った。
「どうしたの?」
「なんでもない」
「桜にさらわれそうとか言わないよね?」
「……」
図星だったようだ。伏羲の頬が少し赤くなる。
「嫌だなあ、自分が何処に行くかくらい自分で決めるよ」
「そんなおぬしだから不安になるのだ」
「そう。じゃあ教えてあげる。今の僕はキミの隣がいい」
「まったく……」
そんなおぬしだから勝てぬのだ。伏羲のつぶやきは口づけに溶けた。