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SS~願わくば花の下にて

女体化むいが書きたかっただけの話 キメ学時空

続き

「ゆーいちろー、無一郎ちゃん紹介してくれよー」
「やだね」
 いつもの昼休みのいつもの会話。悪友がヘッドロックかましてきたので、俺はそいつを蹴飛ばした。
「あいつと付き合っても何もいいことないぞ、わがままだし、身勝手だし」
 無一郎というのは俺の双子の「妹」のことだ。童顔、ロングヘア、おとなしそうな見た目、それでいて出るところは出ているエロい体。指名されて立ち上がるたびにぶるんとふるえる巨乳なんかどれだけネタになってるのかわからない。一時期は無一郎の着替え画像が出回ってたくらいだ。俺は兄としてそいつらをしばき倒し、目の前で削除させた。以来、俺のあだ名は某警備会社になっている。
 無一郎のセ○ム……いやまあそうだけどな。本当の理由は……。
「兄さん」
「お、きたきた、無一郎ちゃーん!」
「今日もかわいいねー!」
「ふふっ、ありがとう。冗談がうまいね。兄さん、借りていくねー」
 無一郎は無邪気このうえない笑みを浮かべて俺の肩へ手をやり、教室の外へ連れ出した。そのまま今は使われていない旧校舎のトイレへ連れ込む。
「兄さん」
 急に無一郎の雰囲気が変わる。妖しく、美しい、傾国とやらがいるなら、きっとこうなんだろう。
「わかってるよね?」
「へーへー」
 俺はベルトを外し、ズボンをおろした。う、もう下着が濡れ始めてやがる。俺の意思に反し、体はこれから起こることに期待を隠せないでいる。無一郎は俺の下着をずらすと、半勃ちになった俺のものをやわらかな両胸で挟んだ。
「……ん、おまえ、な。朝ヤッたばっかりだろ」
「だって急に兄さんが欲しくなったんだから仕方ないじゃない」
 無一郎はそのまま無遠慮に俺のものを咥えた。ぺちゃぺちゃと亀頭を舐められ、もちもちした両胸で包まれすりあげられる。与えられる快楽に素直に、俺のはしだいに固くなってきた。
「昼休み。終わるのいつ?」
「あと15分」
「なら充分だね」
 無一郎はしゃぶりついていた俺のものをぱっと離した。腹へ付きそうなほどに反り返った自分のものを見て落ち込む。無一郎は後ろを向いて尻を突き出した。丸くて、白い、なだらかな曲線を描く尻だ。
「来て、兄さん」
「コンドームは……」
「今日は大丈夫な日だって朝も言ったよね?」
 言うなり無一郎の方から尻を押し付けてきた。やわらかい、男の劣情を誘う感触だ。ほんのりと甘い香りまでする。俺はもうたまらず無一郎を貫いた。
「あんっ、兄さん、中に出して……」
 なんというか、俺は、無一郎の、奴隷なのだ……。

「兄さん、して」
「ん」
 口と口をくっつけるときもちいい。それが幼いころ発見した無一郎との最初の秘密だった。なぜか心臓がドキドキして、頭がぽわんと桃色になる。舌を重ねるともっときもちいいことにすぐ気づいた。そこからは坂道を転げ落ちるように、おたがいに試し合って体を重ねることすら覚えた。双子の間の秘密は日増しに増え、大きくなっていった。そして時がたつに連れ、俺は自分たちのしていることが許されないことだと知った。
「兄さん、して」
「……ああ」
 なのに体は快楽に抗えず、俺達は何度も体を重ねた。俺が精通したのは、無一郎の中でだった。思えば無一郎は幼い頃から妙な色香をまとっていた。一度などは担任が惑わされ、PTA問題にまで発展したくらいだ。それ以来、いや、それを隠れ蓑に、無一郎は朝から晩まで俺へべったりとくっつくようになり、両親も兄となら安全だろうと妙な信頼を置くようになった。その実態が、これだ……。
 こんなこといけない。わかってる。いつかやめなきゃ。でもいつになるんだ。終わりのない、地獄に似た悦楽の園。無一郎とするのはきもちいい。既に体へ刷り込まれている。
 時計を見やると残り5分を切っていた。俺は腰の動きを早める。
「んっ、あ、ああっ、あん…あっ…ふあっ!」
 無一郎のあえぎがどんどん大きくなっていく。頂点が近い。最初から発情していた無一郎の体は、俺の動きに合わせて揺らめいている。最高にきもちいい。今すぐ出してしまいたい。もうすこし、もうすこしだけガマンだ。ふたりで一緒にイク快感を知ってしまったから、もう独りには戻れない。
「むいち、ろ……」
「にいさ、なまえ、呼んでっ……!」
「無一郎、無一郎っ!」
「兄さん兄さん、兄さんっ!」
 ひときわ高く無一郎が俺を呼んだ。同時に蜜を滴らせた肉壷が収縮する。
「う、あ」
 射精の快楽に思わず声がこぼれた。無一郎は肌を桜色に染め、波に震えながら俺のものをきつく絞り上げる。勝手に溢れていく精液。無一郎の悦楽のおこぼれにあずかる。惨めな犬のようだ。ご主人さまの気分一つで、骨をもらえたり棒で打たれたり。だけど、離れられないでいる。

 波が去った無一郎は当然のようにティッシュで始末をして顔を上げた。
「兄さん、時間は?」
 そこに居るのは品行方正ないつもの妹だった。さっきまでの乱れっぷりが嘘のようだ。
「先に行けよ。旧校舎からふたりで出てきたなんて、怪しまれる」
「5限、遅刻しないでね」
 何事もなかったように無一郎は俺の隣を通り過ぎていく。その髪が香り、俺は自分の中心がずくりとうめくのをこらえきれなかった。
 決定的に間違ったのは、きっとあの日だ。
 罪悪感に耐えきれなくなった俺が、友人を彼氏として無一郎に紹介した日。無一郎はひどく傷ついた瞳で俺を見つめ、その場で付き合いを了承した。その晩、遅くに無一郎は帰ってきた。そして帰ってくるなり俺たちの部屋へ鍵をかけ、スカートの裾を持ち上げた。
『兄さん、ぜんぜん満足できなかったんだ。……して』
 無一郎は、はいていなかった。無毛のそこから白濁が垂れ落ちて太ももを伝っていた。淫らな臭いをあふれたたせながらも、無一郎は綺麗だった。霞がかかった湖のような陶然とした瞳が俺を捕らえ、自分がもう逃げられないことを知った。

 あの日からずっと、丁寧に丁寧に、後悔と諦念をくりかえしている。体は逸る一方で、心は濁って沈んでいく。
 いつか無一郎が俺を……必要としなくなる時が来るんだろうか。俺はきっと泣くだろう。恥も外聞もなく泣き叫ぶだろう。きっと無一郎はそんな俺を見て失望するに違いない。その時の無一郎は、誰よりも何よりも美しいだろう。

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 兄さんが好きだ。
 ものごころついた時にはそうだったし、僕にとっては自然な感情だった。
 いつもそばにいてくれる兄さん。あったかくて、すこし照れ屋で、口の悪い兄さん。そんな兄さんをこの体で籠絡するのはたまらなく心地良い。口ではダメだと言いつつも、肉欲に負けて僕に溺れる兄さんは例えようがないほどかわいい。汗にまみれて、裸の体で抱き合って、欲望とダンスを踊る僕たちの関係は、合法でもなんでもないけれど、それでもね、この思いだけは本物なんだよ。
 兄さん、兄さん、愛しています。
 いつか遠くに行こう。誰も知らない場所でふたりきりで暮らそう。朝から晩まで兄さんに抱かれていたい。……夢が叶うなら死んでしまってもかまわない。
 僕を全部兄さんにあげたいの、受け取ってほしい。どうか、あの時みたいに、他の男をあてがわないで。僕の淫乱の性を目覚めさせてしまったのは兄さんなのだから。最後まで責任を取ってよ。
 兄さん、兄さん、僕を一人にしないで。
 たとえ世界中を敵に回そうとも、僕だけは兄さんを愛し続けるから。兄さんがそれを望まなくとも、この体で溶かしてみせるから。神から授かった美貌は、兄さん、すべてあなたのもの。しおれる前に摘んでほしい。花の命は短いんだよ。
 いつか兄さんがくれたネックレスには、ネットで買った青酸カリ。いつでも用意はできているんだ。兄さんとなら、崖下だろうと橋の下だろうと、胸を張って飛び込める。
 ……その時は手をつないでいてね。それがきっと僕の最後の願い。