「ねえ兄さん、前々から思ってたんだけど……」
むいゆう表現あり。いちゃいちゃ双子えっち。有一郎生存if時空。
しとねで絡み合い甘い声をあげて二人で果てる至福のひととき。
無一郎の肉付きの薄い、けれどもしっかりとしたからだは、どんな愛撫も受け入れ風に揺れる柳のように反応を返す。オスとしての悦びと、愛しい人と繋がる喜びが俺を夢中にさせる。愛の営みを双子で行う禁忌すら、蜜の味。無一郎は美しい。この世界の誰よりも。きれいで、目に入れても痛くないほどかわいい。そんな無一郎とひとつになり、今夜も共に頂点を迎える。同じ顔のはずなのに、無一郎のほうが整って見えるのは何故なのだろう。
俺は弟へ腕枕をしながらそう思っていた。どうにもにやにやがあふれてくる。弟の方はというと、事後の甘さなど感じさせない真剣さで口を開いた。
「ねえ兄さん、前々から思ってたんだけど……」
「なんだ」
「体力なさすぎない? 僕、まだ満足してないんだけど」
言葉の出刃包丁か? 心にざっくり突き刺さる衝撃の一言に、俺は「お、おう」としか返せなかった。
「兄さんが努力してくれてるのはわかってるけど、もうちょっと、もうちょっとなんていうか、ねえ……」
たしかに無一郎は体力がすごい。柱なんだから隠の俺なんかザコザコのザコだ。そう思って手や口で追い詰めてみたり、前戯の時間を長めにとったりしているのだが、まだ足りないというのか。正直なところ毎日おまえの相手をするだけでも必死なのに。打ち明けてしまうと無一郎は難しそうに眉をひそめた。俺はそんな無一郎へ語りかける。
「毎日しているから感度が落ちている、なんてことはないか?」
「それはない。兄さんからの愛撫はいつでも気持ちいいし脳内麻薬ドバドバ出る。だからもっとしてほしい」
無一郎は夢でも見るような顔つきで、たれかけたよだれを手の甲で拭った。
「特につながってるときなんてね、もう極楽だよ。このまま死んでもいいと思えるくらいに気持ちいいんだ」
「死ぬな。別にお前を殺すためにヤッてるわけじゃないんだぞ」
「言葉のあやだよ兄さん。とにかく兄さんに突き上げられてると『ああ僕いま兄さんのものなんだ』って感じられてすごくいいんだ。もっとしたい! すっごくしたい! なんなら朝から晩までつながっていたい!」
そりゃ柱のお前ならそれも可能だろうが、俺は隠だ。一般人だ。勘弁してくれ。しぶい顔をしていると無一郎は拳を握った。
「もうこうなったら筋トレしかないよ兄さん。とりあえず全集中の呼吸を会得しよう」
「むり、しぬ」
「初歩中の初歩だよ!?」
「お前といっしょにするな!」
「じゃあ腹筋500回から」
「しぬ」
「兄さんはどれだけクソザコナメクジなの?」
「お前がおかしいんだ、お前が! このクソ柱! 性欲おばけ!」
「お館様から認められたこの僕を性欲おばけ呼ばわりなんて兄さんでも許さないよ!」
「じゃあ今日から一週間禁止だ。一人遊びもダメだぞ」
無一郎はわかりやすく口をひん曲げた。
「ひ、ひとりでするくらいはいいじゃないかあ……」
「それこそ性欲たまってますって証拠だろうが、違うか」
むっとしたらしく無一郎は背を見せた。
「わかった。じゃあ一週間なにもしない。でもそれは兄さんもだよ? 約束破ったら腹パン入れるからね」
「しぬ」というわけで俺と無一郎の(主に俺の生死がかかった)一週間が開催された。
……のだが。
はー、ラク。夜のおつとめがないだけでこんなに体がラクなのか。俺は毎晩無一郎を抱き枕みたいに腕へ抱えこんで優雅な眠りを貪った。そのあいだ無一郎が何を考えてるかぜんっぜん知ろうともしないままで。
今にして思えばもうすこし話をするべきだったんだと思う。せっかく無一郎が本音をさらけだしてくれたのだから、俺ももっと建設的なことを言うべきだったのだろう。少なくとも無一郎へ意地悪をするようなことは言うべきじゃなかったんだ。
一週間後の夜、無一郎は風呂からあがるなり俺を寝室へ呼びつけた。
「兄さん、約束、わかってるよね?」
俺は無一郎の気迫に押されてやっぱり「お、おう」としか返せなかった。
「もう頭の中が兄さんでいっぱいだよ、どうしてくれるの? 任務があったら危なかったよ。ほんとイライラ止まんないし。脳みそがパンクしそう」
「……おう」
いつもならそんなに俺を求めてくれているのかと感動していたところだが、いま無一郎から感じるのは殺気だ。こわい。ぶっちゃけおそろしい。
「兄さんは僕を満足させられないんだよね?」
「ん、ああ、まあ、そういうことになるな」
「こうなったら僕が満足するまで兄さんを犯す!」
「待て待て待て、なんでそうなる!」
「兄さんが最後までもたないからだよ!」
「うっ」
それを言われるとつらい。一週間チャージしてるとはいえ、いまの無一郎を天国へ連れて行ってやれるかと問われると、先に俺が干からびるほうに100万賭ける。ちなみに100万は、れーわという時代だと40億くらいだそうだ。どうでもいいことだが。
「僕が兄さんのものになるだけであんなに気持ちいいんだから、兄さんを僕のものにしたらどうなっちゃうのかな、うふふ、うふふふふ」
すでにヤバい世界へ旅立ちつつある無一郎。幽霊のようにゆらりと立ち上がり、次の瞬間、俺は天地がひっくりかえった。目の前には無一郎のしまりのない笑顔。
「じゃあ兄さん、覚悟決めてよね?」
「…………わかったから優しくしてくれ、初めてなんだ」
俺は半泣きで懇願した。無一郎は慣れているからかんたんにほぐすだけで充分だが、俺は自分で触ったことすらない。そこへ無一郎のものが入りこんでくるなんて想像するだけで背筋が寒くなる。
「ああもう、めんどうだなあ。わかったよ。いつもの香油どこ!?」
なんでキレてんだよ、こえーよ。やっぱり性欲おばけだこいつ。そしてそのおばけの逆鱗に触れてしまったことに今更ながら気づいた俺は後悔のどん底に居た。押し入れから香油の瓶をとりだし、無一郎にわたす。
「やり方わかってるか?」
「ううん。でもいつも兄さんがしてくれてるようにすればいいんだよね」
「……やっぱり自分でやる」
ちくしょう、こんなことになるなら風呂できちんとしておけばよかった。俺は頭から布団を被り、香油の瓶を開けた。
「ちょっとまってよ。もしかして見せないつもり?」
「ダメか?」
「ダメに決まってるじゃん! いつも僕のおしり触って恥ずかしいこと言ってくるくせに、自分の番になったら隠れるなんてずるい!」
「……」
俺は布団から頭だけだした。かたつむりみたいで、我ながらすっげえ間抜けだ。
「いつもすみません」
「なにそれ、いまさら神妙にしたって許さないよ。ほら、裸になって」
「それだけは勘弁……」
「ダメったらダメ、早く!」
無一郎は馬鹿力で俺から布団を剥ぎ取り、ついでに浴衣をむしりとった。
「イヤーオネガイヤメテ!」
「裏声あげてるひまがあったら脱ぐ! はい、はい、はい!」
無一郎は完全に目が座っている。もうこうなったら俺もひらきなおるしかない。というか浴衣って紙みたいに破れるんだな。そろそろ新調しようとは思ってたけどさあ。あさってのほうへいきかけた思考を引き戻し、俺はいつも無一郎へそうさせているように尻を向けた。
香油をたっぷりと手に取り、後孔へ塗りつける。そして中指を孔へ押し込んだ。
「うっ」
きつい。この体勢もきついが異物感もきつい。いやな汗がにじみ出てくる。だがせめて指三本入るくらいにほぐさなくては後が続かない。
「ん、く、ぐう……うくっ、ふぅ……」
姿勢を変えたり指を抜き差ししたりしているうちに、なんとか中指が入った。俺は冷や汗を流しながら自分の中へ香油を塗りたくる。こんな感触なのか。いつもやる側だから気づかなかった。次があるなら、もっと……。
「兄さん」
とつぜん無一郎が俺の腰をつかんだ。生暖かいものが後孔へ押し当てられる。え、ちょ、ちょ、ちょいまて、ガン勃ちじゃねえか! ハアハア言ってる場合か!
「も、もうムリ。もうがまんできない。色っぽすぎるよ兄さん」
「まてまて頼む無一郎、まだ序盤も序盤なんだよ!」
「ごめん、ムリ、兄さんごめんなさい!」
無一郎は俺の手をどかせると、自身を押し込んできた。
「づっだああああああああ!」
痛いなんてレベルじゃない。尻が引き裂かれたかと思った。
「いったぁい! 痛いこれ、なんで?」
「慣らしきってないからだよ! 一旦抜け!」
ちゅぽんと音がして俺の中の異物感が消えた。入ったのは亀頭部分だけだったようだが、尻の痛みは続いている。マジで「痛い」以外の感想が出てこない。
「ぜんぜんよくなかった……」
無一郎はがっかりしている。お前なあ。俺の中に猛然と怒りが沸き起こった。
「初夜で俺がどれだけ時間をかけてほぐしたと思ってるんだよ!」
「ああ、なんか妙にねちっこいなあって」
「ちゃんとやらないとこうなるんだよ! お互いろくなことないんだ、わかったか!」
「うん、兄さんごめ……あ、血」
尻へ手をやると、ぬるりとした感触があった。香油に混じって血が垂れている。やべーなこれ、ははは、もう笑うしかねーわ。
「……ごめんなさい兄さん」
ようやく理性が戻ってきたのか、無一郎はしょんぼりとうなだれた。
「そんな顔するなよ。俺だってべつに心底嫌ってわけじゃないんだから」
ごめんなさいとくりかえす無一郎を、俺はぎゅっと抱きしめた。
「いまのでわかった。あのね、僕、やっぱり兄さんに抱かれたい」
「そうなのか? いいんだぞ、もう少し待ってくれれば、準備はできる」
「ううん違う。ただ射精したいわけじゃないんだ。僕は兄さんのものだって全身で感じながら、お腹のなかぐちゃぐちゃにされて気持ちよくなりたい」
「メスイキがしたい、と」
「う、平たく言うとそうなる。けど、それ以上に兄さんに抱かれていたい。何も考えずに兄さんに溺れていたいんだ」
「でもお前、俺では満足しきれないんだろ」
「……うん、どうしたらいいのかな」
俺たちは抱き合ったまま寝転がった。すぐ近くに無一郎の顔がある。まぶたに、ひたいに、くちびるに、やさしくキスをして心を鎮めてやる。
「お前はどんなときに幸福を感じるんだ?」
「兄さんとつながってる時」
「うん、それ以外だとどんな時がある?」
「えーと、そうだね、兄さんのものをぺろぺろしてる時もかも」
「俺の性器に触れてる時に幸せを感じる?」
「そうだね、うん、そう。誰も触れられないところへ僕だけが触れてると思うとぞくぞくする」
傍から見ればずいぶん珍妙な会話だろう。けれど、俺たちは真剣だった。お互いを思うがゆえに探り合う時間を大切にしたかった。
「試してみるか?」
「うん」
そういえば無一郎を満足させることばかり考えていて、無一郎から俺になにかしてもらうことはほぼなかった。無一郎は仰向けになった俺の股間へ顔をうずめ、俺のものを口へ含んだ。ぴちゃぴちゃと濡れた音が立つ。が。……下手だなこいつ。そりゃそうか。経験なんてほとんどないもんな。
「無一郎、どうだ?」
「ひあわひぇ(幸せ)」
とろんとした顔つきで無一郎が俺のものをくわえたまましゃべる。俺はふと思いついて無一郎においでおいでをした。
「俺の上に乗って尻を向けろ、やってみたいことがある」
「ひゃい」
無一郎は俺の亀頭へ深くキスしたまま体を動かした。俺は転がっていた香油をつかみとり、中身を手に取る。そして無一郎のものを咥えたまま尻の孔をつついた。
「んひゃっ、にいひゃん、なにするの」
「こうしたほーがきもちーかとおもって」
俺も無一郎のものをくわえたまましゃべる。無一郎のからだが跳ね、ただでさえへたくそな口淫がおろそかになる。
「むいちろー、きもちーか?」
「う、うん、ぺろぺろすうのもされうのもきもちーよ」
うまくいってるみたいだ。俺は後孔へゆっくりと中指を入れ、たっぷりと香油を塗りつけてやる。時折、無一郎のいいところをつついてやりながら。無一郎はそのたびに「おひっ」とか「ひゃうんっ」とかいいながらからだを震わせる。
「はあん、ひあわひぇー……」
とろけきった声が聞こえてくる。いつのまにか後ろの孔は三本もの指が入るようになっていた。俺は無一郎のものをしゃぶりながら、中のいいところを徹底して責め立てる。
「おっ、おぐっ、い、イクかも……」
「いへよ、れんぶのむから」
舌先で鈴口を舐めると苦味を感じた。先走りを塗りつけるように俺は舌を這わせる。同時に三本の指で弾くようにいいところを刺激する。
「んっ、い、いいっ、兄さん、いいっ! んぅっ!」
無一郎のからだが反り返り、俺の口内へどっと精が解き放たれた。俺はそれを飲みこみ、中へ残ったものを吸い上げる。
「んおおっ、それいい、それいいよぅ。ああ、また出ちゃう、出ちゃう、出ちゃうよ兄さん飲んでぇ……」
ごぽりと再度苦味が大量に吐き出される。二度目にも関わらず、口からあふれるくらいの量だ。俺はそれをなんとか飲み下し、さらに吸い付く。
「んんっ、んー! イグッ! またイク! おしりズボズボされるの気持ちいい、兄さんのお口気持ちいい!」
もはや口淫などできず、無一郎は俺のものへしがみついたままよだれをたらしている。匂いを嗅いだり、時折舌を絡ませるのは、自分を高めるためか。
「はっ、はっ、はっ、あああ、おしりくるぅ! 兄さんにちんぽ食べられたままイッちゃう!」
指がちぎれんばかりに締め付けられる。とろりとした苦味の薄い精が口内へ垂れ落ちてきた。俺は萎えてきた無一郎の亀頭へ軽いキスを何度もする。
「ほらがんばれがんばれ、本番までまだまだだぞ」
「に、兄さん、これ、これ気持ちいい。んぶ、もっとひゃぶって、ぼくもおひゃぶりするからぁ……」
「じゃあ満足するまでしてやるよ」
小半時もそうしていただろうか、俺はどれだけ無一郎の精を飲み下したかわからない。腹が重いのは気のせいじゃないだろう。無一郎は初めての体位にイキ狂い、もっともっとと求めてきた。悪くないな。俺の負担が軽いし、無一郎は快楽を味わえる。顔が見れないのは残念だが、お互いの恥部をさらしあうのは妙な解放感がある。疲れてきたらすぐ休めるし、からだを動かすのも最小限で済む。どこまでも快楽だけを追求するのにぴったりだ。
無一郎は俺のものへむしゃぶりついている。技術も何もあったもんじゃないが、すなおに懸命に奉仕しようとしているのは伝わってきた。
「そろそろ本番いくか、無一郎」
「ん、いいけど、兄さんイッてなくない?」
「お前の中に出させてもらうからいいんだよ」
無一郎を布団へころがし、大きく股を開かせた。たっぷり慣らしたそこは赤く色づき、早くくれと言わんばかりにひくひくとうごめいている。俺は無一郎と抱き合い、頬へ何度も口づけた。汗ばんだ肌と肌が密着して心地よかった。
「ふあ……兄さん……兄さんきて……」
ぼんやりとした瞳には喜びの涙が滲んでいる。霞のような白い肌が上気してほんのりと紅に染まっている。こういうとき、うまそうだと感じてしまうのは何故なんだろう。俺は無一郎の手を取り、その甲へ歯型を残した。
「お前みたいにきれいなやつはどこにもいないよ……」
「ふふっ、兄さん、もっとかじっていいよ。僕は柱だもの。すこしくらい痛いのなんて平気なんだから」
「ではお言葉に甘えて、霞柱」
「あう!」
俺は無一郎の中へ一気に入りこんだ。そのまま無一郎の肩へ噛みつく。
「あ、ん、いた、きもちい、わかんない、わかんないよ兄さん」
「どっちも本当のお前だ。痛いのも、気持ちいいのも、俺の前では我慢するな」
「うん、うん、あああ、おなかきもちいい、痛いのもきもちいい、兄さんもっと激しくして、わけわかんなくして、夢中にさせて」
そこまで言われると俺の理性も吹き飛びそうになる。俺はなかば崩れかけた理性を蹴飛ばし、無一郎の肩へ何度も何度も遠慮なく噛みつき、獣みたいに腰を振る。きもちいい。いつもよりさらに慣らしたせいで中はもう大洪水だ。それが食いつくように締め上げ、しごきあげてくる。
「あ、あ…あ…すご……すごい……溶けちゃう、溶けちゃう……」
俺の背へ腕を回したまま、無一郎はすでにあらぬかなたを眺めている。いい感じだ。俺は再度理性と手を結び、いったん腰を引き、ゆっくりと奥へ入るのをくりかえす。
「え……兄さん、なに? ふあ、ん、ああ……」
「ちょっと実験」
いままでは無一郎に言われるままにひたすら激しくしていたが、ゆっくりするとどうなるんだろう。ことさらに無一郎のいいところへすりつけ、奥をじんわりとぐりぐり押してやる。無一郎は物足りなさそうに俺を見つめていたが、やがてその瞳へ霞がかかってきた。
「にいさ、ん、兄さん……」
「なんだ?」
「気持ちいい…なんだかいつもと違う…」
「平気か?」
「……すこし怖い。ぎゅってしてて」
「ん、よしよし」
「ふふ…うれしい…兄さん、ありがとう」
「俺もだよ。無一郎、俺を受け入れてくれてありがとう」
「兄さん……」
とん、とん、奥をノックするように優しく。無一郎の腹はいつのまにかあふれた薄い精でぐしょ濡れになっている。そこへ汗がからみつき、すべりをさらに良くする。
「フー……フー……」
「ふあ……あああ……ああ……」
無一郎の肩はすでに俺の歯型だらけだ。そこへ新たな痕を重ね、消えなければいいと念じる。溶けきった無一郎の顔。こんなにうれしそうな表情はみたことがない。
「兄さん、イク……いっしょがいい」
「……わかった」
俺はすこしだけ速度を上げた。びくんと大きく跳ねた無一郎は、浅い息をくりかえし俺へ腰を押しつけてくる。中が細かく震え、やわやわと、時に激しく食らいついて離さない。
「もうだめ、兄さんにいさん!」
「無一郎、俺も……!」
強い快感が俺を襲った。ひらきっぱなしの口の端から唾液がこぼれおち、無一郎の肌を汚す。それにすら気づけないほど、俺は目の前が真っ白になっていた。
「う、あ、あ……むいち、ろ……」
「に、さぁん……」
今までにない快楽だった。悦楽で脳が焼けて何も考えられない。ふと視線を落とすと、無一郎はガクガクと震えている。あわてて抱きしめた。
「あ、あああ、あっ、だめ、だめだめだめ、またクル、あああああっ!」
悲鳴を上げた無一郎を俺はただ抱きしめることしかできなかった。かくりと力を抜けた身体。その頬を軽く叩く。
「だいじょうぶか? おい、だいじょうぶか、無一郎!?」
しばらく黙っていた無一郎がほんのりとまぶたをあける。
「す、すっごく良かった。……満足」
俺はほっとして大きく息を吐いた。
「まったくもう、気絶するところなんて俺にしか見せるなよ?」
「なんでそんな姿を兄さん以外に見せなきゃいけないのさ、ふふっ」
ころころと笑う無一郎の姿にあらためて心が温かくなった。それにしてもなるほど、多少工夫するだけでこうまで変わるものか。俺自身も無一郎との情事を見直すべきだったのかもしれないな。求められるうれしさに言いなりになっていたが、すこしはこっちが主導権を握らないと。なんせ相手は柱なんだから、こっちがもたない。
手ぬぐいでからだを拭いてやっているあいだに無一郎は眠りへ落ちていた。俺はその白い肌を清めることそのものに楽しみを見出す。……やっぱりかわいいな、こいつは。
ただやはり噛むのはやりすぎたかもしれない。肌が腫れている。消毒液はあっただろうか。立ち上がろうとすると引っ張られた。
「むにゃ、兄さん……」
無一郎が俺の足首を握っていた。かわいいことすんな、まったく。俺の処女を奪いやがって。まあお前以外にやる気もなかったけどさ。