「ペニスね」
ふ た な り 注 意。マロお題詰め合わせセット。有一郎生存if時空。
「はい、次の方。って、あら、珍しい」
胡蝶さんは僕と兄さんを見て目を丸くしました。でもそれどころじゃありません。挨拶もそこそこに人払いをお願いし、じつは、と兄さんから用件を切り出しました。
「昨晩こいつが鬼退治にいったのは知っていますか?」
「ええ、人を犯しては食らう悪質な鬼だったけれど、見事首を落としたと聞いたわ」
「その際、とんだ首がこいつの腿へ食らいついたらしいのです。以来、こうなっています。無一郎、みせろ」
「う、うん……」
僕は恥ずかしさでまっかになりながらベルトをはずし、袴の前をくつろげました。胡蝶さんはあんのじょう目が点になりました。
「ペニスね」
身も蓋もない言い方です。僕は恥ずかしさに消えてしまいたくなりました。僕の股間に、兄さんの腕くらいはありそうな立派すぎるものがギチギチに張り詰めた姿を晒しています。
「しかも勃起したままなんです。自慰をすると膨れ上がるいっぽうで、俺が手伝わないと射精もできない」
「緊急事態のようね、すぐ検査するわ。診察台へ横になって」
僕は泣きそうな気分で胡蝶さんに言われたとおりにしました。触診をされた瞬間、快感が襲ってきて白濁が飛び出し、手袋をした胡蝶さんの手を汚しました。気持ちよさよりも罪悪感が勝って僕は涙をにじませました。
「ごめんなさい胡蝶さん!」
「かまわないわ、楽にしていいのよ。異常な感度ね。それに、何かしらこれ、数字? 裏筋のあたりに、もうちょっとよく見せて」
「あ、ああっ!」
どぴゅ。また恥ずかしいものが飛び出しました。胡蝶さんはそれにかまわず難しい顔をしています。
「この入れ墨のような数字、射精するたびに数が減っているわね。関連があるのかしら。服を着ていいわよ。ああ、体はそこの濡れ手ぬぐいでぬぐってちょうだい」
採血の準備をしながら胡蝶さんは僕へそう言いました。僕は股間のうずきがおさまらず、もっと射精したくて兄さんを潤んだ目で見上げます。
「無一郎、発情するのはわかるが我慢しろ。普段の拷問の訓練を思い出せ」
「う、うん。がんばる。平気」
「……今なにか不穏なことを言ってなかったかしら?」
「気のせいです」
僕は荒い息のまま自分で自分の始末をし、服を着込みました。だって兄さんに触れられるととめどめなく出してしまうから。検査の結果が出るのが半日後。それまで蝶屋敷の個室で待っているよう言われました。ベッドへ横になり、ひたすらこみあげてくる性欲と戦います。熱い。体中が火にあぶられているみたいです。頭はすでに満足することしか考えていません。
「兄さん、手を、にぎっていて」
「ああ」
どうにかそう言うと、兄さんは僕の手を包みこんでくれました。
それにしてもつらいです。男の人っていつもこんな欲望にさらされているんでしょうか。僕も血の高ぶりを感じることはあるけれど、兄さんが毎晩やさしくまぐわってくれるからここまでひどい思いをしたことはありません。
だけど昨晩は異常でした。鬼を倒すなりこのペニスが生えてきて、最初は子どもくらいの大きさでしかなかったのに、耐えきれず帰り道で人目を忍んで自慰をするとみるみるうちに膨れ上がってしまいました。霞屋敷についたのはその後です。兄さんは僕の状況を飲みこんだらしく、徹夜で看病という名の愛撫をしてくれました。
にもかかわらず高ぶりはひどくなるばかりです。視界がひずんできました。呼吸が苦しいです。頭痛も吐き気もセットです。どうかすると兄さんの手を求めてしまいそうで僕は逃げようと暴れる理性へかみついていました。
「がんばれ無一郎、検査結果が出るまでのしんぼうだ」
めずらしく兄さんが僕を励ましてくれました。兄さんが僕を心配してくれている。それだけで僕の心はすこしやすらぎました。ああ兄さん、僕のたったひとりのかけがえのない人。兄さんがそばにいてくれる。心配してくれている。だとしたら僕はこの脳天を焼くような性欲に負けるわけにはいきません。兄さんの期待を裏切る真似だけはしたくないから。僕は奥歯を噛み、低く呼吸をして高ぶりに耐えつづけました。「大変よ! 無一郎が鬼になりかけてるわ!」
胡蝶さんの検査結果に大きく反応したのは兄さんで、僕はなかば気が遠くなりながら、ああ、そうなのか、とだけ思っていました。
「鬼はまだ生きているの。本体が液状になり無一郎の体内へ宿っているわ。この鬼はそうやって体を乗り換えてきたみたいね。だけど幸か不幸か術を解く方法がある」
「それは?」
兄さんが厳しい声で問いました。
「あと十時間以内に最低でもペニスに書かれた回数分は射精をすること」
「何回?」
「百回は」
「ひゃく!?」
兄さんが目をむいて驚きました。なんだろう、なにか、すごいことを聞いた気がします。胡蝶さんは頭を抱えながら続けました。
「常人なら死んでしまうから無理な方法だけれど、柱の無一郎ならあるいは」
「とにかく射精させて、体内の鬼の本体を出しきらないとダメなわけですね」
「そういうこと。無一郎、がんばってとしか言えないけれど、あなたは最年少で柱になってみせた。その体力を信じてるわ。それと有一郎、ちょっと来てちょうだい。そのあいだ無一郎は自慰をしてすこしでも感度を高めておくこと」
「ふぁい……」
僕はどうにか返事をしました。それを聞くと胡蝶さんはすぐに兄さんを連れて出ていきました。やっと触りたかったところへ触れる。僕はよだれをたらしながらさっそく前をくつろげ、ペニスへ触れました。そのまま欲望の赴くままにすりあげます。
なのにひとりじゃぜんぜんなんです。きもちいいのに、イキそうでイケないんです。いっぽうペニスはむくむくと大きくなっていきます。すでに人間の大きさではありません。僕の胸の谷間にまで到達してしまいました。
「はあ……はあ……」
自分で自分のものをパイズリするはめになるなんて夢にも思っていませんでした。でも何事も経験です。それが兄さんとの拷問の訓練で得た僕の知見です。僕は服を脱ぎちらし、汗まみれの胸の谷間へ亀頭を導きました。あ、気持ちいい。汗が香油がわりになって気持ちいいです。もちもちの胸にはさんでツンと充血した乳首を巻き込むように動かします。むくり。またペニスが大きくなりました。もう僕の口元までやってきています。
僕は意を決してペニスをくわえ込みました。じゅる、と音が立ちます。ほんのり苦いのは先走りでしょうか。僕はそれを夢中になって舐め回しました。なので兄さんが戻ってきたことにも気づきませんでした。
「……おいおい大惨事じゃないか」
兄さんは心底呆れたようにつぶやきました。そして扉を閉めると、寝台の脇の棚へたらいをおきました。
「自慰をして感度を上げろとは言われたが、馬並みになるまで育てろとは言われてないはずだぞ、無一郎」
「ん、んぶう、んぐ、にいひゃん」
「いったんやめろ」
氷のような声がムチのようにしなり、僕はおすわりをする犬のように、反射的に自慰をやめました。
「にしても、すごいことになったな、無一郎、今正気か?」
「ん、あ、早く、兄さん……」
「わかってる。準備を終わらせたら泣いてもやめないからな」
準備? なんの準備でしょう。兄さんは、たらいへ香油とお湯を注いでいきます。そこへガーゼを漬けこみました。とろっとした香油に染まったガーゼで僕の亀頭を包みます。
「んああああん!」
その感触だけで僕は決壊しました。どっと白い液体がこぼれます。兄さんはガーゼの両端を持ってしこしこと兜を刺激していきます。温かい感触が僕のペニスに絡みつき、ぬるついた香油がそれを後押しします。兄さんのお口でされているような快感が僕の体へ走りました。
「あんっ! あっ! あああっ! ふああん!」
「いまので五回はイッたか。無一郎、調子はどうだ?」
「もっと、もっと兄さん、もっとお!」
「よし、ローションガーゼの効果は上々だな。あとはこっちを試してみるか」
兄さんは金属でできた細長いピンをとりだしました。波打っていて、先っぽに小さな球がついています。
「兄さん、それは?」
「尿道プラグというらしい。胡蝶さんの推論によれば我慢してイカせたほうが数字が減りやすいはずだと」
「え? 待って、待って、それって、ねえ」
「言ったぞ、泣いてもやめないと」
兄さんはあの冷たい表情のまま僕のペニスをつかみました。たらいにつけたプラグの先を、僕のおしっこ穴へゆっくりと挿していきます。
「ん、んくぅ、ふ……っ」
「はじめてなのに根本まで入ったな。まあこれだけ膨れ上がってりゃ尿道も太いか」
そう言うと兄さんはまたガーゼをさきっぽへかぶせてきました。
「兄さん、そんなすりすりされても、出せない! 出せないよ!」
ひとりでしている時の数倍の射精感。たまらなく気持ちいいのにプラグが邪魔をして出すことができません。まるで地獄の責め苦です。
「にいさ、にいひゃん、はずしておねがいおねがい……」
「おいこれが訓練なら白旗ものだぞ。耐えてみせろ」
「耐えろったって、これ、ムリぃ!」
僕は悲鳴を上げました。ペニスへの愛撫がこんなにいいなんて知りませんでした。男である兄さんは的確に僕の気持ちいいところをついてきます。
「あ、あ、あああ、あ……」
心地よさに意識が飛びそうです。
「よし、そろそろ出すからな、楽になれるぞ無一郎」
兄さんはガーゼを取り払い、プラグをずこずこと激しく上下に動かします。そんなことをされたらただでさえ高まっている射精欲がさらに激しくなります。出したい、出したい、兄さんに思いっきりザー汁ぶっかけたい。僕のものだってマーキングしちゃいたい。よこしまな欲望がこみ上げてくるのを堪えられません。
「兄さん、ねえ兄さん」
「なんだ」
「兄さんにかけていい? ねえねえ、かけていい? すっごく気持ちいいと思うんだ。いつもかけられてばかりだから僕も兄さんにかけたい!」
「……ったく、仕方ないな。こんな状況じゃなかったら許さないぞ」
ずるり、兄さんが一気にプラグを引っこ抜きました。
「おああああああっ!!」
視界が灼けて何も見えません。ひどすぎる快感は苦痛でしかありませんでした。全身の体液が精子に変わって飛び出ていく、そんな感触。たしかに干からびてしまいそうです。僕はのけぞったまま兄さんがどこにいるかもわからず、からだへ襲い来る強烈な衝動そのままに震えるだけでした。兄さん、兄さんどこ、ねえどこ? 兄さん兄さん兄さん。急に寂しさが押し寄せてきて、僕は見えない視界の中、兄さんを探します。
ぴちゃ。
真っ白だった視界がすこしずつ色を取り戻していきます。同時に見えたのは、僕のものへ口づけている兄さんでした。
「残り五十六回、一気に減ったな」
兄さんは顔も頭も服も僕のはなった精にまみれています。よく見れば床までべとべとに汚れています。
「ったく、臭えな。無一郎、帰ったら覚えておけよ」
そういいながらも兄さんは甘い愛撫を僕のペニスへ施していきます。
「んあっ」
びゅるっ。こりずにあふれでた精液が兄さんの顔へかかりました。もはや僕も兄さんもザー汁でぐちゃぐちゃです。白い汚濁にまみれたまま、僕たちは深いキスをしました。一息に出したせいか、ペニスもずいぶんと小さくなっています。だけどまだまだ回数は残っています。何度も何度も兄さんへぶちまけて、やっと最初の子どもサイズになってきた頃、問題が起こりました。
ペニスに刻まれた入れ墨の数は「壱」なのに、弾切れなのかどれほど愛撫しても射精できません。兄さんのものをしゃぶらせてもらいながらプラグとガーゼをどれだけ併用してもイケません。そのうち僕の体力が尽きてきました。もう指一本動かすのもしんどいです。兄さんが残り時間を気にしはじめました。このままだと僕は鬼になってしまいます。
兄さんが最後の賭けだとばかりに僕のものをくわえました。やっぱりお口でされるの気持ちいいです。兄さんのお口だからだと思います。大好きな兄さんが僕に口淫をしてくれている。それだけで頭の芯がぼうっとしてからだが熱くなっていきます。
「兄さん、兄さん!」
導かれるまま、僕は快楽の渦に飲み込まれていきます。ふと腰に違和感が走りました。
「ん、ん? 兄ひゃん、だめ、おしっこでちゃう!」
「いいからだせ!」
強く言われて僕はぎゅっと目をつぶりました。兄さんが言うことは絶対です。ごめんなさい、ごめん、ごめん兄さん、気持ちいい、出ちゃう、あ、出ちゃ……!
「……んあああ……!」
僕はもう出るにまかせたまま、からだを揺すりました。とたんに股間の違和感がすべて消えました。兄さんが口の中のものを床へ吐き出します。なにか黒いものが見えましたが、兄さんが踏み潰してしまいました。
「はあ、はあ、ごめんなさい兄さん、粗相してしまって」
「小便じゃない、潮だ。底にひそんでたんだな」
兄さんは踏み潰した鬼だったものを眺めました。それは白濁の海へ溶けるように消えていきました。「風呂。あとこの服はもう捨てる」
兄さんは疲れているのか不機嫌そうに胡蝶さんへそう伝えました。
いくら血鬼術を破るためとは言え、蝶屋敷のお部屋を白濁まみれにしてしまった僕は、恥ずかしくてまともに胡蝶さんを見れません。元の女の身になった僕は、いまさらながらことの重大さに気づいていました。僕が鬼になっていたら、きっと兄さんをまっさきに食い殺していたでしょう。想像するだにおそろしいことでした。その御礼を言わなくてはならないのですが……やっぱり恥ずかしいです。
僕はごにょごにょとお礼を口の中で転がしながら胡蝶さんへ頭を下げました。
「これは治療だから気にしなくていいのよ。お風呂と着替えを用意してあるから使ってね。着替えは返さなくて大丈夫だから」
うう、気遣いが身にしみます。
僕と兄さんは風呂へ入り、身ぎれいにしたあとお互いの髪を乾かし、霞屋敷まで歩いて帰りました。
「兄さん、ありがとう。兄さんの協力がなかったら、僕あぶなかったかも」
「俺は隠だからこのくらいしかできない」
兄さんの顔に影がさしました。
「そんなことない。兄さんのおかげで僕はいまこうしていられる」
「ん、そうか」
ほんのりと笑みを浮かべた兄さんがきれいで、胸が高鳴りました。
「今夜はどうする?」
「まだヤるのかよ」
兄さんが喉を鳴らして笑います。僕も同じように笑いました。風がこころよいです。僕たちはいつしか手を絡めあって歩いていました。