「なあケッコンしよーよ、普賢姉」
※ふーたんと望が義姉弟という気の狂った設定
※ぬるーい現代パラレル ぬるーい近親モノ ひたすらぬるーく15禁
※「普賢姉」は「ふげんねえ」と読んでください
「いってらっしゃーい」
僕は手を振りながら、タクシーを見送った。
隣に居る弟、望ちゃんが商店街の福引であてた2泊3日の観光旅行は、骨休め兼日ごろの感謝の名目で父さんと母さんに捧げられた。いいなあ、僕も行きたかったかも。
坂を下りていく黄色いタクシー、かげろうと一緒に揺れる。見送る先には海が見え、空にはもこもこ入道雲。夏の光が町中をきらめかせてる。
「んふふ、ふーげーんーねーえー」
「わ!」
タクシーが見えなくなると、望ちゃんが抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと。はなれて!」
ぎゅうぎゅう抱きしめてくる望ちゃんを押しやりながら、僕は誰かに見られたらどうするのって小声で叱った。一昨日くらいから望ちゃんはやたらと機嫌がいい。
「いいじゃん、こんな暑い日はみんなクーラーきかせてひきこもってるって」
「だとしてもダメだよ!」
「俺らも冷えた部屋でアイス食ってごろにゃんしようよー」
「望ちゃんっ!」
「そういやアイス切れてたや。買いにいこ、普賢姉」
望ちゃんは体を離すとジーパンのポケットをぱんと叩いて僕の手をつかんだ。いつもながら変わり身が早すぎる。
「手つないで買い物ってさ、新婚さんみたいだな」
「やめてよ、いい年して恥ずかしい」
「恥ずかしがることないだろ。俺と普賢姉は将来を誓い合った仲なのに」
「ぶつよ?」
「なあケッコンしよーよ、普賢姉」
「ほんとにぶつよ?」
おお怖!なんて笑いながら、でも望ちゃんは手を離さない。もうって口をとがらせて、僕は望ちゃんについていく。日差しがきらきら。暑いなあ。
ケッコンしよ、普賢姉。
それが望ちゃんの口癖。
10年前、僕の両親が望ちゃんをひきとった時からの。
どうして本家筋の望ちゃんが分家のはしっこの僕のところにひきとられたのかというと、たまたま家が近くて家族ぐるみのつきあいをしていたとか、望ちゃんが通ってる学校が名門私立で転校しにくかったとか、僕の父さんが若い頃望ちゃんのお父さんにお世話になったとか、毎月養育費の名目で本家からけっこうなお手当てをいただいてるとか。まあいろいろ大人の事情はあったんだけど、いちばんの理由はきっと望ちゃんが僕から離れなかったから。
不慮の事故で両親と兄弟をいっぺんに亡くしてしまった望ちゃんは、食事ものどをとおらなくて、一時期は本当に飢え死にしてしまいそうなほどやせ細っていた。僕はそんな望ちゃんが心配で学校から帰るとすぐに彼のところに飛んでいった。望ちゃんも僕にべったりで、家に戻る時間になっても抱きついて離れなくて。僕も帰りたくないって泣いて駄々をこねて。
事故から半年がたつ頃には、望ちゃんは正式に僕の家にひきとられることになった。そして、望ちゃんは僕の弟になったんだ。
弟になったんだけど……。
「やっぱりアイスはバニラだよな」
買い物から帰ると、望ちゃんはリビングのソファに陣取りバニラバーの包装を破った。うまそうにかじりつく。僕はクーラーのスイッチを入れて隣に座った。
「食べないの、普賢姉」
「うん、お昼食べたばかりだし」
「一口いる?」
うなづいたとたんあごを引き寄せられる。唇にやわらかくひんやりした感触。口の中に半分とろけたバニラが舌と一緒に入ってくる。
「ん……!」
冷たかったのは最初の一瞬だけで、すぐに体温を感じた。甘い舌が僕の口内をまさぐる。逃げようと身を引こうにも、首にまわされた腕ががっちりと僕を抱えこんで身動きが取れない。
「……う……」
もがく僕を抱き寄せて、さらに深くなる口づけ。着衣越しにも、望ちゃんの肌が熱を持ってるのがわかる。ソファの背もたれに押しつけられて息苦しさが増していく。甘ったるいバニラが唾液といっしょにからみついて、飲みこみきれない。
「はあ……っ」
せきこみそうになった時、やっと開放された。唇の間にねばついた糸がひく。
「お、いいながめ」
至近距離からにやにやしながら望ちゃんが僕を見つめてくる。言われて僕は、自分の唇の端からこぼれた唾液が白っぽいことに気づく。頬がかっと熱くなった。
「望ちゃんのバカ!スケベ!」
「だって普賢姉があんまりかわいいからー」
望ちゃんは笑いながら舌の先でこぼれた唾液をぬぐってくれた。弟になったんだけど……。
1年前に一線を越えて以来、僕らは体だけ夫婦になった。
ケッコンしよって子どものころからうんざりするくらい聞かされて、背も伸びて制服も変わって、そろそろふたりとも恋人ができてもおかしくない年頃だって言うのに。あんまりケッコンしようってうるさいから叱りつけたら、押し倒された。
いつもにこにこしてる望ちゃんの本気の目が怖くて、何も言えないまま流されて気がつくとすっかり僕らはできあがっちゃってた。もともと望ちゃんはやたらとベタベタしてくるから、幸いにも誰にも気づかれずこの関係を続けて来れたけれど、やっぱりちょっと苦いものを感じる。
「普賢姉……」
皿の上にバニラバーを置いて、望ちゃんがまた近づいてきた。あわてて両手で彼を押しとどめる。
「ダメ!こんな昼間っから何考えてるの」
「エロイこと」
「キミの頭はそういうことでいっぱいなの?」
「ちょっと違うな。普賢姉のエロイことでいっぱいだ!」
「真顔で言わないでよ。とにかくダメ、続きしたらごはん作ってあげないからね?」
「そりゃねえよ普賢姉。俺もう我慢できないのに」
望ちゃんは唇をとがらせたけれど、不意にずるそうに笑った。
「わかった、あきらめる。代わりに手貸してよ」
「手?……あっ!」
僕がいぶかしげに右手を差し出すと、望ちゃんはその手をつかんでジーパンの間に導いた。固い布地の下で存在を主張してるそれに触れさせる。
「ダメだってば!」
声を荒げたら、手と口と中とどれがいい?ってささやかれた。僕がとまどっている間に望ちゃんはジッパーを下ろして前をくつろげた。あらわになったそれを直視できず顔をそらす。くすくす笑って、望ちゃんは僕の手をそこに導いた。立ち上がったそれを握りこまされ、僕の体温もじんわりあがっていく。
僕の手を包みこんで、望ちゃんは動かし始めた。赤黒いそこを重なった手が上下する。熱い。望ちゃんのそれと、骨ばった望ちゃんの手と、両方に挟まれて僕の手が溶けていきそう。視界のすみに先端からこぼれそうな先走りが見えた。
「ん、気持ちいいよ普賢姉……」
もう片方の腕で僕を抱きしめて、望ちゃんが切なげに眉を寄せる。耳元からそそぎこまれる小さなうめきや浅い吐息がたまらない。気がつけば僕は自分の意思で望ちゃんのそれをしごきあげていた。
「普賢姉、飲んで。飲んで、お願い」
「……いいよ」
体勢を変えて僕はそこに口を寄せる。こんなに硬くして……かわいい。
「う、く、出すよ、全部飲んで……っ!」
先端を強く吸うと望ちゃんが背をそらせた。二週間ぶりに味わう熱はねっとりと濃い。びくびくふるえるそれを両手で支えてあふれてくるものを一滴残らず飲みこんだ。満足して萎えたのを根元からきつくしごいて、奥に残ってたのも全部。喉にからむ感触がぞくぞくきた。ふたり同時に息を吐く。
「悪い子」
やわらかく立ち上がり始めたそれを手の中でもてあそんで、先端を舐めあげる。
「あきらめるから手だけって言ったのに口まで使わせるなんて、もうキスしてあげない」
薄く笑う僕を抱き上げて、望ちゃんは甘えた声でごめんと謝った。
「晩飯なんてカップ麺でいいけど、それだけは勘弁してくれよ。普賢姉とキスできないなら死んだほうがマシだ」
望ちゃんは真剣な瞳でそう言うと僕に頬を寄せた。
「キスしていい?ダメ?」
望ちゃんの大きな手が僕の腰を撫であげる。わき腹から胸にまで進む手が僕の胸の突端を探しあてた。
「ダメ?」
きつくつまみあげられて高い声をあげた。もう片方の手が僕のふとももをさぐり、服を払い落としながら熱を持った敏感な部分に近づいていく。
「ふ、あん……」
「ねえ、ダメ?」
指の間でころがすように愛撫されて、ただでさえ熱くなっていた体はたやすく反応した。つま先がぴんと伸びてふるえる。
「ふふ……そんなにお姉ちゃんと、キスしたいの?……あぅ!」
ふとももを撫でていた手が中心にたどりついた。くちゅりと濡れた音が聞こえて僕の体が跳ね上がる。
「好きだよ普賢姉。キスできないなら死んだほうがマシ」
間近からのぞきこんでくる情熱に濡れた本気の目。今は僕だけが映っている。それだけで体の芯がしびれる。
「……いいよ、許してあげる。んっ!」
噛みつくように口づけられた。同時に入り口をさぐっていた指が僕の中に押し入る。上と下、両方からきつく中をかきまわされて体全部火であぶったロウのようにぐちゃぐちゃになりそう。からみついてくる望ちゃんに応えるのに必死で苦しい。息ができない。
「ぷはっ」
唐突に解放される。息苦しさは消えたのになんでだろう、さみしい。唇の間つながった銀色の糸が切れないうちに離れていった望ちゃんを追いかけて重なる。
舌先で唇を愛撫されて陶然とした僕を、望ちゃんは優しくソファに横たえた。そのまま体をずらして僕の両足を開かせる。恥ずかしさがよみがえって拒もうとしたけれど、体はもうすっかりとろけてしまって力が入らない。
「俺の飲んでくれたからさ、俺も普賢姉の口でするよ。いいよな?」
答えを聞かずに、望ちゃんは僕の足の間へ顔をうずめた。ちゅっと音を立てて吸いつく。閉じたひだを舌で割ってあふれてくるのをぴちゃぴちゃなめる。動きと音が僕の腰からあふれて背筋を這い登ってくる。
「あ、あ、ぅ、や!待って、お願い待って……!」
首を振る僕に望ちゃんは動きを止めた。僕は浅い呼気に軽くむせたけれど、なんとか呼吸を整えて視線を合わせる。
「僕も、望ちゃんの、もう一度してあげたい」
望ちゃんはうれしそうに笑って体勢を変えて僕の上に乗っかってきた。
「これでいい?」
「ん……」
望ちゃんのはもう既にはりつめてはじめていた。僕が口を開いてそれに吸いつくと、半分もくわえないうちに僕ののどに届きそうになる。まだすこしやわらかい感触に片手を添えて先っぽを飴みたいにしゃぶったらくすくす笑われた。
「普賢姉、かわいい」
恥ずかしくて朱に染まった肌をさらしながらも、僕は口での愛撫をやめなかった。見られてる感覚に奥からとろりとあふれだしてくのがわかる。望ちゃんが頭を下げて、僕への愛撫を再開する。
「う、むっ……んん!」
とたんに体に電流が走った。僕の中に舌をねじ込んでかきだすようにうごめかせる。じわじわ広がる快感にくわえて吸いついたまま飲みこむ音が耳までもとろかしていく。
「く……ふ、んぅ、う……はあ、あ……!」
くわえていようとしたけれど、あまりの快楽に僕はすぐに音をあげた。望ちゃんのそれを手で握ったまま、僕はあられもない声をあげ続ける。硬くなったそれが僕の顔に押しつけられて、雄の匂いのする先走りが頬をぬるりと濡らした。
舌で僕の中を味わいながら、望ちゃんは手を近づけ指先で一番敏感な部分をつまみあげた。指の腹で撫で上げたかと思うと、ぐりぐりと押しつぶすようにいじくる。
「あ、やぁっ!それダメ、ダメ……うぁ、あああ!」
絶頂が来た。僕は夢中で望ちゃんの腰にしがみつく。頭の中が真っ白だ。全身がつっぱって、ついでがくりと力が抜ける。
「あ……は……はぁ……」
余韻にふるえる僕を、望ちゃんがやわらかく抱きしめた。かわいいとくりかえしながらふとももに吸いつく。唇が通ったあとには赤い印が残った。
「昼間から弟とセックスしてこんなに乱れて、やらしいな普賢姉は」
「ぼ、望ちゃんだって、同じじゃない……」
唇をとがらせた僕を見つめて、中に入っていい?ってささやかれる。
それを聞いて僕は望ちゃんを押しのけて体を起こす。くらくらした。まっすぐ起きてられなくて、彼の胸にしなだれかかる。
「おい大丈夫かよ、普賢姉」
「ん、だいじょうぶ……ここからはお姉ちゃんが……してあげる」
ソファに座る望ちゃんの上にのっかって、僕は立ちあがっていたそれにまたがった。望ちゃんは心配そうに僕の腰に手を添えてくれる。
「無理しなくていいからな?」
「はあ、平気だよ……。お姉ちゃんに、まかせて……ね?」
微笑んで僕は、ゆっくりと中に飲みこんでいく。慣らされたけれどやっぱり最初はひっかかる感じがするから、先端を埋めこんで息をつくと、僕は思い切って腰を落とした。
「……うああっ!」
おなかの奥までえぐられる感覚。敏感になっていた僕の体は簡単に達した。びくびくふるえてしどけなく声をあげて、それでも体内に巣くった波はなかなか去らない。くりかえし打ち寄せるそのたびに新たな感覚を引き起こす。快楽に溺れた無防備な表情を見上げてくる望ちゃんの視線が体にからんで熱い。
「あ、はあ、は……こんな……ん、うぅ!」
腰を強くつかまれて僕は身をよじった。つながったそこがぐちゃりと音をたてる。そのままソファの上に押し倒された。腰を抱き上げて、望ちゃんが僕を呼ぶ。
「ほら見て普賢姉……。俺と普賢姉がつながってるとこ、ちゃんと見えてる?」
「……あ……や……」
窓から差し込む夏の光に、珊瑚色に染まった割れ目がぬらぬらと光ってる。望ちゃんのをおいしそうに根元までくわえこんで。
ことさらにゆっくりと抜き差しされる。中にあふれた僕のが望ちゃんの赤黒いそれに絡みついて、動くたびにねばついた水音がする。
見せつけられて、恥ずかしさに身を焼かれる心もち。なのに目はつながった場所に釘付けでどうしてもそらせない。粘液を混ぜ合わせるように、奥に突き立てられてかきまわされてく。
「中に出していい?」
うながされて、僕はこくこくとうなづいた。欲しいよ。僕もキミが。体の中いっぱいにキミの欲望を浴びたい。望ちゃんは僕の腰を抱えこむと、性急に打ちつけだした。
「普賢姉、かわいいよ。かわいい。俺の普賢姉……」
望ちゃんは濡れた声でくりかえし僕の名を呼んだ。激しい行為に声も体も止まらない。際限なく与えられる感覚になにもかもすべて焼き切れていく。
「やめっ、ああ、やめて!や、あ、またイく、あ!」
「いいよ、イっちゃえ。俺のでイっちゃえよ……!」
どくんと、おなかの中ではじける感覚。あふれだす熱さに高みへ押し上げられる。もうダメ、何も考えられない。
「望ちゃ、あ…………」
声にならない声をあげて、僕は頂点へ駆け上る。望ちゃんが耳元で、最高、ってつぶやいた。
「大好き、普賢姉」
汗ばんだ体をぎゅっと抱きしめられたから、僕も抱きしめ返した。ほおずりしてくる彼の頭を撫でる。高1にもなって、まだ僕の後をついてまわる弟。手をつなぐとうれしそうに笑う。
僕は知ってる。望ちゃんはまだほんとの恋を知らないんだって。
望ちゃんは僕よりふたつ年下で、背も僕よりちょっと低くて、たれ目がちの両の瞳は大きくてくりくりしてておりこうさんな犬みたい。心の傷のせいか、中身も幼いように思う。
助けを求めてすがりついたあの執着を、キミは恋と勘違いしてるだけなんだ。
結婚しようなんて、そんなに簡単に言うものじゃないよ。いつか出会うキミの大事な人のためにとっておくものだよ。大切にしてあげてね。僕よりずっと。
「好きだよ普賢姉。ケッコンしよ」
ああ、ほら。また言った。ダメだよ。泣きたくなるから。
「……悪い子」
僕は小さく笑って、望ちゃんの頬をつまんだ。
世界一大切な僕の弟。いつか見つかって叱られるそのときは、僕にぜんぶ押しつけて逃げてね。+++++
どうも普賢姉は俺を信用してない節がある。
ぐったりした白い体を拭いてやりながら、毎度のことながら俺はそう思った。してる間はノリノリのくせに、終わったらなんとなく落ちこんで見えるのはきっと気のせいじゃない。そんなに浅いつきあいはしてないつもりだ。
足の間に手を伸ばすとさすがに体を起こされた。恥ずかしそうににらんでくる。
俺ははいはいって言って手にした蒸したタオルを渡す。ちゃんとレンジでチンしたあとに広げて振ってぬるくしたやつ。火傷なんかさせちゃかわいそうだから。
「……むこう向いてて」
「はいはい」
鼻歌歌いながら窓を向いて、俺は普賢姉に寄りかかる。細いけれど肌はなめらかでやわっこい。すべすべした感触を背中で楽しみながら、俺は寝たふりをする。普賢姉はぶつぶつ言ってたけれど、押しのけたりはしなかった。
ああもう、かわいいなあ。なんだかんだ言って俺の好きにさせてくれる。叱るのもなだめるのも、すねるのも怒るのも、よがるのも甘えるのも上手。心も体もまとめて満足させてくれる。絶対普賢姉は俺のために生まれたと言いきれる。暗闇から俺を救い上げてくれたあの時から、普賢姉は俺のお姫様だ。
なのに本人、体には触らせてくれても、心には触らせてくれない。にっこり笑ってさよならする気のイバラ姫。自分のことを俺に恋人とやらが出来るまでのつなぎだと思いこんでる。いつかその日が来たら手を振って俺を送り出して、そしてイバラの城の中ひとりで泣くんだ。
そんなことさせない。
一昨日本家から連絡が来て、例の件は確約が取れた。18になったら、自分の意思で養子縁組できる。本家のじいさんの子になれば、晴れて普賢姉と俺は赤の他人だ。おじさんとおばさん、じゃなかった父さんと母さんの了承は得ている。
まだ結婚する気だってのは伏せてるけど、じっくり説得していく予定。母さんはOKくれそうだけど、父さんは普賢姉を溺愛してるからちょっと時間かかりそうだ。まあ、必ず最後に愛は勝たせるから。
昔話の王子様連中は、イバラの城に剣一本で挑んで返り討ちにされた。俺はそんなのごめんだから除草剤をぶっかけるつもり。目指せ、悪の帝王。
耳のとなりで普賢姉があくびした。身動きして、床に脱ぎ落とした服に手を伸ばす。
「なんで服着るの?誰もいないのに」
普賢姉はぼっと顔を赤くして、でも手にとった服を椅子の背にかけた。さっきのタオルで前を隠して俺の横に座りなおす。濡れタオルだからあれこれ透けててぐっとくる眺めだなんてことは、もちろん俺は悪の帝王志望なので教えてやらない。
「もう、望ちゃんはほんとに悪い子なんだから」
頬をふくらませて、普賢姉がこっちを見てる。
見くびってるといいよ。
俺は嘘つきで気まぐれで信用ならないかもしれないけど、日和ったりはしない。外堀を埋めて逃げ場をふさいだら、ちゃんと俺と向き合ってくれよな。こっちのカードはそろいつつある、普賢姉はどう?
世界一いとしい俺の普賢姉。くせの強い短い髪も小さなピンクの唇もどこか眠たげな瞳も、華奢な体も白い肌も、臆病で強がりな魂も、まるごと俺のものにしてみせる。硬い殻に覆われた心のいちばん柔らかいところにかぶりついてやる。
見てろよ2年後。
それまではもう少し、スケベでバカな弟のふり。
■ノヒト ... 2007/06/21(木)18:35 [編集・削除]
なんだこれは、自分しか萌えないぞ。
しかし自分が萌える。それで充分だ。