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SS~じょおうさま若葉マーク

 
「だからさあ、どうして……僕が女王様をやらなきゃいけないのさ」
 
 ※シモネタ バカッポーゥ 12禁くらい
 ※ふーたん女の子注意
 
 
続き
 
 

「……なんで?」
 本日3度目の問いを普賢はくりかえした。
「ストレス解消だと言っておる」
 本日3度目の答えを太公望はくりかえした。
 普賢は眉を寄せてこめかみを押さえる。
 3度。相互理解の普賢的ボーダーライン。
 あまねく賢いとまで名乗る身には同じ問いを4回くりかえすのは屈辱でしかないのだけれど、どうしても目の前で茶をすすりながら桃をかじる彼が示した原因と結果が結びつかない。普賢は奥歯を食いしばって点と点をつなげようとしたが、自他とともに認める優秀な脳みそは線分を引けないままだ。
 意を決して、普賢はもう一度同じ問いをくりかえした。
「だからさあ、どうして……僕が女王様をやらなきゃいけないのさ」
 目の前の上司兼総司令兼恋人殿はうむうむとうなづいた。
 封神計画の任を受けた太公望が地上に降りて数年。彼の指揮下で周は着々と力を蓄えつつあった。とはいえまだ戦火は遠く、のんびりしたものだ。
「おぬしが受け入れがたいのもわからんではないぞ。何せ馴染みの薄い遊びだからのう」
 太公望は遊びの部分を特にゆっくりと声にした。
「知ってのとおりわしはなかなか休暇が取れぬ。今日ここに来れたのも、元始天尊さまへの定例報告をせねばならんかったからだ」
「わかってるよ、そんなこと」
 普賢はほおをぷっとふくらませて差し出された湯飲みに茶をついだ。
 周の軍師となった太公望に、本当の意味での休日などないに等しい。忙しいスケジュールの合間を縫って白鶴洞までたずねて来てくれたことを、当の普賢がいちばんよく知っている。
「休暇中にしっかりと心の洗濯をしておかねば、仕事にも響いてくるものだ。おぬしにも経験があるだろう。
 よい休日を終えてはつらつとした思いで出勤するのと、なんとなく日が暮れてどんよりとした気持ちで仕事に向かうのではスタート時点でやる気が違ってくる」
「異論はないけれど……」
「そこでだ」
 太公望がぐいと身を乗り出した。黒曜石のようにきらめく大きな瞳にうっかり胸が高鳴る。
「わしの充実した休暇、ひいては封神計画のためには、愛しいおぬしの協力が不可欠なのだ」
 懸命に目をそらそうとするけれど、手を握られてしまっては逃げ場がない。むっくりした手袋越しに伝わってくる彼の体温に普賢は落ち着かない心持になる。
「も、もちろんキミのためなら僕はなんだってしてあげたいよ?でもさ、どうしてそこで女王様を希望されなきゃならないの?」
「そこが大事なのだ普賢」
 同じソファに座る太公望はさりげなく身を寄せてくる。ただでさえ顔が近いのに吐息が頬にかかってどうにも視線があちらこちらへ。
「休暇と言うからにはなるほど、体を休めるのがいちばんかも知れぬな。しかしわしは頭脳労働担当であるからして、休ませたいのはむしろ脳のほうだ。
 しかし体を休ませるのと脳を休ませるのは勝手が違う。前者はただ静養しておればよいが、後者は一筋縄ではいかん。何せ軍師であるわしは、いついかなる時も不測の事態に備えておかねばならぬからのう」
 太公望が捕まえたままの普賢の手に頬を寄せる。ぬくもりを楽しむように目を細めて、手のひらにキスをした。普賢の肩がピクリとふるえる。
「の、脳を休ませたいなら睡眠を取るのがいいよ」
「なんとも模範的だが的外れなおぬしらしい回答だな、普賢。貴重な休日、たまにしか会えぬ恋人を目の前に惰眠をむさぼれと言うのか」
「そういうつもりじゃ、あっ、ないけど……」
「睡眠は外部情報を遮断するという点で確かに有効ではあるが、時間効率が悪い。何よりぐーすか寝ていてはおぬしの顔が見れんではないか。わしはおぬしと同じ時間を共有したいのだぞ普賢」
「だからなんで結論がえすえむで女王様なのかって聞いてるの!」 
 うれしい言葉に、しかし流されてなるものかと普賢は唇を寄せてきた太公望の頬をむにっとつまむ。童顔軍師のふくふくほっぺは多少ひっぱったくらいでは痛くも痒くもないらしい。
 SM。
 着てるほうがいかがわしいボンテージに身を固めた女王様が裸の男を鞭でもってぴしぱしとかいうやつ。その程度の知識は普賢だって持っている。
 一般にサド&マゾの略称とされるがスレイブ&マスターが正式であるとか、どっちかというと女王様側がサービスを提供してるのだとか、そんなトリビアはこの際どうでもいい。何故その鞭もってぴしぱしを自分が望まれているのか。
 確かに先日80歳を迎えた思い人は無駄に好奇心旺盛で、今までだってしばられたり野外だったりと際どいお遊びに付き合わされたことは多々あるけれど、いやまさかまさか自分を鞭打ってくれなどと言い出すとは夢にも思わず。どちらかと言えば鞭でもってぴしぱしする側だと思っていたので余計。宝貝だって打神『鞭』だし。
 恋人宣言から60年超、いまだ予想外の顔を見せる彼に、太公望……底知れぬ男よと眉間にシリアスなたてじわを刻んでみたり。
「結論から言うとだな、非日常性なのだ」
「は?」
「脳を整理するには、日常の雑事を忘れてしまうのがよい。あれやこれやでごたごたしてしまった部屋の蔵出しをするのだ。そうすればすっきりするだろう?」
「まあ、そうだね」
「日常に倦んだ脳を休めるためには、日常とは違った世界に飛び込むのが最適だ。
 旅に出る、海や山に出かける、乗り物で遠出する、どれも休暇を代表する行動だが、いつもの風景から離れることが目的ではないか。
 だが残念ながらわしにそんな時間的余裕はない。ふたりでゆっくり湯治場巡りもしてみたいが目下日帰り旅行がせいぜいだ。そんなんでは日常の枠を離れることは出来まい」
 もっともらしくうなづく太公望を普賢はうさんくさげにながめた。話が飛びすぎて全容がつかめない。
「つまり、どういうこと?」
 結論を求めると我が意を得たりとばかりに笑われた。あいていた手もひょいととらえられ、指先に口づけられる。
「何も遠出せずとも日常の枠から離れることは出来るということだ。
 ずばり、普段と違ったことをしてみるのだ。短い時間で普段できなくてかつ恋人の協力が不可欠と言えばやはりアレだろう。
 より刺激の強いものを試せば、お手軽に非日常性を味わえて、奥様うっとり休暇は充実ふたりだけの思い出もできてわしはホクホクというわけだ」
「……どっちかと言うと消し去りたい過去になりそうなんだけど」
「男は度胸、何でも試してみるものだ」
 妙に目をキラキラさせている太公望に普賢は疲れたため息をつく。
「つまりあれでしょ?マンネリだって言いたいんでしょう?」
「そんなことはないぞ。なんなら今確かめてみるか?」
「え、遠慮しとくよ」
 にんまりしながら寄って来た彼を、普賢はあわてて押しとどめた。太公望が残念そうに身を引く。普賢に意味深な流し目を送って、ほうとため息をついた。
「……ここだけの話なのだがな」
 普賢が先を促すと、太公望はしおらしげにうなだれて語り始めた。
「覚悟はしていたつもりだが、やはり人の上に立つというのは大変でのう。
 いや、十二仙の一翼を担うおぬし相手に甘えたことをぬかすのもあれだが……そのな、どうにもやりきれぬ時があるのだ」
 太公望が普賢に体を預ける。大人になりきれないまま成長を止めた体は、ふたつ年上の普賢よりも少しだけ小さい。
「わしの仕事は指示を出すことだ。指示を出すということは責任を負うということだ。頭ではわかっていても、恐ろしくて眠れぬ夜もある」
 普段とはうってかわって心細げな様子だった。大胆で、だけど繊細な内面を持つ身には、生死のやり取りを一手に引き受ける役職は想像以上につらいのだろう。
 それでくじけてしまうような意思の持ち主でもないと、知っているだけに何も言えず、普賢は太公望をそっと抱きしめた。お気楽そうにふるまっているくせに、何かと背負い込んでしまいがちな彼を。
「たまにでいいのだ。何も考えず頭をからっぽにしてしまいたい。命ずるのではなく命じられたいのだ。こんなことを頼めるのはおぬししかおらぬ」
 ……ああ、それで女王様なんだね。ようやく普賢の中で点と点がつながった。
 しょぼくれた犬のような瞳を見つめ返せず、ため息がもれる。断る理由はいくらでも思いつくけど、どうせイエスと言った瞬間してやったりと笑われるのだろうけれど、この上目遣いに自分が勝てるわけがない。
 惚れた弱み。いいセリフじゃない。のってあげましょう、口車。
「次、いつ来るのさ?」
 太公望が顔をあげた。気のせいかウサ耳頭巾もピンと立ったような。
「準備とか用意とかあるでしょ。まさか今からとか言わないよね?キミそろそろ戻る時間だし」
「ということは」
 期待に満ちた視線を受け、普賢はつとめてぶっきらぼうに言葉をつむぐ。
「ええ、はいはい。やってあげますよ女王様。先に言っとくけど、期待しないでよね」
「おー!」
 勢いよく抱きつかれてぐりぐり頬ずりされる。ちょっとやめてよと口ではいいながらこんなに喜んでもらえるならまあいいかなと思う。人としての一線をうっかり越えてしまった気がしなくもないが、お菓子をもらった子どもみたいにおおはしゃぎする太公望はくやしいくらい愛しい。
 ……しかしこれでどうやってその気になれというのさ。
 無邪気な笑顔に軽い頭痛を感じながら、普賢は資料用に官能小説を買い込むことを決意した。
 

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■ノヒト ... 2007/09/06(木)01:59 [編集・削除]

がっつりエロが好きです。
エロに至るまでの過程はも~っと好きです!

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