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SS~永夜

「ん、待ってた、よ……」
 
 ※触手 寒い 18禁
 ※ふーたんおんなのこ注意
 
 
続き
 
 

 
 
 寝室の扉を閉めてしまえば、僕はただ一人。
 わかっているのに気配をうかがってしまうのは、後ろめたさのせい。寝台のそばにある細い灯火が僕の影を引き延ばして壁に映していた。
 錠を落とし、寝台に近づいた僕は帯を椅子にかけて夜着を脱いでいく。
 裸に戻り、素肌のまま寝台にもぐりこむ。僕の肌は既に軽く汗ばんでいた。僕はシーツの隙間から手を伸ばしチェストの引き出しをさぐる。奥にあった冷たく硬い感触を引き出す。
 取り出したのは、張り型。男性器を模した作り物。節くれだった肉色のそれは、過剰肥大したミミズに見えなくもない。
 毎晩のように僕はこれに慰めてもらっているのに、いまだ手に取るたびに気後れしてしまう。けれど目の前の質量に体の奥がじわりと溶け、蜜口が潤っていくのも確かな事実で。抑えきれない獣欲に口惜しさを覚えるのも、いつものこと。
「ん、ふ……」
 僕は布団を頭からかぶると、それの先端に吸いついた。なめらかな表面をたっぷりと唾液でぬらしながら、片手を下肢へ伸ばす。とまどいながら、それでも僕の手は下へ降りていき、自分の中心にたどりつく。
「……ん」
 薄掛けの布団が作る小さな暗闇の中で、僕は胎児のように体を丸め自分を追い詰めていく。張り型をほおばり柔肉をこねまわして己の醜さから目をそらしていれば、やがて指をうごめかすたびにねばついた水音が聞こえるようになる。
「はあ……あ、ん、ふぁ、ああ……!」
 僕の体はあてがわれた張り型をゆっくりと内へ飲み込んでいく。胎の中へじわじわと押し入ってくる感覚に僕はだらしなく口を開けてあえいだ。
 根元まですっかり入りこんでしまったそれを、僕は自分の腹ごと抱きしめる。期待が骨の髄から溶け出して、体内に飽和していく。細く長く息をついて、その瞬間を待った。
 どくり。
 僕の中でそれが跳ねる。
「あ、ふあ……ひあ、は、ああ、あああ……!」
 張り型の姿をして内に収まっていたそれは、僕の淫汁をすすって目覚めた。ふくれあがって質量を増し、出口を探してもぞもぞと蠢く、そのたびに僕の体もふるえる。
「ん、ひぃっ!」
 腹をはちきれさせんばかりに膨張していたそれが、蜜口を見つけだしてずるりと出て行く。まるで胎から蛇が這い出たような感触は、おぞましく同時に倒錯した悦びを僕に与える。
「は、はあ……はあ……あ……」
 汗で濡れた体に張り付く布団をずり落とすと、僕の足の間に粘液にまみれた肉塊があった。ぼんやりした灯りにてらてら光るそれの表面が、沸き立つように激しく痙攣している。僕はこれから起こることを予期して舌なめずりをした。
 濡れた表面にいくつもの瘤が現れ、瞬く間に膨れて伸びあがり、何本もの触手が生み出された。透明な液体をしたたらせたまま僕に絡みつくそれらは、すべて先端が男の形をしている。
「ん、待ってた、よ……」
 僕は中のひとつを手に取り、口を開けて誘い入れた。濃厚な雄の匂いと味に陶然とする。
 くびれた部分に舌を這わせるとすべての触手がうれしげに身をくねらせて、僕の肌にねばついた汁を塗りたくった。
 胸の突端に、薄い尻に、太ももに、いくつもの触手が競い合うように粘液をなすりつけてくる。
「んぅ!」
 両足の間を触手が通り抜け、最も敏感な部分を刺激されて僕はのけぞる。拍子にくわえていたのがはずれた。口から引き抜かれた触手が、先端から僕の顔へ白濁を撒き散らす。一段と濃い雄の香が立ちこめた。
「はあ……だめだよ……出すなら、僕の中、んぐ……!」
 先を争うように何本もの触手が僕の口めがけて来た。口に入り込めなかった子は、僕の顔に先端をこすり付けてくる。男のあれによく似たものが僕の頬や額をまさぐった。
「ん、ふふ、順番だよ、順番……だいじょうぶ……ちゃんとみんな、相手するから、ね……」
 口の中で暴れていた触手を引き出してそう言うと、僕はその子を両手でやさしく包みこんでのどの奥まで招き入れた。唾液をからめ、舌を巻きつけ、相手の快楽だけを願って無心にしゃぶり続ける。既にはりつめきっていたそれはぶるぶると震え、やがて大きく跳ねて僕の口内へ濃い体液を吐き出した。
 どろりとした体液は精液によく似ている。あるいは、そのものなのかもしれない。口中の液体を舌の上でころがした。生臭いような独特の味はけして美味と言えないはずなのに、僕には甘露のように感じられる。ゆっくりとしごきあげて、触手の中に残っていたものも受け入れると、すべて飲みこんだ。のどをつたって落ちていく感触が僕を侵していく。
「……ふふふ、満足した?じゃあ次の、んぐ!……ぷは、もう、そんなにあせらないでったら……」
 待ちかねたように飛びこんできたその子に頬ずりして、僕は再び口に含む。僕の体には何本もの触手がからみつき、僕が口内のそれを舌先でくすぐってやれば感極まったように蠢いた。
 ふつふつと胸の奥からわきあがってくるのは、愛しさ。この哀れな生物に僕は歪んだ愛情を抱いてる。
「あ、おいし……もっと、ちょうだい……」
 次々と僕の口の中に吐き出される精に酔う。全身を愛撫していた触手のいくつかが、僕の両足の間にもぐりこみ、うかがうように中心へ触れた。
「んん……まだだめ……。そっち、されたら、ふぁ、きもちよく、ん!て……はあ、口で、できなくなっちゃう、よ……」
 
 これが寝室へ忍びこんできたのはいつのことだったろう。もう、忘れてしまった。
 ひとりの夜が長くて、君に逢えないことが哀しくて、僕は涙していたような気がする。
 口をふさがれて悲鳴をあげることもできず、恐慌におちいった僕に、触手は気の狂いそうな快楽を味あわせた。
 おぞましい一夜が明けたにも関わらず、僕は誰にも何も言うことができなかった。教主である楊ゼンや弟子である木咤には当然、気のおけない友人である太乙にも、当時交際を始めていた黄竜にさえ。
 下等な生物に犯されよがっていたなどと、どうして言えるだろう。孤独に慣れた体に突然与えられた快楽はあまりに甘く、僕は結論の出せないまま再び夜を迎えた。

「は、あ……ね、もう……」
 何度目かもわからない粘液を飲み下し、口淫に疲れた僕は自ら足を開いた。下肢に擦り寄っていた触手が、僕の中にもぐりこんで来て高い声があがる。潤いきって淫汁にふとももまで濡らしていた僕のそこは、抵抗どころか先をねだるように触手を締めつけた。
「あっ!そう、そこ……そこ、いいの、もっと……ああっ!」
 最奥にたどりついた触手がたまらないところを狙って蠢く。もう一本が肉芽を味わうように先端をこすりつけ、さらにもう一本が僕の後ろへまわりこんだ。
「ん、そうだよ、そっちも、ね?……はうっ!ああ、すごい、もっと……!」
 ねじりこまれた2本の触手が僕の内膜をはさんで高めあうように交互に動く。ごりごりした硬い肉棒が中でこすれあうたびに、燃え上がるような感覚。かすかな苦痛が甘さを煽る。僕は獣のように腰をくねらせ、恥も外聞もなく声をあげて快楽に狂った。
 
 醜悪な外見をのぞけば、この触手の塊はあまりに僕にとって都合がよかった。鳴かず、這わず、逃げず、餌も水も欲さず、ただ僕の体を貪るだけで満足する。昼間は小さく固まって引き出しの奥で動かず、夜は狂乱のさなかにあってさえ僕が拒めばおとなしく引き下がる。
 なによりそう、似ていた。先端が模る雄の象徴が。大きさ、色、形、握れば熱く脈打つ感触、吐き出す白濁の香ですら、彼のものに。
 目を閉じればまるで彼に全身を犯されているかのようで。
 
「ひ、ああ、あは……もう……!」
 頭の中が白く白く灼けていく。僕の昂りに呼応するように、触手が激しく動き粘液をしたたらせた。内側を犯す触手の動きも、また。
「……うく、あ、ああああっ!」
 頂点に達すると同時におなかの奥であふれだす精が。熱くて、もう、すべてがとろけていく。
「あ、は……はあ……」
 余韻に荒く息をつく僕の中から、触手がずるりと出ていく。その感触にすら僕は刺激されてた。落ち着きかけていた体がゆっくりと炎をはらんでいく。萎えた触手は、なごりおしげに入り口をなぞりあげ、腰の線をなぞった。ぬるつく液体が自分のものか触手のものか、それすらもわからない。
「……もっと」
 うずきだした獣欲のままに、僕はたゆたうようにうねる触手のひとつに頬をすり寄せた。待ちかねていたのか、嬉々としてふたつの触手が前と後ろに入りこんでくる。
「ああ、もっと、もっと激しくして……!」
 一度達した体は敏感で、僕はすぐに絶頂を味わう。のどの奥へ、胎内へ、注ぎこまれる熱にさらなる悦びがくりかえしくりかえし。
 目を閉じれば、嗚呼、本当に。
 まるで彼に犯されているよう。
「……望ちゃん」
 焼き切れた胸の内から、とじこめていた名前があふれる。
「望ちゃん、望ちゃん、望ちゃん……」
 際限のない快楽の中で、僕の頬を涙が伝っていく。激しく貫かれる衝撃に、あふれてきた生理的なものだけではなく。
「望ちゃん……」
 
 僕は、彼の慰み物だった。
 暗く沈んだ黒曜石の瞳に復讐だけを秘めて、黙々と修行へ打ち込むキミ。
 道士ですらない見習いの僕に、元始天尊さまの直弟子であるキミは縁遠い存在だった。けれど修行場で見かけるたびに、僕は確かにキミに惹かれていった。冷えた背を包みたいと願っては、毎夜雑居房の割れ窓から玉虚宮をながめ、ため息をこぼしていた。
 修行という名の選別の結果、僕に遠見の力があると知れたのは、キミを初めて見かけてから2年が過ぎた頃のこと。
 しばらく後、元始天尊さまに秘密裏に呼び出された僕は、封神計画の礎になることを持ちかけられた。友として同期として、異性として愛人として、あらゆる手を使って彼の心を惑わし計画へ向かうよう仕向けろと。
 断ることなど、思いつきもしなかった。遠くからながめることしかできなかった彼の一番近くへ行ける。元始天尊さまはおっしゃられた、計画が成功すればキミの伴侶になることも許そうと。僕は……喜んで誘いにのり、キミにあてがわれた。それがキミの心をさらにむしばむと気づいていながら、自分の想いを優先させて。
 キミはそんな僕の胸の内を見透かしていたのだろうか。それとも、違ったのだろうか。今となってはどうであっても詮無いこと。
 初めて通じた晩、キミは僕をひどく罵ったね。手荒に乱暴に僕を犯しながら、何度もくりかえし。
 淫婦め、と。
 
 そうだ、僕は淫婦だ。
 尻穴まで触手に犯されてよがり狂う僕には、この哀れな生物がお似合いだ。
 計画をなし終えて姿を消したまま、キミが僕の元へ姿を現さないのは当然のことだ。体を通じたからといって、心まで通じるわけじゃない。そんな簡単なことに、何故僕は気づこうとしなかったのか。
「望ちゃん……」
 涙が止まらない。絶え間ない快楽に悦ぶ体と裏腹に、心が冷えていく。
「もっと、もっとして……おねがい、何も、考えられなく、なるまで……」
 僕は触手たちを抱きしめる。僕の魂の醜さをそのまま映し取ったような肉の塊。あの頃キミが僕にそうしたように、今僕はこの子を慰み物にしている。胸の濁りを忘れるために、一時の快楽に溺れて。
「おねがい……もっと……」
 
 もう望まないから、何もキミに望まないから。
 キミがどこで誰を相手に、僕にしなかった優しい愛撫をし、僕に見せなかった笑みを見せ、僕が気も狂わんばかりに願った口づけをしようとも(いやだそんなのは耐えられない)。
 
 触手がざわめく。僕の内に、僕の外に、顔に、腹に、胸に、腕に、太ももに、つまさきに。からみつき、先端から白濁を吐き散らしてわななく。悪夢のような甘い交わりも終わりが近い。
「……望ちゃん……だいすき……もっと……」
 さらなる快楽を求めて、僕は両の手を闇に伸ばした。
 
 

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■ノヒト ... 2007/10/09(火)23:27 [編集・削除]

触手はいいねえ……人類の生み出した(以下略)

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