リクエスト「ほおずり」
by>>空言庵 ソラさま THX A LOT
ぴちょん。
ぽとんぴたんと。
暗闇に音が響く。
ああ、何か覚えがあると思ったら、
かつてそんな話をしたと口元が緩む。
日の下で、無邪気に二人で。
drop
水琴窟?
そう、洞窟の中とか甕の中に水滴を落としたときに発生する反響音を楽しむ、まあ・・・風流な庭遊び、かな?
・・・それ、本当に風流か?
え? なんで?
自然の音を楽しむんだし、風流でしょ?
なんか、狭い空間内である一定の音を一定の間隔で・・・ってそれ、よく似た拷問なかったか?
うわー望ちゃんって平気な顔で怖い事言うなあ。
そうか?
精神的に負荷を与えるのなんか、
精神修養の一手段だろ?
でも修行と拷問は違うでしょ。
それに自然の音って1/f揺らぎだから、
人の耳には心地良いはずと思うけど。
まあ、一定の音を絶え間なく聞かせるなんてのは
閉鎖空間とかで意味を成す拷問だろうしなあ。
もー、
なんで水遊びしててそんな話になるかなあ。
そりゃあ、ズボン捲り上げて生足もまぶしいお前を前にしてるってーのに、お行儀よくお話してるだけなんてのは拷問だってことじゃないか?
・・・ほんっと、望ちゃんってどうして平気な顔でそういう事言うかなあ。
言いながらも抱き寄せる手に逆らわない体に目を細め。
ほんのり染まった頬に唇を寄せた。
ぽとん・・・ぴた、ぱたり。
ああ、確かにこの滴る音は耳に甘い。
自らの閉じた空間なれば、拷問などとは程遠く。
拷問というならむしろ。
左手に掴んだものをぎりりと握り締めた。
あれからどれほどの時が経っただろうか?
もう良いだろうと思ったのだ。
人の世は神の手を離れ、彼らの役目は終わった。
神界は解体され、神々はそれぞれの道へと歩み始める時だった。
もう、会いに行ってもいいだろうと。
もう、共に過ごす事を望んでもいいだろうと。
けれど。
疑いもしなかった。
どれほど時間が経とうと、
どれほど遠いものになったのだとしても、
彼が自分を受け入れてくれることを。
なのに。
ぽとり・・・ぴたん。
滴る音は次第にまばらになっている。
代わりに混じるのはぴしりぱしりと鋭い風の音。
押しのける手。
後じさる足。
震える身体。
自分を見ようとしない目。
自分の言葉を聴こうとしない耳。
拒絶を綴る舌。
そう、
否定する心、など。
「いらぬ」
不快な記憶を追い払い、すぅと薄目を開く。
眼前に力なく横たわるのは、彼。
これで、ようやく。
自然に笑みが零れる。
胸の内に広がっていくのは確かな安堵。
自分のそばに。
自分だけのものに。
打神鞭をもう一振り。
ごとりと鈍い音がして、掌中に丸い塊がちょうど良く収まった。
虚ろな眼窩から、顔の側面から、唇から。
そして何よりその切断面から滴る雫を気にも留めずに、
ガラス細工を扱うかのように繊細な手つきでその首を抱き上げると、ひやりと柔らかいその頬に何度も自分の頬を寄せて。
そのままゆるやかに口付けた。
ぱた、ひたりと。
暗闇に音が響き続ける。
ひしと抱きしめた腕の中を見つめ至福の笑みを浮かべる男。
自らの瞳から絶えることなく流れおちるそれに。
男はもう、気づくこともなかった。
了07.11.12 sora
■のひと ... 2007/11/19(月)00:04 [編集・削除]
ソラさんのところでのキリ番ニアピンということでずうずうしくもリクエストいたしましたところ、こんなステキなお話をいただけました!ソラさんありがとうございます!
暗闇でほおずりするなんてじつに背徳的ですね!私語硬直で微妙に硬かったりするんだろうなあ萌え。
ソラさん本当にありがとうございました!