「だっこ」
※お約束の風邪ネタ 18禁
※ふーたん女の子注意
「普賢」
「なぁに?」
「かわいいにょ~」
「どうしたの望ちゃん、熱でもあるの?」
神界の自室で、普賢はいつもどおり食っちゃ寝している半野良始祖様の額に手を触れた。火に触れたように手を引っ込める。
「望ちゃんすごい熱じゃない!なんで言わなかったのさ!」
「にょほほ~…」
「にょほほじゃないっ!」
見た目より重い体を引きずってベッドに寝かしつける。改めて肌の熱さを感じて唇をかみ締めた。このところ仕事仕事で伏羲のことを気にも留めてなかったことが悔やまれる。
「望ちゃん、なにかほしいものある?あ、桃をもいでジュースにしようか?」
「だっこ」
ふかふかの布団の下から半分だけ顔をのぞかせた伏羲は、あろうことかそうのたまった。
だっこ?だっこ?いい年した男がだっことな?いよいよ病状は深刻らしい。
「ちょっと待ってて、雲中子に連絡とって来るから」
「だっこ」
「いや、すぐ帰るから」
「だっこ」
「ぶっちゃけると、風邪うつされると困るんだ」
「だっこ」
負けずにむいむいと自分の太ももに頭をすりつけてくる伏羲を前に思案する。抱えている仕事の残量と、始祖がわずらうくらいの難病。普通の風邪だと思いたいが、そこはそれ、ミラクルな効果を起こす宇宙風邪(今命名)である可能性も捨てきれない。天秤にかければおのずと答えは見えてくる。
見えてくるのだが。
「はいはい、だっこね」
あれやこれやは後回しにして、普賢はひとまず目の前の恋人の機嫌を取ることに決めた。ただし、と前置きして子供用シロップの風邪薬は飲ませておく。
木タクが小さかった頃お世話になった代物だ。ああ、あの頃の木タクはかわいかったなあ、今もかわいいけど。それにひきかえこの男は。
「だっこ」
「はいはい」
ほっぺたぷくーとふくらませた姿には威厳もへったくれもない。普賢は自分もベッドに横になると伏羲の体を抱きしめた。
にょほっとうれしそうな声が上がる。
「はい、おしまい。いい子で寝るんだよ」
「そんな殺生なー…」
体を起こしかけたとたん、伏羲の腕が普賢の体をつかんでベッドの中に押し戻す。
「ちょっと望ちゃん、離して」
「いーやーだー、だっこ!わしが寝るまでだっこ!」
完全にだだっこモード入ってしまった始祖など、相手にするだけ無駄だと長年の経験で知っている。普賢は観念して伏羲の首に腕を回した。
「はい、腕枕。これで文句ないでしょ」
「ああ、ひやっこいの~極楽だのう~」
「いいからさっさと寝る」
伏羲はぺったりと普賢に身を寄せて小さなあくびをした。朝焼け色の瞳が隠れ、落ち着いたのか小さな寝息があがる。
伏羲の顔立ちは、わずかに幼げな風貌を残す。寝顔ならば特に。こんなに間近で見るのは久しぶりだ。仕事にかまけてばかりいた自分を少し責める。伏羲が自分のそばにいること自体珍しいことなのに。
感傷に捕らわれていると、普賢の尻のあたりで何かが動いた。
「望ちゃん」
「んー?」
「…何してるの?」
「尻を、触っておる。痛い!」
ちょいやさっとおでこにチョップを決めて起き上がろうとするも、魔の手ががっちりと普賢を捉えて離さない。
「何考えてるの、病人」
「いや、そのな、おぬしのひんやりした体にぴったりくっついていると、こう、ムラムラと」
「種の保存欲求が?」
「そう、種の保存欲求が…痛い」
もういっぺんチョップ。
「病人はおとなしく寝なさい」
「一回だけ、一回だけしたら寝るから!頼む!」
「黙れ病人」
「一回だけ…!」
言いながら伏羲は上にのしかかろうとする。逃げようにもしがみついてくるので体を起こせない。もがけばもがくほど伏羲を煽っているのがわかる。捕らわれていた腕を抜き出すと、今度は首筋に噛みつかれた。本気で欲しがっているのだとわかって普賢は脱力する。
何でこんな時に、そんな気分になれるのやら。熱に浮かされているくせに、本能だけはやたら元気だ。
「……一回だけだよ?」
降参してやると、うれしそうに抱きつかれた。どうせほっといても半泣きの上目遣いと一生のお願いが発動するだろう。添い寝をしたその時から、こうなることは決まっていたのだ。
直に触れた肌の熱さに、普賢は顔をしかめた。
「…本当に、大丈夫なの?」
「うむ」
返事に彩色がない。熱があがってきているのだろう、その背が汗で濡れているのは何も睦み会う興奮からだけではあるまい。
伏羲の舌が先ほどから普賢の首筋に沿ってゆるゆると動いている。舌は常よりもずっと熱く、わずかな動きもはっきりと伝わってきて、普賢は疼きを感じ始める。
自分も大概現金だと思いながら、普賢は伏羲のするままに任せる。首筋から鎖骨に移った唇がねっとりと愛撫を施す。時に強く吸われ、時に甘く噛みつかれて、普賢を落ち着かない気分にさせる。蝋が垂れるように期待が溶け出して、体の中濃度を高めていく。
「望ちゃん…つらくなったらちゃんと、ん、言ってね…?」
「……」
聴こえなかったのか聞いてなかったのか、それとも返事をするのもつらいのか、伏羲は夢中で愛撫を進めていく。左の指先がつと胸の突端に触れた。強い刺激に背をそらした普賢を抱きしめなおす。濡れた肌のくっつく音がした。
「ん、ふ…ん…」
伏羲の熱をすすって、普賢の肌も熱くなっていく。熱は体内を波のように広がり、口からこぼれ出た。両腕で腰を抱かれて、飴玉のように胸をねぶられる。肌が、汗ばんでいくのがわかる。頭の芯がぼうっとして、伏羲の動きに合わせてゆらゆらと揺れた。
「あ、ああ、はっ…あんっ!…望ちゃん、もう……」
高く、大きくなっていく声を止められない。伝わってくる体温でとろけた体の芯から切なさがあふれ、愛液となって太ももをつたう。奥に彼が欲しくて、普賢は伏羲の頭を抱きしめた。
途端に、かくん。
「ぼ、望ちゃんっ!大丈夫?」
「ぅえん~……」
ふげん、と言おうとしたらしい。
伏羲は普賢の上にぐったりと倒れこんでいた。真っ赤にゆだって目を回している。普賢の頭の中では、ああ、やっぱりこんなことするから!と、なんでこのタイミングで落ちるのさバカバカ!が取っ組み合いの大喧嘩。盛り上がってしまった体は、水でも引っかぶらないと後戻りできそうにない。だがそちらの心配は要らなかった。
「…ええい、まだまだ!」
「……望ちゃん」
この期に及んで、なお伏羲は続けようとしていた。一息ついて気合を入れると、体を起こす。もういっそ天晴れと言うべきか。火照ったこの身をもてあましていることだしもうこのまま好きにさせようと、諦めのため息とともに普賢は決めた、その代わりに。
「よいしょっと」
「お?」
半身を軸に体勢をひっくり返して自分が馬乗りになる。見た目に反して重い伏羲の体だが、コツさえ知っていればこのくらいの芸当はできる。ましてや相手は風邪でふらふらなのだし。
「普賢?」
「あとはこっちでするから望ちゃんは寝てて」
「……むぐ」
なにやら口の中でうにうにと不平不満を並べていたようだがおとなしくすることにしたらしい、横たえた体から力が抜ける。細身ながらもしっかりと筋肉のついた肢体を両の手のひらで愛しんで、普賢は腰を浮かせた。
「ふ……う……」
彼の中心に己を重ね、ゆっくりと腰を落としていく。いつもよりもずっと強い熱が、自分を割り裂いて入ってくる。あまりの熱さに自然と眉根が寄っていく。
「は……あ…」
根元まで押し込んで、ようやく息をつく。くわえこんだ熱が胎内をじわじわ侵食してくる。知らず知らずきつく締めつけて、さらなる熱を味わう羽目になる。身動きもとれず息を詰まらせている普賢に、伏羲が両手を広げた。
「…だっこ?」
「だっこ」
「はいはい…」
苦笑しながらゆっくりと体の上に倒れこめば、待ちかねていた伏羲の両腕が普賢をぎゅっと抱きしめた。
熱い。本当に、溶けてしまいそう。
風邪がうつってしまったのかもしれないと思ったけれど、もうどうでもよかった。全身を彼の熱に包まれて溶けゆくなら本望だと、そう思った。肌と肌、唇と唇を重ね、腕を絡み合わせて、愛しい人とすべてを通わせる快美に酔う。今この瞬間、魂までつながっている。離れた唇の間に銀の糸が引いた。
「……あうっ!」
普賢が息を飲んだ。伏羲が腰を揺らし始めたからだ。小刻みにゆるゆると、じらすように動かれ翻弄される。追い詰められていくのを感じながら。
「普賢、おぬしの中…な…。ザラザラして、きつくて、すごく…いいのだ、ぞ……」
耳に直にそそぎこまれるつぶやきがあまりに甘くて、普賢は身を引こうとしたが首根を抱き込まれえて逃げるに逃げられない。
腰を抱かれて、ひときわ強く奥を突かれる。普賢の喉から悲鳴に似た声が上がった。
「…特に奥の、ここ、な?…わかるだろう?だんだん、開いて…噛みついてきて、たまらぬ…」
腰を揺する力がしだいに強くなる。高ぶっていく身体に振り回されぬよう伏羲に回した腕に力を込めながら、普賢は必死で言葉を紡いでいく。
「僕、僕もね…奥の、そこ、好き…あっ…。望ちゃんが、ね。奥…叩いて、ん、すごく、いい…くっ、ん…」
耳たぶをぞろりと舐められた。笑みを含んだ声が流し込まれる。
「…同じか」
「ん、同じ…だよ、気持ちいいとこ…同じ…ふあっ!」
何度も最奥を貫かれながら、普賢はうわごとのように同じだよと繰り返した。近づいてくる頂に為すすべも無く、夢中で伏羲にしがみつく。下から普賢を責めたてる伏羲の額にも、玉の汗が浮いていた。こめかみをつたって、シーツに丸いしみをつくる。
「……あ、あ、望ちゃ……あっ!」
とっておきの熱が胎内に放たれて、普賢は頂点へ放り出された。子を孕む器の入り口にぴったりと先端を押し当てられ、どくりどくりと脈打ちながら注ぎ込まれていく。
「う…あ…熱い……熱い、よ、望ちゃん……」
胎に炎を呑んだかと疑うほどに、それは熱く甘い感触だった。最高の快楽がまだ身の内を荒れ狂っていて収まる気配が無い。視界がぐらりと揺れた。景色が反転し、気がつくと彼の下に組み敷かれていた。持ち上げられた両足の間から、伏羲が苦しげに息をつく。
「すまん普賢。もう一回、もう一回だけつきあってくれ…」
「え…?あ、ああっ!」
それだけ言うと、彼は返事も聞かずに動き出した。餌に食らいつく獣のように容赦なく普賢の痩躯を刺し貫く。交わる水音が大きく響いた。
「ひ、い…だ、だめ!だめっ…望ちゃん!死んじゃう!」
気をやったばかりの身には手に余る刺激だった。体は頂点のまま磔になり、度を越えた快楽が苦悶に変わる。拷問めいた悦びが普賢を蝕む。
「お願、あっ!やめっ!死ぬ…死んじゃうよ!やめて!やめ、あうっ!」
「すまん、もう少し、もう少しだから…!」
普賢は限界まで背をそらし、骨が浮くほどシーツをつかんで許しを請う。だがしかし止まらない、止まれない。暴走した身体が伏羲自身も苛んでいた。歯を食いしばり、無我夢中で普賢を穿つ。それ以外に終わらせる方法は無かった。
「あ…あ……」
もう一度炎を呑んだとき、普賢はすでに意識を失っていた。
明けて翌日。
案の定、ああやはり、ならばそして。
氷枕を下にうんうんうなる普賢の枕元には、申し訳なさそうに始祖が鎮座ましましていた。高熱を発する普賢に対して、伏羲はといえば風邪?何それ?ってな具合。
「普賢、何かほしいものはあるか?」
「…ー…」
「ん、なんだ?よく聞こえなかった」
「…こー…」
「すまん、もういちど」
「…だっこー…」
とろんとした瞳がこちらを見つめている。伏羲の脳裏を稲妻のように昨日の記憶が走りぬけた。
これは、例のアレ?風邪の症状?いやしかし病人相手に。けどけれど免疫はばっちりだし。そして言うなら普賢からお誘いなんてめったに無いわけで。いわゆるひとつの、据え膳?
よし来い!
いそいそと服を脱ぎ捨て、ベッドに入る。普賢を抱きしめてやると、いつになくうれしそうに笑った。
「…えへへ」
くぅっ!かわいい!かわいすぎる…!伏羲は心の中で身悶えしながら普賢の服を脱がしてやった。
だがしかし、女の身というのは果てを知らないもので。
風邪が治りきるまで、伏羲は延々と奉仕させられる羽目になった。
■ノヒト ... 2010/05/10(月)02:56 [編集・削除]
むだに ながい