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小話劇場

とある勇者の憂鬱   by saiki 20080816 16:14:45





目の前で閃光が走ったかと思うと、
黒煙が晴れさっきまでいたはずの秋葉原の雑踏が消うせ、
踝位の草に覆われたちょっとしたサイズの広場が現れる。

「おお!──────が平民を召喚したぞ!」

いやもう、勘弁して欲しい…私の周りを、有明の特徴的な逆ピラミッドの建造物に年2度、
何処からとも無く集結する同好の志を思わせる、時代錯誤なマント装備の一団が取り囲んでいた。

「我が名は─────祝福を与え」

ああ、空が蒼い…私は目頭に指をあて頭痛を堪える様に空を仰ぐ、
艶やかなロングの黒髪が風にゆれ、日に焼けていない白い肌をくすぐった。

「我が使い魔と─────ぶべらっ!」

私の、生涯忘れえぬ汚点と成った2度目の召喚の時に、
不本意ながら身に付けざるおえなかった魔術を使い。
右の拳へと纏った風で、目の前で不吉な言葉を吐こうとした、
ここ特有の色素なのか、それともモルフォ蝶の羽根のように
光の干渉作用を起こし色を纏う繊細な表面を持つのか分からないが、
異世界かアニメの中以外ではありえない、ピンクの髪の小柄な少女を豪快に空へと吹き飛ばす。

「馬鹿者───っ!無関係な人を巻き込むな───っ!」

最初の召喚の時に形成されてしまった、とっても男前な性格で、
親友がすらりと細く白い肌が深窓の令嬢ぽいと評価する姿に似合わぬ罵倒を浴びせる。
連日のトラブル続きだったせいで溜まった鬱憤を晴らすように拳に力を込めたせいか、
見事に少女はコメディっぽい悲鳴と共にホームランボールの様に
縦回転しながら飛んで () く、おお、彼方に見える城壁ぽいのを超えた、正にホームランか?

「あ─、あなたはいったい!」
「安心しろ、 みねうちだ(・・・・・) 命に問題は無い、
あってせいぜい骨一本だ、だが、再び無関係な私を巻き込むつもりなら、
あれへ次は無いと伝えておいてくれ、私は仏様と違って3度許せるほどの忍耐は無い。」

どうやら責任者ぽい、眼鏡で頭が寂しい中年男の抗議の声を断ち切って、
私はニヤリと、不本意ながら知り合いから整った日焼け知らずの顔で笑われると、
某管理局の白い悪魔を思わせると指摘された、凄みのある殺伐とした笑みを顔に浮かべる。
まあ、吹き飛ばす対象物を風の壁で包む非殺傷設定で放ったから致命傷にはいたら無いだろう。

豪快無敵な我が愛すべき爺っチャンによると、
私は勇者体質にして最悪な事に召喚に対する抵抗力がかなり低いらしい。

全く困った事だ、それが発覚したのは、
小学校の高学年の夏休みの終わりに、見も知らぬ世界に召喚されたあげく、
まんまとけち臭い王様のおだて上げる口車に乗って小遣い銭を与えられ、
攻撃力プラス40のロト何がしの剣とやらで魔王と戦う破目になったからだ。

いや、賭け事参加不能の女子高生の私が言うのもなんだが、
これって、確率を計算すると詐欺っぽいロト6で3億当てるより生存難易度高くないか?

帰還、我が家の庭っ!(ルーラ)

私の 力有る言葉(じゅもん) と共に、足元へ紅い三角の魔法陣が刻まれ、
光を放ちながら防護壁が立上がり、その赤く輝く三つの頂点へ丸く機能設定陣が展開した。
何時傍若無人な召喚を食らうかわらぬこの身ゆえ、陣の起動媒体は
(スニーカー) の中じきに仕込んである、辺りを漂う余剰魔力が吹き荒れ紺色のスカートをたなびかせる。
もちろん、私は こんな事も有ろうかと(・・・・・・・・・・) 、有事に備えてスカートの下には黒のスパッツ装備だ。

「あばよ──っ!とっちゃ─ん!」

仏様ってなんなんですか───っ!と叫ぶ中年男の声を無視して、
私が帰還陣を発動させると辺りを光が包み、次の瞬間”ぽふ”という気の抜けた音と共に、
庭へ刻み込んだ連動する帰還陣の真中へ高低差を無視し設定高度へ実体化、空間を数センチ落下する。
始めて使用した時うっかりベッドの上に出現して、
シーツの上にくっきりと靴の後を付けたのは今では苦い思いでだ。

「うあーっ!まだ虎の本屋に寄ってなかったのにーっ!あのピンクの馬鹿がーっ!」

私は買いそびれた本を思い出し、思わず両の手の平を地につき、頭をたれた。
この帰還呪文を開発するまで、なんと私は2度目の留年を経験する羽目になっていた、
うむ、ここはまさに”ガッデム”と吐き捨てるべきところだな、ははは…と内心苦笑いする。

全ては、無責任にも帰還呪文無しに、
呼び出したあの紅い服の非常識な魔術使いのせいだ、
第二魔法の実験だか何だか知らないが、あまりにもうっかりがすぎる。

「あのピンク頭、次に合ったら問答無用で半殺しだ!」

何時の間にか空を紅く染め上げて行く夕日に向け、拳を握り締め固く誓う。
世界は今日も、私に対して何処までも生ぬるく思い通りにならない物の様だった。








  At that point the story comes to an abruptEND...



-後書-


「おお!──────が平民を召喚したぞ!」
「我が名は─────祝福を与え」
「我が使い魔と─────ぶべらっ!」 = 露骨に某ゼロ…の最初辺りを模して見た、この後少女は留年ぽいが全く意味は無い<笑
モルフォ蝶の羽根のように = 鱗粉に入射する光と、その反射光との間で干渉作用が生じ、擬似的な色として見える仕組。
攻撃力プラス40のロト何がしの剣 = DQの有名な剣のようだが実を言うとやった事が無い<汗
紅い三角の魔法陣が刻まれ = 某魔砲少女のベルカ式がモデルだがまあそれだけ。
こんな事も有ろうかと = 某宇宙戦艦の技術長の技術に係わる人なら一度は言って見たくなるありがたい言葉。
「あばよ──っ!とっちゃ─ん!」 = 某フランス由来の3代目快盗の決め台詞?
虎の本屋 = タイガーマスクの敵役の組織のような名前の本屋さん、ちなみにこことは取引がある<滝汗
あの紅い服の非常識な魔術使い = うっかり宝石魔術師、彼女の関係するFFは読者の一部がモンスターペアレンツぽいので二度と書かない<自爆

思い付きばったり久々の小話です(苦笑
偉大なる故星新一さん風に流して見ました、ブラックユーモアかな?
むしろこう言うのは、パロディと言うよりアンチテーゼですかね。(笑
固有名詞、何処かで見たような場面については、
掲示板の”近代の物語におけるアイテムの使用について”を読んでぜひ考察してください。
この後はもちろん続きませんので安心して読んでください(滝汗



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