【冬の中の春の訪れ】
1月7日は花穂の誕生日です。
お正月からすぐに誕生日がやってくるから、またすぐにお兄ちゃまに会えるのがとっても嬉しいんだぁ♪
それでね、花穂の誕生日はちょうど7日でしょ。だから、この日は七草粥を食べるんだけど……ちょっと苦いから、花穂、あんまり好きじゃないんだ……。
でもね、少し前の誕生日に、お兄ちゃまが七草の鉢植えをプレゼントしてくれたことがあったの。花穂、それまでは七草があんまり好きじゃなかったから、お粥に入れる前がどうなってるかなんて考えたこともなかったんだ。でもね、お兄ちゃまが持ってきてくれた七草の鉢植えを見て、「大事に育ててね」ってお兄ちゃまに言われたのもあって、ちょっと七草のことが好きになったの。
それから、その七草のお世話をしていると、これをくれたお兄ちゃまのことを思い出しちゃうし、七草粥もちょっぴりだけどおいしく食べられるようになったんだ♪ ほんと不思議だなぁ。お兄ちゃまに応援されちゃうと、花穂、なんでもできるような気がして、嫌いな七草粥もおいしく食べられるようになっちゃったんだもん!
でも、それじゃ逆だよね、って思って。やっぱり、花穂がお兄ちゃまのことを応援してあげなくちゃいけないから……そうだ! 花穂がお兄ちゃまのために七草粥を作ってあげよう! って思って、七草を探しに行くことに決めました!
最近はこの時期になると、スーパーで七草セットっていうのを見かけるんだけど――ママの使ってるのもそれみたい――花穂がお兄ちゃまのために何かしてあげたいんだから、やっぱり自分で探しに行かなくちゃいけないよね!
まずはナズナ。ナズナは近くの野原に生えていたのを見かけて、この日のために家の庭に移しておきました。ナズナがぺんぺん草のことだって知った時はびっくりしたなぁ……。小さい頃、お兄ちゃまが「こうすると、いい音が聞けるんだよ」って、ぺんぺん草の種同士をはじいてペンペン♪ って音を出してたのがとっても面白くって、二人でいっぱい鳴らしてたなぁ。
それから、ゴギョウとハコベラは花穂がお花を摘みに時々行ってる、街外れに丘で見つけることができました♪
ゴギョウは黄色いお花、ハコベラは白いお花がとっても可愛く咲くの♪ でも今は、ちょっと早いみたいでお花は咲いていませんでした。もう少し暖かくなったら、来年の七草に向けて、花穂のお家の庭に植え替えておこうかな?
あとは4つ、なんだけど……。スズナとスズシロは蕪と大根のことだから、こればかりはスーパーに頼るしかないかな……?
だからセリとホトケノザをあっちこっち探してみたんだけど……この辺には田んぼが無いから無理みたい……。うわぁーん、これじゃ花穂、お兄ちゃまに七草粥作ってあげられないよー!
……ちょっぴり涙が出てきて、もうこれからどうしたらいいかわからなくって途方に暮れそうになった時、ふとお兄ちゃまの顔が思い浮かんだの。にっこり笑顔で、いつも花穂のことを励ましてくれるお兄ちゃま……。
……そうだ! お兄ちゃま!
花穂、お兄ちゃまのために七草粥を作るんだもん! こんなところで泣いてたら、お兄ちゃまを応援するどころじゃないし、お兄ちゃまに笑われちゃうかもしれないもん!
そう思うとなんだか足取りが急に軽くなって、七草粥の準備をするためにお家へ走って帰りました♪ 今年は仕方ないよね。でもその分、お兄ちゃまのことを思って、頑張っておいしいお粥を作るから待っててね♪ お兄ちゃま♪
お家に帰ったら、作り方をママに教えてもらいながらお粥を作りました♪
花穂、お米を磨ぐのって初めてだったから、ボウルからお米をこぼしちゃったりして大変だったの。
それでもなんとか、磨いだお米と分量通りのお水をお鍋に入れて、お粥を炊き始めました。グツグツ、グツグツ。
最初は中火、沸騰したら弱火に切り替えて、さらにグツグツ、グツグツ。この間はかき混ぜないで炊き上がるのを待つんだって。
そういえば、ママが「料理は愛情よ」っていっつも言ってたっけ。よーし! 花穂もお粥がおいしくなるように愛情をいっぱい込めるぞー♪ ……でも、愛情ってどうやったらお料理に込められるのかなぁ?
そうして炊き上がったお粥に、花穂が採ってきたナズナ、ゴギョウ、ハコベラとお塩を入れて少し蒸らせば完成!
ピンポーン!
あっ! お兄ちゃまだ!
「あのね、お兄ちゃま♪ 今日の七草粥はね、花穂が作ったんだよ♪」
花穂がそう言うと、それは楽しみだね♪ って、お兄ちゃまが嬉しそうにしてくれたの♪
だから花穂、お兄ちゃまの分のお粥はちょっと多めに盛っちゃった♪ えへへ……♪ お兄ちゃま、おいしいって言ってくれるかなぁ……?
いただきますをして、花穂はお兄ちゃまがお粥を食べるのをじーっと見てました。なんだか、とってもドキドキ……。
だからお兄ちゃまが「おいしいよ」って言ってくれたときは、「ホント!? お兄ちゃま!」って思わず聞き返しちゃったりしたけど、それでもやっぱりお兄ちゃまはおいしいよって言ってくれました♪
そんなにおいしくできたんだぁ♪ 花穂も食べてみようっと♪
そうやって、お粥をお口に運んだら……
「アチッ!」
とっても熱かったのー! うわーん! お口が火傷しちゃったよー!
でも、すぐにお兄ちゃまが見てくれて、大丈夫だよって言ってくれたら、あれれ? もう全然熱くないよ? やっぱりお兄ちゃまはすごいなー♪ 花穂が困ってるときは、いっつもこうやって助けてくれるんだもん♪
それから、お兄ちゃまが熱くないようにって、フウフウってして花穂に食べさせてくれたんだぁ♪ えへへ♪ だから花穂もフウフウってして、お兄ちゃまに食べさせてあげたの♪
あのね、お兄ちゃま。今年は七草粥じゃなかったけど、来年は絶対七草揃えて、お兄ちゃまのためにおいしい七草粥を作ってあげるからね♪
だから来年の誕生日も、ううん、これからの誕生日もずーっと、こうやって花穂と一緒にいて欲しいな♪