【はじまりの風景】

 ワタクシは姉君さまをお守りするために、ドイツからやって参りました。
 時に姉君さまの剣となり、時に姉君さまの盾となり、この命に代えましても姉君さまをお守りする所存です。そのために、武道の鍛錬を欠かさず行ってきたのですから。特に剣には自信があります! 今はまだ未熟ですが、いずれ時が来たら、この剣、姉君さまに捧げることを誓います!

 今日は、日本に着たばかりのワタクシのことを気遣って、姉君さまが近くを案内してくださるのです♪ それはつまり……デート……ですよね、うん。姉君さまのお隣に並んで歩く。横を向けば、そこには姉君さまのお優しい笑顔が常にあって……その……手などつないで歩いたりして……ぽっ♪

 へー、ここが姉君さまが住んでいる街なのですね。
 ワタクシも何度か近くを歩いて回っているのですけれど、やはりこうして姉君さまと一緒だと、ここが姉君さまの住んでいる街なのだということが、はっきりと感じられます。ワタクシも、早くここが自分の住んでいる街なのだと……ワタクシと姉君さまが住んでいる街なのだと感じられるよう努力いたします♪

 ……姉君さま、お疲れではないですか? 少し休みましょうか。
 え? ああ、いいですね♪ ワタクシ、甘いものは嫌いではありませんよ。でも、こんなところでジェラートを売っているとは、なかなか珍しいですね。
 あ、姉君さま、あそこのベンチが空いているようですよ。
 ふー、こんな都会の中にも、少し外れるとこんなに緑豊かな場所があるのですね……。
 ……そう、こんな暖かい日は、ジェラートなどは乾ききった喉を潤すのに最適ですね。姉君さまとは、お互い違うフレーバーを選んだのですから、当然相手の味も気になってしまいます♪ そうなれば、やはり食べ比べが始まって……姉君さまは自分のジェラートをスプーンに乗せて「あーん」と、この上ない笑顔でワタクシの目の前に……♪ ぽぽぽっ♪

 …………え? 姉君さま、何ですか……?
 わぁ! ジェラートが溶けて、手がベトベトに! トホホ……大失敗です……。
 ……姉君さまー、そんなに笑わなくてもよいではありませんかー。

 ワタクシは、この笑顔を守っていきたいです。
 そのために、姉君さまの弟として、常の傍らにいても恥ずかしくないように一層の精進を重ねていきます。
 そして……いつまでも、どこまでもお供いたしますよ、姉君さま♪

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