【雨が誘う日】



「ふぅー。うん、真っ白いシャツやシーツを見ると、心まで清々しくなりますね♪」
 
 今日は「お姉ちゃんの日」。普段は離れて暮らしているワタクシ達ですが、この日だけはワタクシと姉君さまとで、二人、時を忘れてしまうまで過ごすことができる大切な日です。今までドイツにいた分、もっともっと姉君さまのお近くにいたいのですけれど、なかなかそうもいかないのです……。
 だから、姉君さまがやってくる前に洗濯を済ませておこうと思いまして。こんなにいいお天気ですし、それに……今日は姉君さまがお泊りになっていってくれるかも……しれないのですから♪ ぽっ♪ もしそうなったら、ワタクシの精一杯で姉君さまのおもてなしをしなければいけません。拙いながらも、お食事を用意しなければいけませんし……それから……その……湯殿ではお背中を……。とても白くて、透き通るようですね……なんて……。いやいやいや! その、違うのです! ワタクシはあくまで姉君さまに喜んでもらいたく! ……なんだか、少し困ってしまいますね、あはは。

 ……ふわぁ。少し張り切りすぎたでしょうか? こんな大あくびなんて、少しはしたないですよね。姉君さまがいらっしゃる時間まで、まだ少しあるようですから、少し横になって待つことにしましょうか。



 ……ピトッ……ピトッ……

 ……うーん……水の音……? ……蛇口でも……きちんと閉まっていなかったのでしょうか……?
 そろそろ姉君さまがいらっしゃる頃合でしょうから、起きて見に行きましょうか……。
 ……! も、もしかしてこの音は……雨音!? ……そうだ、洗濯物!

 
 ……うわ! 大変だ! 洗濯物がずぶ濡れじゃないか!
 急いで洗濯物を取り込んではみたものの……もうこれは、洗濯のやり直しですね……とほほ。空からはお天道様が顔を覗かせていますから、きっとこれは通り雨なのでしょうけれど、何もこんな時に降らなくても。
 ふぅ……洗濯物だけでなく、ワタクシまでずぶ濡れですね。仕方ありません、とりあえず湯殿の準備でも……。

 ピンポーン……♪

 あ、もしかして姉君さまがいらしたのでしょうか! こんな格好ですが仕方ありません、急いで玄関まで行って扉を開けると……ここに来る途中ににわか雨に降られてしまって、すっかり濡れてしまった姉君さまのお姿が。
 いらっしゃいませ、姉君さま♪ 途中、雨に降られて大変だったでしょう? とにかく上がって、体を暖めてください。……? 何をそんなに驚かれているのですか? ああ、ワタクシの方が姉君さまより、こんなに雨露を滴らせているのですから、それは驚きになりますよね。……フフッ。

 結局その日は、二人順にお湯を頂いたあと、お洗濯のやり直しをすることになりました。
 せっかくの「お姉ちゃんの日」だったのですけれども、にわか雨のせいで家の中で過ごすことになってしまいました。でも、それでも、姉君さまと共に過ごせる時間には変わりなくて、洗濯を教わったり、料理を教わったりととても有意義な時間を過ごすことができました。こうやって、もっとずっと二人で色々なことを教えたり教わったりして、過ごしていけますように、そう願うのです。だから、今日は……

 「あの、姉君さま……今日はお泊りになっていって、くださいませんか?」


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