【春の匂い】
暖かな日差しが窓から差し込んで、この療養所の辺りにも春が来たんだな、と思える季節になりました。
ここに来たばかりの頃はまだ小さかったですし、不安でいっぱいでしたから……春を楽しむ余裕なんてまだ無かったんです。
それでも、たまに姉上様が来てくれた時は……普段の寂しさを振り払うかのような溢れんばかりの元気で、姉上様を困らせてしまうこともしばしばでした♪ 姉上様には、本当に感謝しています♪
今日は、姉上様がお見えになることになっています。
このような良い天気なのですから、森林浴なんかはとても気持ちが良いのではないでしょうか？ 姉上様と二人並んで、森の匂いと木漏れ日の中を歩いて行く……、なんだか考えるだけで心が踊ってきます♪
……そろそろ用意をした方がいいかな？ 姉上様とお会いするのだから、こんな恰好のままではいけませんからね。
姉上様♪ おはようございます♪
はい、今日はとても体調がよいのですよ♪ ですから今日は、是非、姉上様と向こうの森の方までご一緒に散歩など、と思っていたんですよ♪
それでは、早速参りましょう♪
うーん♪ 森の中を歩いていると、なんだかどんどん元気になれるような気がします♪ これが森林浴の効果……なのでしょうか？ それとも……姉上様が一緒だから……かな♪ なんだか、少しドキドキしてきます♪
それにしても、思ったより明るいですね。これだけ樹木が生い茂っているのですから、もう少し暗いのかと思いましたけど、至るところから木漏れ日が差してきて、ほのかに暖かいです……♪
……はぁ……はぁ……。え？ 大丈夫ですよ、姉上様……。だって、今日は、朝からとても体調が良かったんですから……。……でも、少し……暑くなってきましたね……。
……姉……上様……。……あれ？ ……どちら……ですか……。
……。
……ん、うーん……。……なんだか、柔らかい……。……あれ？ ここは……。
……あ、姉上様のお顔が……。……どうやら寝てるみたいですね……。ふふふ♪
……もしかして、あの森で倒れてしまったのでしょうか……。また、姉上様にご迷惑をおかけしてしまいましたね……。わたくしが、浮かれていたばかりに……。
……でも……もう少しだけ……。もう少しだけ、こうして姉上様の膝の上で、姉上様と同じ時間を過ごしていても、いいですか……？ ……姉上様……♪
