美少女怪盗クローバー
clover4 『もう一人の美少女怪盗クローバー』

 キャッホー♪ 今日は兄チャマとデートなのデス♪
 なんだか先週から街外れの遊園地で『ミステリーの館』というイベントをやっているらしいと兄チャマから聞いたので、もうこれは是非ともチェキしなければ! と思ったのデス。うーん、いったいどんなミステリーが待ち構えてるんでしょうか……? 踊る人形のような難しい暗号? あっと驚くようなトリックを使った密室? あーんもう、四葉考えるだけでハートがドキドキなのデス♪
 でもどんな難問が来たって、名探偵の四葉と兄チャマのコンビは無敵なのよ♪
 あーっと、忘れるところでした。折角のチャンスなんだから兄チャマのこともしっかりチェキしなくちゃデス! 兄チャマの推理を見るのもいいかもしれマセンね。
 なんて考えながらルンルンと兄チャマの隣を歩いていたそんな時でした。どこからか突然大きな声が聞こえたんデス!

「怪盗ツイン☆テールは、必ず捕まえてみせる!」

 ドキッ! な、なんですか!? よ、四葉は怪盗じゃないデスよー……どこからどう見ても、可愛い四葉ちゃんですよー……。……おかしいデスね? よく考えたら、四葉はまだ変身してないし、それに正体がばれたような気配でもないデスねぇ……。ミステリーなのデス……。
 そんな風にちょっとびっくりしながら色々と考えていると、

「ははは、四葉、何をびっくりしてるんだい? テレビの音声じゃないか」
「えっ? テレビデスか?」

 兄チャマが指差した方向を見ると、確かにテレビがあって――電気屋さんだったのデス――何かのCMをやっているようデシタ。えぇと……怪盗ツイン☆テール? なぁんだ、クローバーじゃないんデスか。人騒がせなテレビですね、本当に。

「ねえ、兄チャマ。怪盗ツイン☆テールって、なんデスか?」
「んー、よくは知らないんだけど、最近女の子に人気のアニメみたいだよ」

 もう少しよく聞いてみると、土屈ミエという名前の女の子がひょんなことから怪盗をやることになってしまって、でも恋人の長七蒔実クンは悪いことが大っ嫌いで怪盗ツイン☆テールのことも大嫌いなんデス。だからミエちゃんは、ツイン☆テールである事を知られると、蒔実クンに嫌われちゃう! と思っているみたいなんデス。
 よく分かりマス、四葉にもよく分かりマスよ! 兄チャマに嫌われちゃったら、四葉……とっても悲しくて、もう生きていけないデスー!

 グゥー…

 あ、お腹の虫が鳴いてマス……。兄チャマに聞かれてない……デスよね……?

「ははは、そろそろ行こうか、四葉。遊園地に着いたらまずはランチタイムだね♪」
「もう! 兄チャマのイジワルー」

 あうー、やっぱり聞かれちゃってたデスー! でもやっぱり、お腹が空いているときっといい推理も出来ないと思うので、兄チャマの言うことには賛成なのデス♪

「ねぇ兄チャマ。四葉、エビフライが食べたいなぁ♪」
「いいね、あそこのエビフライは美味しいよね。5本くらいは食べれそうな気がするなぁ」
「さっすが兄チャマ! 四葉はきっと2本くらいしか食べられないデスよ」

「はー、マンプク、マンプクなのデス。さすがにもう入らないデス」

 四葉たちは遊園地についたら、早速レストランに向かいマシタ。やっぱりあのレストランのエビフライは最高デスねぇ。さーて、おなかもいっぱいになったところでどれに乗りましょうか? 見上げるくらい大きい観覧車とか、ゴーってスゴイ音で走るジェットコースターとか、とーってもワクワクしてきちゃいます!

「兄チャマ、兄チャマ! どれから乗りマスか!」
「あはは、ミステリーの館はどうしたんだい?」
「あっ」

 うー、周りの乗り物を見てたら、四葉すっかりどこかへ忘れちゃってたみたいデス。でもでも、こんなにたくさん色んな乗り物があったら乗ってみたくなっちゃうのも仕方が無いし、それにジェットコースターに乗っている兄チャマとか、観覧車に乗っている兄チャマをチェキしたくなっちゃうし。あーん、四葉困っちゃうデス〜♪
 うーん、あれこれ考えてみたデスけど、やっぱりミステリーの館に行くことにしマシタ! クフフフフゥ♪ 四葉の推理力を兄チャマに見せつけちゃうのデス! 兄チャマは、「すごいな、四葉」って言ってくれるかな? キャー♪ 兄チャマ、今日は負けないデスよー!

 あー! 見えてきたデス♪ なんだかちょっとドキドキしてきマシタ……。兄チャマの方をチラッと見てみると……うわぁ、すっごく楽しそうな顔してマス。なんでこんなにニコニコ顔なんでしょうか……? もしかしてとーっても自信があるとか? ううっ、負けてられないデス! 名探偵四葉の名にかけて!
 ……あれ? 兄チャマ、急に止まってどうしたデスか? え? 前?
 うーん、なんだかミステリーの館の周りにたくさん人が集まってるみたいデスね……。何かあったんでしょうか? 早速近くの人に聞いてみマシタ。チェキ!

「エクスキューズミー! ミステリーの館で何があったんデスか?」
「えっ? あぁ、どうやら美少女怪盗クローバーの予告状が来たみたいで……」
「「美少女怪盗クローバー!!!」」

 思わず兄チャマとハモッちゃいマシタ! だってだって、すっごくビックリしたのデス! 美少女怪盗クローバーは四葉デス。四葉以外に美少女怪盗クローバーがいるわけないんデス! いったいどういうことなんデスか……?

「四葉、ここで待ってて。ちょっと行ってくる」
「えっ? 兄チャマ?」

 あー、もう人ごみに紛れて見えなくなっちゃったデス。もう兄チャマったら、最近本当に美少女怪盗クローバーにお熱なんデスからぁ。……って違います! あーん、兄チャマー! 待ってくださいー! 四葉も行きますー!
 そうやって兄チャマを追いかけてダッシュした直後デシタ。

「待てー! 美少女怪盗クローバー!」

 そう叫ぶ声が聞こえたのデス! 声の上がったほうを見ると、そこには確かに美少女怪盗クローバーが! 服装だけじゃなく、体型や声も四葉が変身したのと見分けがつかないくらい似ていマシタ。
 本当に美少女怪盗クローバー……。そんなはずはないデス! 本物は、本物は……この四葉デス! とは言うものの、こんな人前では変身するわけにはいかないし、今この場を離れるとあの偽美少女怪盗クローバーに見逃しちゃうし……うー、とにかく追いかけるデス! 

 偽美少女怪盗クローバーは物凄い身体能力で遊園地の中を逃げていきマス。走ってもみんな離される一方だし、ジャンプしたらメリーゴーラウンドの屋根まで届いちゃうくらいなんデス! あの偽者、只者じゃないデス。 あのクローバーアイ……もしかして本物!? 四葉が持ってるものと同じものだとしたら……マスターに関係があるということデスか……? 世の中には自分に似ている人が3人はいるって言いますけど、その人がマスターの元で怪盗をやっていてしかも日本に来るなんて、そんなの偶然にしちゃ出来すぎてマス!
 あっ! やっと追いついたデス……。ふと気付くと辺りには人の気配がありません。もしかして、誘われたデスか? そう思いながら電灯の上に立っている偽美少女怪盗クローバーを見上げると、ふと目が合いました。え!? こっちを見ているデスか!?

「あ、あなたは誰デスか!」
「誰って、美少女怪盗クローバーですよ」
「そ、そんなわけないデス!」
「そんなわけない? 何故そう言い切れるのですか?」
「そ、それは……」
「それは、あなたが美少女怪盗クローバーだから……。違いますか?」

 !!!

「ウフフ♪ 今日は只の顔見せですから。シーユー、ごきげんよう♪」

 そう言うと偽美少女怪盗クローバーは、どこからともなく現れたハンググライダーに乗って去っていきました。
 あの偽者は四葉が美少女怪盗クローバーだっていうことを知っている? でも、正体を知られているのに四葉の体には何の変化も見られないし、周りにも何もなさそう……。ということは、やっぱり……。でも、敵なのでしょうか? 味方なのでしょうか? どちらにしろ、これからは少し気をつける必要がありそうデスね……

 ……そういえば兄チャマは? もしかして迷子デスか?

 

「はぁ、はぁ……。美少女怪盗クローバー……どこへ逃げたんだ? それに四葉もどこかに行っちゃったみたいだし……。仕方ない、美少女怪盗クローバーは諦めて四葉を探すことにしようか。迷子になってたりしたら大変だもんな……。えーっと、ここは……どの辺だろう?」

 あれからずーっと気になっていたんですけど、しばらくは偽美少女怪盗クローバーが現れることはありませんデシタ。
 そして、偽者のことも段々うっすらとしか覚えていなくなってきた、そんな頃デシタ。

 クフフフゥ♪ 今日も兄チャマをチェキしちゃいますよ♪ 前回は尾行に失敗しちゃったデスけど、今日は上手いことやるデスよ。頭もお尻も隠すデス。やっぱり名探偵たるもの、きちんと尾行くらい出来なきゃホームズに笑われちゃいます!
 フムフム、今日の兄チャマの服装はブルーのシャツにブラックのズボン……。荷物は……特になさそうデスね。ということはそんなに遠くには行かないということでしょうか? ケーキ屋さんを左に曲がって……? ケーキ屋さん? こんなところにケーキ屋さんなんてあったデシタっけ? むぅ、チェキです! ……なにやらドアの前のボードに何か書いてありますね。……新装オープン……ということは、最近できたばかりということデスね! どうりで記憶に無いはずデス。なんて言ったって今日初めて見たんデスから♪ 今度兄チャマと一緒に食べに来ててみよーっと♪

「……あー! 兄チャマはどこデスか!」 

 四葉ったらケーキ屋さんに夢中になっちゃって、兄チャマのことをうっかり忘れるところデシタ! 急いで辺りを見回すと……あ、いたデス! どこかのお店に入ったみたいデスねぇ……。早速そのお店をチェキしに行くデス♪
 うーんと、喫茶店……のようですね。ここは確か兄チャマのお気に入りの喫茶店のはずデス。だってほら、兄チャマがこっちを向いて楽しそうに手を振ってるデス。

「……え? 兄チャマ?」

 四葉が目にしたのは、ガラス越しに四葉に向かって手を振ってる兄チャマの姿デシタ。うわー! 兄チャマったら、通りに面した席に座るなんて卑怯デス。それとも四葉の考えることは全部お見通し? もしかしたら最初から気付かれていたのかも! うわーん、また尾行失敗デスー!!
 そうやって枯れたお花みたいにしょんぼりしてると、兄チャマが手招きしてくれマシタ♪ うわーい! 兄チャマと喫茶店でコーヒータイムです♪ でも四葉はコーヒーはあんまり好きじゃなくって、やっぱり慣れているティーの方がいいんデス。
 誘われるままに店内に入って兄チャマの隣に座りました。いっつもは向かい合って座るんですけど、今日は待ち合わせをしてるということなので兄チャマの隣に座ることになりマシタ。イヤーン♪ 四葉、なんかちょっと照れちゃいます♪ でも、兄チャマの隣にいると何故か安心できるんですよねぇ……。
 アイスティーを頼んだ四葉は、兄チャマの待ち合わせの相手が来るまでお話をしたり――今日来るのはミステリー同好会のお友達みたいデス――、兄チャマをチェキしたり――兄チャマが頼んだのはアイスコーヒーでした――していました。今日はなかなか収穫の多い日デスねぇ。

カランカラン

 あっ、どうやらあの人が兄チャマの待ち合わせの相手みたいデス。って、なぁんだ、いつも見かける人でした。この人があの警部さんと親子だったから、兄チャマが美少女怪盗クローバーを追いかけるようになったようなものデスよ。まったく、こっちの都合も考えて欲しいものデス。

「おう! 大変だ、大変! あっ、四葉ちゃんこんにちは」
「こんにちはデス」
「入ってきていきなりなんだ? 何が大変だって言うんだ」
「何が大変って、……えーっと、アイスコーヒー一つ……、来たんだよ、美少女怪盗クローバーの予告状が!」

 えー! 四葉、予告状なんて出してないデスよ! マスターからの指令も来てないし……。……! フフフ、四葉ピンと来ちゃいました! 四葉の推理によると今回出された予告状は、偽美少女怪盗クローバーが出したものに違いないデス! ついに来たデスね、偽美少女怪盗クローバー! 今回はその正体を暴いてあげマス!

「しかも、堂々と店の扉に張ってあったって言うんだから、ホント、大胆不敵というか自信家というか」
「むぅ……なんかいつもと違うんだな。確かに見た目は派手だけど、そんな予告状の出し方なんて聞いたことないよ」

 そういえば、四葉はそんな風に堂々と予告状を出したことはなくて、いっつも盗む人のところへこっそり出してマシタ。そう、これはきっと四葉への、いや美少女怪盗クローバーへの挑戦状なのデス! いいでしょう、受けてたとうじゃないデスか! こっちが本物だということを見せつけてあげマス!

「まあとにかく、今度こそ美少女怪盗クローバーは僕が捕まえる……」
「兄チャマ! 四葉も連れてってクダサイ!」
「えっ? ダメだよ、危ないし」
「四葉も兄チャマのお手伝いがしたいデス! 四葉だって、立派な探偵なのデス!」
「うーん……仕方ないなぁ、でも僕の側から離れちゃダメだよ?」
「うわーい♪ ありがとう、兄チャマ!」

 さっすが兄チャマ♪ 四葉、嬉しかったのでついつい兄チャマに抱きついて、ありがとうのキッスをしちゃいマシタ♪
 クフフ♪  兄チャマったらお顔が真っ赤デス♪ 兄チャマは「日本にはしょっちゅうキスをする習慣はないんだよ」って言っていましたけど、四葉にとってはこれが親愛の証ですし、もう数え切れないくらいキッスしてるんだから、もういい加減慣れてくれてもいいのにな♪

「ねぇ、兄チャマ。狙われてる宝石店はもう少し向こうデスよ……」
「今日はここでいいんだ」

 四葉たちが今いるのは、偽美少女怪盗クローバーが狙っている宝石店から50mくらい離れた向かいの通りの路地なのデス。確かにお店はよく見えるので、見張りをするにはいい場所かもしれないデスけど、いざ偽美少女怪盗クローバーが現れたときにはすぐには駆けつけられないのデス。兄チャマはなにか考えがあるのでしょうか? 偽美少女怪盗クローバーがこっちに来るとわかっていたり?

 その時デシタ。空から舞い降りる一つの黒い影!

「はっはっはっ! ズバッと参上、ズバッと解決なのです!」
「出やがったな、美少女怪盗クローバー! 何が解決だ。いいか、今日こそ捕まえるぞ!」
「おー!」

 来ました! 偽美少女怪盗クローバーデス! なんて派手な登場なんでしょうか。よーし、早速捕まえに……って、あれ兄チャマ?
 四葉が美少女怪盗クローバーの方に走り出そうとしたその時でした。兄チャマが四葉の袖を掴んでストップを書けているのデス。

「あ、あれ? どうして、兄チャマ?」
「いいから。まだここで大人しくしてるんだ」
「でも……」

 そんなことしてると、宝石を盗まれて逃げられちゃいマス。そう言おうとした瞬間、ボン! と言う大きな音が宝石店の方から聞こえてきたのデス! 慌ててそっちを見てみるとお店の前は煙でよく見えなくなっていました。この匂い、煙の見た目……四葉が使ってる煙幕玉とそっくりデス。四葉の疑問は段々と確信へ繋がっていきマス。……もしかして、兄チャマはこのことを察知していたんデスか? 兄チャマはじーっと煙が上がっている方をじっと見たまま動く気配がありマセン。
 ……あーんもう、髪の毛が目の前をちらちらするデス。今日はなんでこんなに風が強いデスかー! 前髪を手で押さえながらまだ動かない兄チャマとじーっと煙の方を見てるばっかり。こんなんじゃ、偽者に逃げられちゃいマスー……。 あ! 煙が段々晴れてきた見たいデス。フムフム、やっぱり煙幕玉を屋外で使うときは天候に気をつけないとダメですネ……。って、あれ? 偽美少女怪盗クローバーがいないデス。もうお店の中に入っちゃったのでしょうか?

「おい! 美少女怪盗クローバーはどうした!」
「はっ! 店の中には入っていないようです!」
「ようです、では困るんだよ! 念のため宝石も調べろ!」
「はい!」

 どうやら、忽然と消えてしまったみたいですね……。……どうやら、宝石も盗まれた気配がないようデス……。諦めた? まさか、そんなはずはないデス。必ずまだこの辺にいるはずデス……

「四葉、美少女怪盗クローバーは逃げちゃったみたいだし、今日は帰ろうか」
「え? 帰っちゃうんデスか?」
「だって、宝石は盗まれていないみたいだしね」
「でも……」

 ? あれ? 兄チャマの腕に怪我なんてありましたっけ? 四葉のメモにはそんなこと書いた覚えはないし、今日だって怪我をした様子は無かったし……

「あなた、兄チャマじゃないデスね」
「え? 何を言ってるんだい、四葉。僕が四葉の兄じゃないなんてそんなことあるわけないじゃないか」
「その腕の怪我。兄チャマは最近怪我なんてしたことないデス」
「……」
「それに兄チャマは、最近美少女怪盗クローバーを捕まえることに熱心デス。まさかこれで終わりなんて思うわけないのデス」
「……うふふ♪ さすが、といったところかしら、美少女怪盗クローバーさん」

 ! やっぱり兄チャマじゃなかったのデスね! しかもこの感じは……

「偽美少女怪盗クローバーですネ!」
「あら、偽者とはちょっとひどい言い方じゃないかしら?」
「兄チャマの格好で喋るのはやめてクダサイ!」
「うふふ♪ お兄様のことが大好きなのね♪ だったら……ドレスアップ!」

 うわ! まばゆい光の中で偽者はドレスアップしていきました! そして……美少女怪盗クローバーの姿になったのデス!

「美少女怪盗クローバー、参上♪ なんてね♪」

 くっ、このままじゃやられちゃいマス……。どうやら近くに兄チャマはいないみたいだし……変身デス!

「ドレスアップ!」

 今度は四葉がまばゆい光に包まれる番。ちなみにこの光は物凄いエネルギーの奔流なので、迂闊に近づくと火傷しちゃいマスよ♪

「愛ある限り戦いマショウ! 美少女怪盗クローバー!!」

 対峙する二人の美少女怪盗クローバー。スラリ、とクローバーサーベルを抜きます。

「兄チャマはどこデスか」
「それは私に勝てたら、教えてあげるわ♪」

 キンッ! キンッ!

 四葉が放つ突き、払い、みんな防がれてしまいマス……。クゥ……手強いデス……。でも勝たないと兄チャマが……! 攻めながらなんとかスキをうかがって……今デス!

「ターッ!!」
「甘い!」

 えっ? 四葉がサーベルを向けた時には、すでに目の前に偽者のサーベルの切っ先が……。

「私の勝ちのようね」
「……フフ、まだデスよ」

 クローバーサーベルの柄に付いているボタンを押すと……ヒュンッ! という具合に刃が飛ぶようになっているのデスよ……最終手段デスけどね。四葉が飛ばしたサーベルの刃は、偽美少女怪盗クローバーの帽子を髪の毛と一緒に貫いて向こう側の壁に刺さりマシタ。……髪の毛?

「なかなかやるわね、美少女怪盗クローバー……」

 偽者の方を見ると、頭からは二本のしっぽが風に揺れていました。あの髪の毛はイミテーションだった、ということデスか。こんなような姿をどこかで見たような……。あ! この間兄チャマと見たアニメの怪盗ツイン☆テール!

「偽者の正体は怪盗ツイン☆テールだったんですネ!」
「怪盗ツイン☆テール? あぁ、あのアニメの……。残念ながら私はそんな名前じゃないわよ、クローバー」
「え? じゃあ本当の名前は……」
「ウフフ♪」

 そう不敵に笑うとツイン☆テールは目の前から消えちゃったのデス! いや、上デス! ジャンプして屋根の上にのぼったのデス!

「ウフフ♪ あなたのお兄様はその路地をずっと先に行ったところで眠ってもらっているわ。そして、私の名前……だったかしら。いいわ、私に勝ったんだものね、教えてあげるわ。私の名前はハート。クイーン・ハート。」
「クイーン・ハート……」
「そろそろ来る頃かしら……。それじゃ、また会いましょ、美少女怪盗クローバーさん♪ ごきげんよう♪」

 そう言うと遊園地の時にも見たハンググライダーが飛んできて、あっという間に小さくなってしまいマシタ……。
 クイーン・ハート……まだ聞きたいことがたくさんありマス……。そもそもハートは美少女怪盗クローバーの敵? 味方? マスターに関係あるのは間違いないんデスけど……。とにかく今度会った時はもっと色んな話をチェキさせてもらいますよ!

「さて、兄チャマを探しに行かなくちゃ」

 今日はなんだか兄チャマに悪いことをしちゃったデス……。だから明日はうーんと兄チャマのお世話をしてあげることにしマス! 兄チャマ、喜んでくれるといいなぁ……♪

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