【転ばないで!】

 あのね、お兄ちゃま。覚えてるかな?

「はぁ……、花穂ってばどうしてこんなにドジばっかりなんだろう……」

 湯船に浸かってると、なんだか今日の練習で失敗したことばっかり思い出しちゃう……。今日のパートは、特に花穂の苦手なところだったの。それでも、毎日毎日練習しているかいもあって、途中までは、「わー、今日はこのまま全部出来ちゃうかも♪」 って思ってたんだけど……

「あっ!」

 バトンがポーンって飛んで行っちゃって……また、先輩に怒られちゃった……。こんなのじゃ、お兄ちゃまのこと全然応援できないよー!

 次の日、お兄ちゃまが花穂のことをお迎えに来てくれました。お兄ちゃまと一緒に学校に行けるなんて、今日は朝からラッキーだな♪ って思ってたら……え!? お兄ちゃま、日曜日にテニスの試合があるの? うん、花穂、絶対お兄ちゃまの応援に行く!
 お兄ちゃまは、「花穂が応援に来てくれるなら頑張らないとね♪」って言って、花穂の頭を撫でてくれました♪ えへへっ♪ よーし、頑張るぞー!

「フレーフレー、お兄ちゃまっ♪」

 お兄ちゃまの試合が始まりました! 花穂の練習の成果をお兄ちゃまに見せる時だ、って思って一生懸命応援しました♪ どうか、お兄ちゃまが勝てますように……!
 最初の方はお兄ちゃまの方が優勢だったんだけど、相手の人の方に得点が入り出してきて……ついに同点になっちゃったの!うん、こんな時こそ花穂の出番だよね。だから花穂、今よりも大きく、お空の向こうまで届くような声でお兄ちゃまのことを応援しました!

「頑張ってー! お兄ちゃまー!」

 だけど、ちょっと無理をしたせいか、着地した時にバランスを崩しちゃって……あっ、転んじゃう! って思ったけど、ここで花穂が転んじゃったら、お兄ちゃまのこと応援できない! お兄ちゃまが負けちゃう! そう強く思ったら、体が自然に動いてちゃんと体勢を立て直すことができたんだ♪
 試合はお兄ちゃまの勝ち♪ 花穂、ちゃんと失敗しないで応援できたよ♪

「ありがとう、花穂。花穂の応援、ちゃんと聞こえたよ♪」

 あのね、お兄ちゃま。花穂ね、花穂の応援でお兄ちゃまのお役に立てることが、とっても嬉しいの♪ お兄ちゃま、だーい好き♪

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