【風はきまぐれ】
ねぇ、あにぃは覚えてる……かな?
今日、クラスの友達に、秋用のお洋服を見たいから買い物に付き合って、って誘われたんだ。うーん、誘ってくれたのは嬉しいんだけど、可愛らしい女の子っぽい服って苦手だし、ちょっと困っちゃった。でも、今日は特に用事があるわけでもないし、「いいよ」って答えたんだ。その後大変なことになるなんて、この時はちっとも思ってなかったんだよ!
今、ボクの目の前には、ヒラヒラしたスカートがいっぱい……。ボクが持ってるスカートなんて、今着てる学校の制服くらいしか思いつかないや、あはは……。なんだか、ちょっと居心地が悪くなって、外で待つことにしたんだ。……うわっ、今日は風が強いなぁ。
「よう、衛!」
え? って思って振り返ると、そこにいたのはあにぃだったんだ! もうビックリしちゃって、心臓が飛び出るかと思ったよ。あにぃは「何見てるんだい」、なんて聞いてきたから、ボクが友達のお誘いで一緒に買い物に来たことを話したんだ。そしたら、「ふーん、衛もこういうのが着たいのかな、って思っちゃったよ」だって! もう、あにいったら……。でも、もしかして、あにぃはこういう服を着ている子の方が好き、なのかな……。
「ねぇ、あにぃ……。あにぃは、どんなのがいいと思う……?」
「え? ……あ! うーん、そうだな……。スカートなんかいいんじゃないか?」
……え? あにぃ……あにぃもやっぱり……、女の子らしい服を着ている方が好きなの? そう思ったら、体が勝手に走り出していた。……ボク、ボク、どうしたらいいの?
気がついたら、あにぃの家の近くの公園に来ていて……。木に体を預けて、ぼーっと空を眺めていたんだ……。だから、ボクに近づいてくる影に全然気がつかなかったんだよね。
「衛、どうしたんだ?」
「ねえ、あにぃ。あにぃは本当に、ボクがスカート履いたほうがいいって、思ってる、の?」
「え? 衛、何のことを言ってるんだい?」
とぼけないでよ! だって、さっき……って、ボクが言い出したら、あにぃは急に笑い出したんだよ! もう、何が可笑しいの、ってよく聞いてみたら、さっきあにぃが言ったのは「スカート」じゃなくて「スケート」だったんだって! ボクが、今度遊びに行こうよ♪、って誘ってたのを思い出して、何をするか聞いてきたんだと思ったんだってさ!
「じゃあ、ボクの勘違い……ってこと? な、なぁんだ、そうだよね♪」
あにぃ、あの時はゴメンね。でも、ボク、あにぃとずっと一緒にいたいんだ♪ あにぃ……大好き……だよ。