【神様の悪戯】

 お兄様、覚えているかしら?

 朝。
 昨日、お兄様に送ったメールが返ってきてるか見てみたけど、来てないみたい。残念。
 仕方ないから電話をしてみたけれど、留守番電話。
「おはよう、お兄様。もう、折角可愛い妹が電話したのにいないなんてダメじゃないの、お兄様ったら。これを聞いたら電話くださいね。お兄様の愛する咲耶より♪」

 昼。
 お兄様からの返事は未だ来ない。もう、お兄様ったらどこ行っちゃったのかしら。もしかして、まだ寝てるのかも。そう思ったら居ても立ってもいられなくて、家を飛び出しちゃった♪ いつお兄様に会ってもいいように、身だしなみはきっちり整えて。私を待たせるなんて、この世界でお兄様たった1人だけなんだから♪

 夕方。
 お兄様の家に行ってみたものの空振り。そのまま帰る気分でもなかったので、商店街をぶらついてみたり。お兄様の大好きな本屋に二人でよく来るオープンカフェ、あ、ここは去年水着を買ったお店……。いやがるお兄様を無理矢理連れてきて、どの水着がいいか選んでもらったのよね。うふふっ♪ あの時のお兄様の顔、とっても可愛かったわ♪

 辺りは段々と薄暗くなってきて、そのうちなんだか、すれ違う人がみんなお兄様じゃないかしら、って思えて……。はぁ……、なんだか足も冷えてきたし、そろそろ帰りましょ。お兄様に会えない日があるのは当然だもの。別に会えなくたって、会えなくたって……。

「お兄様の………バカ………」

 夜。
 玄関を開けるとそこには見慣れた靴が……。お兄様!?

「おかえり咲耶、遅かったね」

 もう、お兄様ったら……私の気も知らないで……。
話を聞いてみると、昨日はパソコンの調子がおかしくて、朝はコンビニに買い物。お昼ごろに留守番電話に気付いて電話をかけたけど、私が出た後。商店街で本を買った後、喫茶店でコーヒーを飲みながら読書。で、私のことが気になって今ここにいる、と。
 はぁ……、どうしてこんなに見事にすれ違ってるのかしら。でも、でもねこうして会えたから……。今日は帰してあげないんだから、覚悟してよね、お兄様♪

 ねぇ、お兄様。お兄様と一緒にいられる時間が私にとって、なによりの幸せなの。だからお兄様、一生離してあげないんだから♪

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