【伝えたい言葉、伝えたい思い】
ねえアニキ。アニキは覚えてる、よね?
「はぁ……」
もうこれで、何度目になるか分からない溜め息。目の前には男物の新しい時計。
あの日、いつものようにメカのパーツを買いに行った私は、大した収穫も無く家路に着いたんだ。その時、目に飛び込んできたのがこの時計。あれ? この時計どこかで見たことがある。そう思って記憶を引っ張り出してきたら、それはアニキが欲しがってた時計だったの! アニキが偶然来てくれた日、たまたま開いた雑誌に載っていたもの。
確かに値の張るものだったけど、財布の中身は何とか足りる……。それに、アニキにはいっつも援助してもらってばっかりだし、たまには私もアニキに何かプレゼントしたいな、って思ってた矢先のことだったから思い切って購入することに決めたの♪
って買ったはいいんだけど、何も無いのに突然プレゼントなんて少しおかしいよねとか、アニキになんて言って渡せばいいの? とか、なんだか色々考えちゃってなかなか踏ん切りがつかなくって……。そうこうしているうちに、なんだか……眠くなってきちゃった……ふわぁ……。私が眠りに入るのにはそう時間はかからなかったけど、メカ鈴凛の電源を入れっぱなしだってこと、すっかり忘れちゃってたのよね……。
「おーい! 鈴凛ー! いるかー!」
え? 突然のアニキの声にビックリして飛び起きた私は、周りを見てもう一度ビックリ! だって、そこにいたはずのメカ鈴凛がいなくなってるんだもん!
とにかく、今はアニキを出迎えなきゃ、と思って玄関のドアを開けると……
「ああ、鈴凛がいてよかったよ。なあ、この子なんとかしてくれないかな?」
もう今度は、前の2回の比にならないくらいビックリ! だって、アニキが背負ってたのはメカ鈴凛だったんだもん!
「……うん、だから玄関を開けたらメカ鈴凛がいて、アニキに渡したい……、って言った途端に動かなくなっちゃうもんだから、もう焦っちゃったよ。本当に鈴凛がいてくれて助かったよ。で、僕に何か渡したいものでもあるの? 鈴凛」
アニキに渡したい……、ってメカ鈴凛ったら私の言ったことを記憶してたのね……もう。もしかして、私がなかなかアニキに会いに行かないから、じれて代わりに伝えてきてくれたってこと? まさかそんなこと……ね。でも、ありがとう、メカ鈴凛♪
アニキ、私……いつでも資金援助待ってるから♪ だからさ……アニキ……大好きだよ……♪