【知識の源】
やあ、兄くん………。兄くんは………覚えているかな………。
そう……あの日は、注文していた本を受け取りに行こうとしていたんだ………。
書店へ向かっていた私を呼び止めたのは……他の誰でもない、兄くんだった………。
「やあ、千影。今日は買い物か何かかい?」
「まあ………そんなところだね………」
聞けば、兄くんも………私と同じ書店へ向かおうとしていたらしい………。フフッ………、偶然? いや、違うな………。今日は………お互いの魂が強く引き合っているらしい………。兄くんは………何も感じてはいないのだろうけどね………。
目的の書店に着いた私は、まず注文していた本を受け取ることにした………。ちょっと厚めの本が3冊………。手提げ袋に入っているとはいえ………持って歩くのには少々骨が折れるかもしれないな………。
「千影、僕が持ってあげるよ」
フフッ、兄くん………君はいつだってそうだ………。私が困っていると………どんな時でもすぐに側にやって来て、あっという間に助けてくれる………。
兄くんに………本を持ってもらった私は………目新しいものが無いか、少し店内を巡ってみることにしたんだ………。
「おや? これは………」
丁度その時………自分の目的の本を探していた兄くんが………やってきたんだ………。そして、こう言った………。
「何か欲しい本があれば、僕がプレゼントしてあげるよ」
どうやら………兄らしいところを見せたかったらしいが………兄くん………そんなことを言って、後悔しても知らないよ………? でも、まあいい機会かもしれない………。そう思って、一冊の本を指差したんだ………。
その時の、兄くんの顔といったらなかったよ………。まったく………可愛いな、兄くんは………。私の予想通りの反応だよ………。そんなに意外だったかい………私が、料理の本を読む………なんて………。
兄くん………私は兄くんの全てを知っているつもりだ………。だから、兄くんにも………私の全てを知って………欲しいんだよ………。