【素敵な贈り物】

　ピー、ピー、小鳥の囀る声が聞こえてきます。
　うーん……今日もいい天気♪　大きく一つ伸びをして、着替えをはじめます。
　今日は、わたくしの誕生日♪　兄上様が来てくれることになっています♪　うふふ♪　兄上様に、元気になったわたくしの姿を見てもらわなくちゃ♪

　「鞠絵ちゃん、荷物が届いていますよ」

　あ、はい、ありがとうございます。
　……あら？　兄上様からだわ。
　包みには手紙が付いていて、早速封を開けて中身を読んでみます。
　『ゴメン、鞠絵。誕生日に行けそうに無いんだ。だからプレゼントだけ贈ります。この埋め合わせは必ずするから』
　……仕方ありません。１年に一度の誕生日ですけれども、兄上様のご都合もございますし……。いつも、兄上様にわがままばかり申しているわたくしですから、贅沢は言ってはいけませんね……。そう……仕方の無いことなんです……。

　その日の午後、療養所のお友達や看護婦さんがわたくしのお誕生会を開いてくれました。とても、とても楽しかったです♪　……けれども、「鞠絵ちゃん、何か悩み事でもあるの？」と聞かれたときは、ドキッとしてしまいました……。その場はなんとかごまかしたのですけれど……兄上様のことを考えていたのが顔に出てしまっていたのでしょうか。

　お誕生会が終わってからお部屋に戻って、ベッドに座って……。サイドボードに立ててある兄上様のお写真……。……兄上様……会いたい……。

　コンコン

　大きく一つ深呼吸……人前で落ち込んだ顔は見せられないですもの、ね。
　
「開いてますよ、どうぞ」

　そして、ドアが開いたその先には……あ、兄上様！？
　どうして！？　今日はこちらには来られないはずでは……。

「たまには、鞠絵の驚く顔が見たくてさ」

　もう、兄上様ったら……わたくしのことからかい過ぎですよ。……うふふ♪　そうだ♪

「兄上様、来てくださって嬉……しい……」
「！　ま、鞠絵！」

　兄上様をだましているのだと思うと、少しドキドキしてきます♪　兄上様が近づいてくる……。隣に兄上様の気配を感じて……すっと起き上がって、満面の笑みで。

「……兄上様♪　これでおあいこですよ♪」

　兄上様は呆気に取られたお顔で……うふふ♪　兄上様♪　せっかくのかっこいいお顔が台無しですよ♪
　安心したのか兄上様は、「鞠絵のほうが一枚上手だったか」って言いながら、お笑いになって。わたくしもそれにつられて、そのまま大きな声で二人で笑い合っていました♪

「HAPPY　BIRTHDAY！　鞠絵！」

　ですから、わたくしもとびっきりの笑顔で♪

「はい、兄上様♪　ありがとうございます♪　わたくし、今とっても幸せです♪」