【交わり】

 

「なあ、千影」
「…………ん? どうしたんだい? 咲耶…………」
「あの娘達は、君の知り合いかい?」
「いや…………知らないな…………」

 だったら、いったいなんだというのだろう?

 僕達は、駅前の公園にあるベンチでお姉様を待っている。
 昨日の夜メールが来て、ちょっと買い物に付き合って欲しいということだった。お姉様とデート! そう思ったんだけど、人手が多い方がいいという事で千影もここにいる、というわけ。せっかく二人きりだと思ったのに、残念。お姉様ったら、一体何を買うつもりなのかな? ……だけど、まあ仕方ないか。
 せっかくだから春歌あたりにも声をかけたんだけど、稽古がどうとかで来られないそうだ。どうやら試合が近いそうだから、見に行ってみようかなぁ……。

 にしても……あの娘達は、さっきからこっちをジロジロ見て何なんだ。まったく、失礼してしまうな!

「まあ、そうむくれない方がいい…………せっかくのキレイな顔が台無しになってしまうからね…………」
「……どういたしまして。でも、あんまり気色の悪いことは言わないでほしいな」
「フフ…………僕はあくまでも事実を述べたに過ぎないさ…………。最近は、冷凍保存などという技術が発達してきているから…………君のそのキレイな顔も、その美しさを失うことなく永遠を保つことができるのだよ…………。高度に発達した科学というものは…………魔術とどこが違うのだろうね…………フフフフ…………」

 ふぅ……。相変わらず、摩訶不思議なことばかり言うな、千影は……。
 ……ッ! な、ちょっ、ちょっと、何するんだよ! 急に僕の頬を撫でるなんて、何考えてるんだよ……。
 ……はぁ……千影もこれさえなければいいんだけど……。……まぁ、その割には仲が悪いというわけでもないんだけど、さ。

「フフ…………あの娘達にサービスしてあげただけさ…………」

 見れば、女の子達は、なんだか顔を赤らめてお互いを見合っていた。
 どうやら、千影も気になっていたようだけど、放っておけばよかったんだよ。……まったく、千影の行動は時々突飛だよなぁ……。

「からかうのもいいかげんにしてくれないか。僕をからかっていいのは、お姉様だけだ」
「…………よもや、忘れてしまったわけでもないだろう…………、小さい頃、僕のことをよくからかってたのは咲耶、君の方だということを、ね…………」
「……はいはい、僕の負けだよ……」

 ダメだ……、千影のペースに完全にはまってしまった……。確かに小さい頃は、よく千影をからかっていたような気もするけど、いつの間にか攻守逆転! って感じでさ。
 とは言っても、結局最後に勝つのはお姉様なんだけどね。

 ……ん? どうやら来たみたいだ♪

「さぁ、行こうか…………どうやら、お姫様の到着だ…………」
「じゃあ、僕が左腕をもらう」
「好きにするといいさ…………」

 お姉様! もう、そんなに恥ずかしがることは無いって! 姉弟なんだから、腕くらい組んだっていいんだって、いつも言ってるでしょ?

「フフ…………姉くん、両手に花、だね…………」

 お姉様はやっぱり困ったような顔をしていたけど、でも、こうやって困らせることができるのって、弟の特権だもの♪ 千影だって、きっとおんなじ気持ちさ。
 あはは♪ 今日も楽しくなりそうだ!

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