「もぅ……にいさまったらカゼ引いちゃいますの」

 起きている、と寝ている、その境目で聞こえる声。

 

 

お目覚めの方法

 

 

「ん……?」

 軽くて暖かいものが触れる感触で目が覚める。

「にいさま……起きちゃいましたの?」

 そうすると、目の前に淡い水色のタオルケットを広げた白雪。

「ああ、起きたみたいだ……」

「ごめんなさい、ですの……」

「ん? なんで?」

 ソファーの上で居住まいを正す。

 腰の骨が小気味の良い音を立てた。

「だってだって……にいさま、とっても気持ち良さそうでしたのに」

 まるめた水色を抱きしめて、すごく残念そうに……

 そんな白雪の頭に軽く手を置いて。

「でも、白雪の顔見てるほうがずっとうれしい」

「にいさま……」

「だから、ほら」

 タオルケットごと抱き上げる小さな身体。

 ドレスの裾のように踊る布地……

「きゃっ?」

 目的地は、目的は……すぐ隣に。

 片手に収まる肩を抱き寄せて、二人で日向の香りに埋もれる。

「このほうが……いいだろ?」

「にいさま、あったかいですの」

「うん、俺も白雪が一緒だと、ね」

 そして、人差し指を立てて提案。

「で……長く起きていられた方が負けた方の寝顔を独占」

「姫、負けちゃいそうですの」

「ま、俺も自信ないんだけど」

 ふたりで、にっこり笑い合って……

「で、あと……」

 立てたままの人差し指を小さな唇に軽く触れさせる。

「にいさま……」

「先に起きた方が、遅い方を起こす時は……わかる?」

「モチロン、ですの」

 大切なお姫様からのキス、ステキな目覚め。

 逆の時は……王子様の自信はないけれど、優しいキスで起こしてあげよう。

 

 

 

END