車内に甘い吐息が響いた。 
それを必死に殺しながら、青い瞳をした青年はテーブルに伏せている。 
耳には携帯電話をあてがって、背中からの刺激に耐えるように。 

「…ッ…そろそろ電話、切ってもいい?」 

掠れた声で言った青年はテーブルに突っ伏した姿のまま大きく喘いだ。 
携帯電話を握る手は震えている。 
―――こんな目に合うくらいなら最初から電話なんてするんじゃなかった。 
ウラタロスはそう毒づいて携帯電話をきつく握り締める。 
背中からは、休む暇などなく大きな体がウラタロスを突き上げている。 
車内に誰もいないのを良いことに、テーブルに上体を伏せて下肢を高く上げた卑猥な格好を強要させられているウラタロスは羞恥に頬を赤く染めた。 
大きく体重をかけるその体をきつく睨んで艶っぽい吐息を逃がしながら、ウラタロスは口を開く。 

「…キンちゃ…ん、あんまり動くと…っあ…バレちゃうんですけど」 

恨みがましいその声に、背中の人物は金の瞳をキュッと細めて笑う。 
ウラタロスの着ているスーツに手を伸ばして無遠慮に捲り上げる手が、彼の突起をくすぐった。 
無骨な手が突起を擦り上げるたびにウラタロスは艶めいた声を上げてテーブルに上体を擦り付ける。 
電話を片手に恋人に犯されているなんて、おかしな光景だ。 
ウラタロスは自嘲気味に笑って電話の相手へと声をかける。 
できるだけ、平然と。 

「ねえ…マイ、僕用事が出来ちゃった、よ…。そろそろ切ってもいいかな?また電話するから」 

『やーん、何で冷たいのー?』 

甘い声でそう言っても電話の相手である女性は素直に言う事を聞いてくれない。 
ウラタロスは困ったように笑いながら、内心で冷汗を流していた。 
声はだんだんと我慢ができなくなっている。 
このまま行為を続けられたら、電話の相手もウラタロスの様子が可笑しいことに気付いてしまうはずだ。 
ウラタロスだって電話の相手といつまでも話していたい。 
それを邪魔したのが、背中からぎゅっと抱きついてくる大柄の彼だ。 

「聞かせてやればエエやろ。お前は女にエッチな声を聞かれて感じる変態なんやから」 

「ちょっ…何怒ってんの、キンちゃんっ…ひっ、あぁ…っ!」 

不機嫌そうな恋人の声に声を上げたウラタロスはひっくり返ったような喘ぎ声を上げて電話をきつく掴んだ。 
頬に赤みが増していく。 
恋人であるキンタロスは、ウラタロスをテーブルに押し付けた格好のまま秘められた部分に自分のものを擦り付けながら囁いた。 

「電話、続けろ。最後まで聞かせたるんや」 

キンタロスは事務的な声で言うと、テーブルに押し付けたままのウラタロスが着ているスーツを勢いよく引き剥がした。 
彼の怪力には毎回驚かされる。 
ウラタロスはそんな事をおもいながらも足を小さく震わせて気丈に唇の端を上げた。 

「マイ、僕なんだか熱っぽいみたい。だから電話は今度にしよう?」 

震える声で言うと、電話相手の女性は拗ねたような声を上げる。 
―――頼む、もう限界だよ。 
ウラタロスはきつく唇を噛みながらキンタロスに振り返った。 
"許して" 
声にならない懇願をしてウラタロスが唇を震わせる。 
強く噛み締めた唇は真っ赤に腫れ上がっていて艶めかしい。 
キンタロスは返事をせずにウラタロスの唇を奪った。 
噛み締められた唇を舌でなぞってやると、小さな悲鳴が漏れる。 
同時にキンタロスの咥内に血の味が広がった。 

「…お前、噛み過ぎやろ。血ィ出とるで」 

キンタロスが眉を下げて言うと、ウラタロスは今にも泣きそうな顔をしてコバルトブルーの瞳をきつく細める。 
晴れ上がっている唇は僅かに切れていて赤い血が浮いていた。 
痛々しくも艶めいたその姿に、キンタロスが息を飲む。 
ウラタロスは唇を震わせながら携帯電話をきつく握った。 

「キンちゃんのせいでしょ…」 

恨みのこもったその声にキンタロスは何ともない顔をして笑みを浮かべる。 
それどころか腰の動きを早めてウラタロスの体を犯していく。 
ウラタロスは携帯電話を両手で持ち直してしゃくりあげるような声を上げた。 

「ふぁっ…やだ…もうやだぁ!キンちゃん…っ、許してぇ…!」 

テーブルに腹をついた姿勢で、後ろから何度も突かれながらウラタロスが喘ぐ。 
声を上げれば痛む唇の赤がゆっくりとテーブルに滴り落ちた。 

『ねぇ…ちょっと、今…何してるの?』 

訝しげな女性の声がウラタロスの耳に入る。 
ウラタロスはコバルトブルーの瞳から涙を零してかぶりを振った。 
それでも腰の突き上げは容赦なくウラタロスから理性を奪う。 
擦り上げられる結合部が淫らな音を立てて、電話の向こうにまで届いてしまいそうだ。 
ウラタロスは舌を突き出して震える声を上げる。 

「…う、ぁ…後ろ、から…突かれてるのぉ…っ!あぐっ…!」 

普段のクールな口振りからは想像出来ないくらいの乱れた声で言ったウラタロスは、キンタロスの動きに合わせるように腰をぎこちなく振りながら熱い吐息を携帯電話に響かせる。 
キンタロスは笑みを浮かべてウラタロスのものを片手で掴んだ。 
先走りで床を濡らしながら勃ち上がっているウラタロス自身は、キンタロスの指で擦り上げられるたびにぐちゅりと淫猥な音を立てる。 
ウラタロスは犬のように舌を出して苦しそうな声を上げる。 
絶頂が近いのか、何度もキンタロスの名前を呼んで。 

「あふ…っ、んっ…うぅ!キンちゃんの…硬くて、っ…大きいよぉ…!もっと…ふぁ…」 

舌足らずな声で言ったウラタロスはテーブルに両手をついて上体を起こした。 
携帯電話はテーブルの上に放って、行為に没頭するように声を上げる。 
そんなウラタロスを見下ろしてキンタロスが言った。 

「女に喘ぎ声聞かれて感じるんか?亀の字はホンマに淫乱やな…」 

「んぁ…僕をこんなにしたのは…っく…キンちゃんなのに…ひどいよ…」 

苦しげに振り返ったウラタロスはキンタロスに腕を伸ばしてねだるような声を上げる。 
赤く腫れているその唇に再び口付けると、ウラタロスは甘えるように目を伏せて両腕をキンタロスの首筋に絡めた。 
車内に濡れた水音が重なり合って淫らなメロディーを響かせる。 
次第に早まる突き上げに、ウラタロスは口の端から吐息を漏らして恍惚にも近い表情を浮かべる。 
深い口付けを何度も交わして、キンタロスの動きを助けるように体の力を抜きながら揺さぶられていた。 

「…っんふ…はぁ、あん…キンちゃ…気持ちいいよぉっ…もっと、あぁ…ッ…!」 

ウラタロスの声が一層艶めかしいものへ変化していく。 
同時に、キンタロスはウラタロスの体を抱きなおした。 
一旦自身をギリギリまで引き抜いて、ウラタロスをテーブルに座らせる。 
ウラタロスは引き破られたスーツから見え隠れする胸元を上下させてキンタロスの首筋に顔を埋めた。 

「…僕のこと、いっぱいいじめて。キンちゃんの好きに、して良いよ…」 

囁くような声で言ったウラタロスは、濡れたコバルトブルーの瞳を伏せて笑う。 
キンタロスはウラタロスを抱き寄せて腰を突き上げた。 
ギリギリまで引き抜かれたそれが再びウラタロスの体内へ挿入されていく。 
散々前触れで生クリームやらジャムを塗りたくられた部分は、すんなりとキンタロスのものを受け入れてピクリと生き物のように痙攣する。 
キンタロスは結合部をなぞりながら笑った。 

「お前のココ、俺のもの咥えて離さへん…。キツく締め付けて吸い付いてくるで」 

囁くようなキンタロスの声に、ウラタロスは耳まで赤く染め上げて唇を噛んだ。 
だが、キンタロスの指がそれを制する。 

「また血ィ出るやろ、やめとき」 

「…血が出たのはキンちゃんのせいだよ…っあ、あう…!」 

拗ねたように呟いたウラタロスは、いきなり突き上げられてひっくり返ったような声を上げた。 
その声が次第に甘ったるいものへ変わっていくまで、さほど時間はかからない。 
ウラタロスは揺さぶられながら嬌声を上げた。 
電話の相手に聞かせるように甘く、尾を引いた喘ぎ声を響かせる。 
―――だって、もう我慢できないんだ。 
―――キンちゃんが欲しい。 
―――体が熱くてワケが解らないんだもん。 
―――マイ、ごめんよ。 
ウラタロスは朦朧とした頭で考えながら次第に高みへ昇っていった。 
最奥をいたずらに突き上げられて、甘ったるい声を上げる。 
そんなウラタロスを見つめて、キンタロスは微笑みながら言う。 

「…綺麗や。愛しとる」 

どんな口説き文句や甘ったるい言葉も、キンタロスの囁きには敵わない。 
ウラタロスは何度も頷いてキンタロスに口付けた。 
徐々にウラタロスの体内から快感が競りあがってくる。 

「…っふ…あ、ぁ…キンちゃん、好き…ひっ、ぁあああ…ぁああッ!!」 

長い長い嬌声のあと、キンタロスのものとウラタロスのものから熱い迸りが溢れた。 
それはすぐに弾けて、互いの頭の中をまっ白に塗り替えていく。 
ウラタロスは体の力を抜いてゆっくりとテーブルに上体を倒した。 
額に汗を浮かべて、疲労とも恍惚ともつかない表情を浮かべながら、ウラタロスが艶めいた吐息を吐き出す。 

「はぁ…は…ぁ…キンちゃんの、鬼畜」 

「ははは…こういうの鬼畜って言うんか?」 

「…っ、馬鹿とも言うね」 

キンタロスの楽しそうな口振りに顔を赤らめたウラタロスはすぐに携帯へ顔を向けた。 
案の定、電話は切られている。 
ウラタロスは目を伏せてため息をつくとすぐにアドレス帳のボタンを押して、女性のメールアドレス、電話番号を消去した。 

「……これで3人目、か。キンちゃんのせいで別れさせられた女の子の数は」 

ぽつりと呟いたウラタロスは、キンタロスをじっと見つめて口を開いた。 
少しだけ身を捩って、恨めしそうな瞳を見せたもののコバルトブルーの目はどこか柔らかい。 
キンタロスがウラタロスの体を抱き寄せて言葉の続きを促すと、彼はキンタロスの額を指で小突いた。 

「…全部僕のお気に入りの子だったんだよ。…責任取ってもらえる?」 

「どうやって?」 

キンタロスの不思議そうな問いかけに、ウラタロスが笑みを浮かべる。 
金のメッシュを指先でくすぐってからゆっくりと唇を合わせて甘えるように抱き寄せる。 
問いに答えはしないものの、ウラタロスは満足したような顔つきでキンタロスの唇を吸い上げた。 
僅かに唇が痛むのか、眉を寄せるがどこか幸せそうに笑って。 

「…キンちゃんのいじわる」 

囁くように言った。 


















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7月21日に書いたもの。
てれほんせっくす…になる、のか?(曖昧)
何故かキンさんに鬼畜フィルターがかかったので仕上げたもの。