世界観
「未来ショップ」にはイマジンという生き物が売られている。
イマジンは飼い主の愛を受けて成長し、飼い主の願いをひとつだけ叶えると言う不思議な生き物だ。
野上良太郎は、常人には見えないはずの「未来ショップ」が見える。
そこには見たことのない動物「イマジン」が売られていた。
偶然立ち寄った未来ショップで、在庫処分されそうになっているモモタロスを見つけた良太郎はおもわず彼を購入してしまい…。
電王キャラはほとんど登場のまったり甘々。
基本は良桃。他にも色々登場予定。
2話の主要人物
野上良太郎
普段は不幸で気が弱く、流されやすい性格の18歳。
だが実は腹黒でとんでもなく意地が悪い。
「未来ショップ」で不思議な生き物モモタロスを購入した日から奇妙な出来事が起き始める。
基本的に人が良く、困っている人や生き物をほおっておけないため、モモタロスを購入した後はとんでもない事に…。
姉とふたり暮らし。
財布の中身はウラタロス代に消え、さらにファーストキスもウラタロスに奪われた。
モモタロス
全身が赤く、鬼のような姿をした生き物。全長10センチ。25g。
525円で良太郎が購入。
元気がよく、すばしっこい。
良太郎を困らせているが、在庫処分されそうになっていた自分の事を助けてくれた良太郎の事が何より好き。
体が鈍ることを嫌っている。
良太郎のファーストキスを密かに狙っていたらしい(本人は言いかけて否定している)
ウラタロス
全身は青く亀のような姿をした生き物。全長11センチ20g。
性格は極めて両極端で掴みにくい。
モモタロスのことが不快以外の何者でもない。
実はちょっとした弱みがある…。
良太郎のことが気に入っているらしい。
人気のペットらしく、モモタロスよりも高額の値段がつけられていた。
良太郎の懐が潤うまではモモタロスと一緒のケージで過ごすことになる。
ハナ(本名不明)
未来ショップの店員であり、ミステリアスな女性。
ウラタロスを追って公園にやってきた。
怒るとものすごく怖いが基本的に世話焼きで優しい人物。
第2話「お色気担当2000円」
今日からイマジン日記と言うものをつけ始めた。
僕の育てているペット、モモタロスの育成日記だ。
何せ体長10センチの小さなペットだから、なかなか目が離せなくって。
「モモちゃん、コーヒーおいしい?」
小さなコーヒーカップを差し出して姉さんが笑った。
それを両手で受け取って懸命に飲んでいくモモタロスの姿は…ちょっとかわいい。
「そのコーヒーカップ、どうしたの?」
僕が尋ねると、姉さんはにっこりと笑って『お人形用のなの』と言った。
女の子が人形ごっこに使う家具の一部だろう。
どこから引っ張り出してきたのか、姉さんは人形用の家具をテーブルに並べている。
確かに、モモタロスの体に人形用のコーヒーカップはぴったりのサイズだけどね。
「あちっ…おい、砂糖ねーのかよ砂糖は」
「はいはい、ちょっと待ってね」
モモタロスの声に、姉さんはにこにこと笑って砂糖をすくった人形用のスプーンをコーヒーカップに入れてやる。
人形用の家具でも実用性があるなぁ。
僕は姉さんとモモタロスのやりとりを見ながらのんびりとクッキーをかじる。
何だかんだで勝手にペットを購入してしまったわけだけど、新しい家族が増えたことを喜んでいるのは姉さんだった。
そんな姉さんを見ていると僕もホッとする。
「あ、姉さん。ちょっとこっち向いて…」
僕はやにわに携帯を取り出して姉さんとモモタロスにかざす。
不思議そうに顔を上げた姉さんとモモタロスに、そのままカメラを起動して決定ボタンを押す。
機械音と共に写真が撮れた事を確認する僕を見て、姉さんが柔らかく笑った。
「ふたりとも綺麗に撮れたよ」
フォトに日付けを入れて保存した僕は携帯をズボンのポケットにしまっておなじように笑ってみせる。
静かで平和な一時だ。
コーヒーを飲み終わったモモタロスはゆっくり立ち上がって僕の手元に近付く。
そっと手を差し出してやると肩まで登って来てくれた。
肩口にしがみついて、満腹そうに目を瞑っているモモタロスを指先でくすぐりながら僕は席を立つ。
「散歩に行って来くるね」
「気をつけていってらっしゃい」
姉さんに挨拶をしてゆっくりとミルクディッパーの扉を開け放つと初夏の風が頬を撫でた。
今日は、風が出ているから少し涼しいほうだ。
30度超えばかりしていたここ1週間、風の吹いた日なんてなかった。
湿気は多いし髪型は決まらないし…ううん、憂鬱だ。
「良太郎、体を動かせるような所に連れてけよ!体が鈍っちまうだろ」
モモタロスが僕の肩で言う。
僕は彼の頭を指で撫でて頷いた。
ゆっくりと自転車を転がしながら、ふたりでのんびりとできる場所へ連れて行く。
体を動かせるような所と言われておもいついたのが…公園だった。
モモタロスは不満そうにしていたけど、芝生の上に転がしてやるとおもったよりも嬉しかったらしくて。
眩しい日の光と微風を浴びながら体を伸ばしている。
「飲み物買ってくるね、そこでじっとしててよ」
僕はモモタロスに声をかけて公園のベンチに目を向けた。
売り切れのランプがポツポツとついた自動販売機がベンチの隣に設置されている。
財布を取り出しながら歩いていると、ふと自販機の傍に青い人形が落ちていることに気がついた。
丁度、モモタロスと同じくらいの大きさをした人形が落ちている。
僕はおもむろに近付いてその場に座り込むと、人形を手に取った。
ウロコっぽい外殻に覆われたその身体は…何だか亀みたいにも見えるんだよね。
柔らかな身体は僕の手の上でゆっくりと胸を上下させていた。
生き物、なのか?
「…もしかして…モモタロスみたいに、イマジンとか?」
青い体のそれを見つめながら僕はしばし考察する。
モモタロスは未来ショップという店でちゃんと購入したイマジンという生き物だ。
イマジンは、一般的な生き物とは違う気がする。
つまり公園なんかに存在しているはずがないんだ。
だから…自動販売機の傍で横たわっていたこの生き物がイマジンなわけ、ない。
「…生きてる…?」
僕は恐る恐る声をかけて反応を伺った。
青いそれは、小さく唸り声を上げて身じろぎをすると茜色の目を僕に向ける。
苦しそうに肩を上下させていた。
「…み、水…」
艶っぽい声でそう言った生き物は弱々しく上体を起こして僕を手招く。
きっと喉が渇いて倒れてしまったんだろう。
僕はやにわに立ち上がって、財布を取り出すと小銭を自動販売機に投入した。
手に入ったスポーツ飲料を腕に抱いて、ゆっくりキャップを開ける。
手のひらへ液体を注いでから生き物へ声をかけると彼はよろよろと這うようにしてそれを口にした。
「…ん、く…ぷは…つめたくて美味しい…」
艶っぽい声でそう言った生き物はスポーツ飲料で顔を濡らしながら大きく息をつく。
よっぽど喉が渇いていたんだろうな。
僕は指で生き物の背中を撫でてやった。
そんな僕を見つめる生き物は不思議そうに首を傾げてからおもむろに掌の上で立ち上がる。
「…上の中ってところかな。うん、悪くない」
「……何のこと?」
どこか値踏みするように僕を見た生き物は低く笑って手を伸ばす。
小さな手で懸命に僕を手招く姿がかわいくて、僕はついつい顔を寄せてしまった。
青いそれは、やにわに両手を伸ばして僕の唇を掴む。
そのまま顔を寄せた生き物は僕の唇に小さな小さな自分の唇を押し付けた。
「良太郎〜、どこまで行っ…」
すぐ傍でモモタロスの声が聞こえて、止まった。
僕と、この生き物を目にしたらしい。
慌てて視線を向けると、10センチくらいの小さな赤鬼が黒くて丸い瞳を僕に向けていた。
何だか、モモタロスの体からドス黒いオーラが見えるような気がするのは僕だけかな…。
「も、モモタロスっ…じっとしててって言ったじゃないか」
「テメェが遅いから探しに来てやったんだよッ!それを…テメッ…」
モモタロスの声が上擦る。
何故だか分からないけど機嫌を損ねてしまったらしい。
返答に困っている僕の唇に相変わらず吸い付いている生き物はやにわに口付けを解いてニヤリと笑った。
同時に、青い生き物が眩しい光に包まれる。
おもわず目を瞑ると、頬に人の手が触れた。
細身の手をしたそれはやんわりと僕の唇を塞ぐ。
弾かれるように後ずさった僕の目の前にいたのは眼鏡をかけた若い男だった。
男の顔だちは、僕そのもので…なのに僕とは比べ物にならないくらい知的な表情を浮かべている。
きりっとしたスーツを着こなしていて生真面目そうではあるものの、どこか軽薄そうにも見える。
そして青いメッシュにコバルトブルーの瞳…さっきまでの姿をイメージさせる色合いだ。
呆気に取られている僕の前で、男は無遠慮にしなだれかかってきた。
「見つけたよ、僕だけの飼い主…」
艶っぽい声でそう言った男は僕の腰に手を回して笑う。
僕もモモタロスも目が点状態だ。
「お、おま…何なんだよッ!そ、そ…その姿はッ!!」
「そ…そうだよ、きみ一体何なの…」
僕らは口を揃えて言った。
眼鏡のブリッジを指で上げながら首を傾げていた男はやにわにモモタロスを見やると小馬鹿にしたように笑う。
僕を抱き寄せて、恋人が甘えるみたいに肩へ顔を寄せた男は甘えた口振りで言った。
「イマジンは飼い主とキスをすると飼い主と同様の姿になれるって知らないの?じゃあ僕が貰っちゃったのかなぁ、彼のファーストキス…」
男は再び妖艶な笑顔を見せて僕に口付けようとする。
僕は慌てて彼の肩を押しながら後ずさった。
イマジンはキスをすると人の姿になれるってどういうことだ。
ハナさんは何も教えてくれなかった。
モモタロスだってそんな事言わなかったぞ。
「も、モモタロス…本当なの?」
「お…俺が知るかよッ!知ってたら俺が先に良太郎と…っ…くっそーッ!」
モモタロスは地団駄を踏んで勢いよく顔を上げた。
視線の先にはコバルトブルーの瞳をした彼がいる。
男はやにわにモモタロスを足で踏んづけてから僕に向き直った。
「ねえ、良太郎…って言うの?良太郎、僕を飼って」
艶めいた声で言った彼はにっこり笑って僕の腰を引き寄せる。
男の足の下でもがいているモモタロスがパタパタと両手を動かしながら怒鳴った。
「こ、この亀野郎ッ!足を退けろォッ!!」
モモタロスの声でようやく、彼本来の姿が亀に酷似したものだと思い出した。
僕に、『飼って』と言うこのイマジン…。
さらに、飼い主にキスしたら人の姿になるなんてね。
…後でお店に行って聞いてこなきゃ。
僕は眉を寄せながらそんな事を思う。
そんな僕を見て楽しそうに目の前の男は笑っていた。
「んっふ…良太郎ってかわいい顔をするねぇ」
そう言って僕を抱き寄せる彼は足の下ではグリグリとモモタロスを踏みつけている。
さすがにそんなことをしたら死んじゃうんじゃないだろうかなんて思っていたんだけど、イマジンという生き物は丈夫みたい。
痛そうに体をバタつかせているものの、モモタロスは両手で男の足を押し上げている。
そんなやりとりを見ながら、僕はぽつりと言った。
「モモタロスは桃太郎だから…きみはカメ…浦島太郎…ウラタロス、かな」
僕が言うと、彼はキョトンとしたような顔をしてしばらく静止していたもののぎこちなく眼鏡のブリッジを上げて笑った。
抱擁を解いて、一旦モモタロスを思い切り踏みつけてから顔を背ける。
「ええと…まさかとは思うけど、そのセンス皆無な単語が僕の名前?」
「…うん」
頷きを返す僕を、げんなりした表情で見つめている彼は小さく咳払いをしてため息をついた。
それでも反論しないところを見るに、この名前で構わないらしい。
「よろしくね、ウラタロス」
ウラタロスの髪を撫でて言うと、遅れて僕の肩にモモタロスがよじ登ってきた。
全身泥だらけで、何だかかわいそうになってくる。
そんなモモタロスを見て、ウラタロスは小馬鹿にしたように噴き出して言う。
「ぷっ…桃太郎だか何だか知らないけど、みじめな格好だねぇ」
「何だとテメー!テメーが散々踏みつけたからこんなになっちまったんだろうがッ!!」
ハンカチで体を拭いてやっている僕の手にしがみつきながらモモタロスが牙を剥いて言った。
ウラタロスはモモタロスなんか眼中にないらしく、自分の手や身なりを見つめてうっとりしたような表情を浮かべている。
「この姿なら人間のメスを釣り放題だよねぇ。ホント、良い体をありがとう」
軽い口調でそう言ったウラタロスは、僕の頬にキスをして笑った。
同時に彼の体から淡い光が零れ落ちてくる。
みるみるうちに青亀の姿になってしまったきみは僕の左肩に腰掛けて首筋に小さな口付けを落とす。
それを見て黙っていないのがモモタロスだ。
モモタロスは僕の手からハンカチを奪い取ると、ウラタロスめがけてそれを投げた。
ハンカチに埋もれたウラタロスは姿勢を崩して僕の肩にしがみつきながらモモタロスを睨む。
「ちょっ…やだ、何のつもり!?」
「うるせェ!良太郎が何も言わねーのを言い事にやりたい放題しやがってよォ!!もう我慢ならねー…」
「へぇ…妬いてるの?飼い主にキスする勇気もないんでしょ」
「うるせェッ、そんなんじゃねえ!」
モモタロスは泥だらけの体のままウラタロスに飛び掛った。
人の肩の上で乱闘なんかしないで欲しい。
耳元でぎゃーぎゃーとわめくイマジン二匹を見つめながらそんなことを思う僕。
丁度その時、公園に長い髪の女の人が走りこんできた。
思わず息を飲む。
…ハナさんだ。
イマジンを売っていた店で働いていて、僕とも言葉を交わしたお姉さん。
どこか焦っているように見えた。
「ハナさん、どうしたの…?」
駆け寄ってきたハナさんに声をかけると、彼女は僕の肩を睨みつけてからものすごい形相で怒鳴る。
「この亀…勝手に店から出ないの!アンタは買取りが決まってるんだよ?」
ハナさんの怒声に、僕は腰を抜かしそうになるし肩にいる二匹は慌てたように僕の肩へしがみついた。
ウラタロスは少しビクつきながら立ち上がると僕の首筋に寄りかかるようにして言う。
「それは困ったなぁ。僕、もう良太郎に飼ってもらうって決めたし…脂ぎった男に飼われるのは嫌だね」
「はぁ!?な、な…良太郎、それ本当?」
ウラタロスの言葉に、ハナさんは慌てたように僕の肩を掴んだ。
ガクガクと力いっぱい揺さぶるから、肩の上の2匹は慌てて僕の服にしがみついている。
僕はちらりとウラタロスを見やってから…小さく頷いた。
「…うん、ごめんなさい。この子、離してくれそうもないし…責任を取って僕が飼いたい。だめかな?」
「いや、だめってわけじゃないけど…」
ハナさんは言い淀んでからちらりと顔を上げてウラタロスを見た。
それから僕へと視線を寄せる。
切り出しにくいのか少し咳払いをしてから、ハナさんが口を開く。
「その子、20000円なんだけど手持ち、ある?」
「ぶっ!」
おもわず噴き出してしまった。
慌てて財布の中身を確認すると…。
所持金、2000円。
「良太郎、お前貧乏だな」
「やれやれ、貧乏な男は嫌われるよ?」
僕の肩でイマジン2匹が言う。
誰のせいで懐が寒くなってると思ってるんだろう。
モモタロスが欲しがるから遊具とか、食べ物とか…全部僕が出してるのに。
思わず拳を作ってしまう僕を見てハナさんが苦笑した。
「い、良いよ…分割払いでも」
懐の寒い僕を哀れにおもったのだろうけど、ハナさんの言葉はとっても優しかった。
僕は思わず頭を下げて礼を言う。
「ほ…本当にいいの?ありがとう…っ!じゃあまず、2000円から…」
大事な大事な2000円札をハナさんに渡した僕はホッと息をついてからウラタロスを見やった。
このイマジンのどこが20000円もするんだろう。
……僕にはよくわからない。
「ケッ、こんな磯臭い亀のどこが20000円だよッ、せいぜい10円だろーが」
モモタロスが僕の心をそのまま口にした。
自分が525円だったことが相当不満らしい。
僕の肩で爪いじりをしているウラタロスは涼しい顔で笑った。
「売れ残りに言われたくはないよねぇ」
「ンだとテメェッ!!」
「…っ、痛いなっ!」
案の定乱闘を始めた2匹はキーキーといがみ合いながら殴り合っている。
そんな2匹をみながら僕はポツリと呟いた。
「ウラタロスはモモタロスと一緒のケージに入ってもらうんだけど…喧嘩しないよね?」
僕が言うと、突然2匹の乱闘が収まる。
ウラタロスは死刑を宣告されたみたいに固まっているし、モモタロスはポカーン顔だ。
しばしの沈黙の後、モモタロスがぎこちなくウラタロスを指して言った。
「りょーたろー…本気で言ってんのかお前」
「当たり前でしょ。もうお金ないからケージ買えないもん」
アッサリ斬り捨てたような僕の言い方にモモタロスがぐったりとウラタロスにもたれかかって倒れこむ。
放心したままのウラタロスは、慌ててモモタロスを突き飛ばすと僕の服をぐいぐいと引っ張って言った。
「そ、そんなぁ。嫌だよ、こんな奴と二人なんてぇ!良太郎、ケージじゃなくて良いから一緒に寝て?」
茜色の丸い瞳が僕を見つめている。
ビー玉みたいで綺麗な目だ。
それでも僕はかぶりを振って言い捨てた。
「だめだよ、ペットはケージで寝ないと」
「ひどい…」
ウラタロスはモモタロスと同様にその場で倒れこんでいじけている。
彼らはペットなのに、こうしてケージの事について言い合えるって不思議なことだとつくづく思う。
犬や猫は「こんな所に住みたくない」なんて言えないじゃないか。
人間に通じるはずもない言葉を持った生き物なんだから。
でもイマジンは、何が嫌い、何が好きと自分の気持ちをストレートに伝えてくれる。
懐は寒いけど…こうしたペットとのコミニュケーションに心がときめくんだ。
「イマジンってね、縄張り意識が強いのよ。だから1匹ごとにケージを分けないといけないの」
ハナさんが言った。
思わず納得の吐息を漏らす僕を見て、ハナさんが笑う。
「今度…イマジンについてもっと詳しく教えてあげるね」
屈託のない笑みを見せたハナさんは、僕の肩の上で突っ伏している2匹を指でつつきながら言った。
―――イマジンについて。
そうだ、僕は…。
イマジンについて聞きたいことがあったんだ。
僕は、イマジンがキスをすると人間の姿になるなんて、全然知らなかった。
知るわけがない。普通の人間なら想像すらしないことだ。
っていうか、動物が人間の姿になるなんて今の科学で解明できるものなのかな?
もしかしたら、イマジンって僕が考えているものよりずっと危険な生き物なのかも…。
「ハナさん、良かったら今から…イマジンについて教えて欲しいんだけど…いい、かな?」
僕が言うと、ハナさんは人の良い笑みを浮かべて頷いた。
夏の風に吹かれて栗色の髪がさらさらとなびいている。
少しだけドキドキしてしまう。
「僕の店、喫茶店なんだ。だから…コーヒー飲みながら話そ?」
「うん、いいよ」
僕はハナさんを誘導するように公園の入り口へと歩いていく。
まだ肩の上では不機嫌そうに突っ伏している2匹が目に入ったけど…気にしない。
それよりも今はイマジンについて詳しく聞かなきゃ。
解らないままなんて嫌だし、自分のペットのことだ。
飼い主が理解しなきゃ意味がない。
……でも少しだけ、聞くのが怖い僕がいる。
アニメや映画のファンタジックな展開を望んでるわけじゃないけど、もしもイマジンが悪い生き物だったり、触ると爆発するような生き物だったらどうしよう。
…さすがにそれはないか。
多分、これ以上驚くことなんてないと思うし。
僕は小さくため息をついてから姉さんの店へ歩いていった。
つづく
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7月21日に書いたもの。
1話目の次に読んでやってくださいー。
次こそエロのある話になるといいなぁとおもいつつ。